古代ギリシャの線文字A(7.日本語訳)
8月18日、末尾の「13」(包丁形の粘土板)に関し、解析が不十分として、削除しました。
線文字Aの原典に関しては、在アテネ・フランス考古学研究所の総合的な写真資料(通称、GORILA)が、基礎資料とされる。これは、Mnamon GORILAで検索、スクロールすると、GORILA (vol.1~vol.5)として登場する。新しいサイトでは、SigLAも便利。また米国の J.ヤンガーは、多数の原典をローマ字転換しており、サイト「Academia.edu」では、John Younger、また「SCRIBD」では、Linear A texts John Younger、で検索すると閲覧できる。
ここ6年間、線文字Aの日本語解読を続け、比較的最近、大きな進展があった。今まで線文字Aの文字の間の「・」や短い縦棒は、句読点と捉えていたが、I(一)、YA(矢)、SI(支)、あるいはNO (ノ)の省略形としたら、日本語転換が大変楽になったので、「癒しのルール」として確立させた。また線文字Aの記号の真下に点「・」がある場合、NG (ん)、又は音声の繰り返し記号と理解する様になった。
更に欧米の研究者の場合、線文字Aの背景言語が日本語とは気づかぬまま(ワインやオリーブ油を表す表意文字や数詞を除き)全ての記号を単音節と捉え、「50音を遥かに上回る数の記号が見られるのは、別表記があり、柔軟性や個性があるから」と考えがちだが、必ずしもそうではない事が判明した。
すなわち線文字Aには、単音節の記号を組み合わせて創作した「合成記号」が無数にあり、これらは複数の音節を表す。例えばA(AB08)とSI (AB41)を足して2で割った様な、曖昧な記号が登場した場合、A-SIと読むのである。
線文字Aの原典には、この様な合成記号が多いので、解析の上、意図された(複数音節の)音価を明らかにする事が重要、との理解に至った。これは達筆な人の「続け字」を解析する作業に似ていよう。
これまで取り上げた原典の日本語訳を、以下に掲載した。(特に断り書きのない場合、読む方向は、左から右へ)解読の際、記号の音価に関しては、線文字Bとの共通記号の音価を借用したが、修正点は、次の通り。
〇言葉が母音で始まる場合、適宜、「は」行で置き換える。(A⇒ A/ HA)
〇文字列の途中に登場する、ごく短い縦線「・」は、「癒しのルール」に従い、I、YA、SI、NO、の何れかを代入。
〇文字の下の点は、繰り返し記号、あるいは「ん」と捉える。
〇線文字Aの記号(*301。左右反転したR)は、反時計回りに45度回転させれば鳥に見えるので、TO。
(注)「*」は線文字AとBの共通記号の印。
〇RE(*AB27)には、3本フォーク形の先端を3本指の手と見做し、RE/MITE/SATEと読み換える事を発見し、これを反映させた。
〇損傷で読めない部分は( )で表した。
以上を踏まえ、手掛けた多くの原典で、「単純な読み方」に続き「精密な読み方」が登場するが、前者は「各記号は単音節」と欧米流に解釈した結果であり、後者では「変則的な記号は、複数音節を表す合成記号」との前提で、加筆修正している。大意を掴むには「単純な読み方」が便利だが、日本語らしい円滑な文章を得るには、「精密な読み方」が必要となる。
何れにせよ、線文字Aの場合、柔軟に「とんち」を効かせつつ、記述されているので、解読する方も、そのつもりで国語のルールの常識やこだわりを捨て、自由な発想で取り組まないと、訥々とした、おぼつかない日本語にしかならない傾向がある。
なお最近、双斧形の記号(AとSIの合成)には、TENMAとの読み換えが効く事を発見したが、これは下記(10)「アルカロコリの金の双斧」について、左右に翼を広げ、空飛ぶ天馬に見立てている事から、ヒントを得たものである。
1. 取引台帳/帳簿 (Balanced Ledger Tablets)
クレタ島南部のアヤ・トリアダ(Haghia Triada、略してHT)遺跡から線文字Aの記された多数の粘土板が発見されている。ここはファイストス宮殿の近くで、直近のコンモス(Kommos)港の輸出入に係る物流センターであり、粘土板は出航/到着の船に係る記録と見られる。
コンモス港を母港とする交易船の船名、漕ぎ手の人数や名前、また輸出品に関し、供給者(地主・工房)の名前、分量(個数・重量)、また輸入品を注文者に配分する為の情報が粘土板に記録され、集積されたのだろう。
国際交易の場合、例えばコンモスと、キプロス経由でレバント地方やエジプトの港の間を往復しながら、壺等の土器を輸出し、綿花等を輸入する交易船が想定される。(但し時間節約のため粘土板以外の手段、例えば船に設置された木の板、木の皮、パピルス等に記録した可能性もあるので、如何なる場合に粘土板を用いたのか、考察すべし)
粘土板に記載の文字は、擦れて読みにくい物も多い、短時間で大量に作られたため、丁寧に文字を掘り、乾かす時間がなかったのだろう。各行の末尾(右端)に数字があり、原則として左から右へ読むものと推測される。
他方、退屈な記録作業に際し、特定の言葉を逆から読む、音声の順番を変える等、言葉の遊びをしていた可能性もあろう。(例えば、スルメ⇒アタリメ)
以下の原典は、線文字Aの総合的データベースを目指す、Sig LAのサイトで、遺跡毎に掲載されている。(Explore⇒ Browse Corpus)
(1)KU-RO
それぞれの帳簿では、一番下にKU-ROと記載され、その右側に合計が記されたので、KU-ROは「合計」の意味と理解されている。
然るにKU(AB81)の字源が飛ぶ鳥なので、光るものを集める習性のカラス、あるいは空飛ぶ黒い鳥の群れから「集合体」、「合計」の意味と捉えがちだが、古代ギリシャでは、カラスは不吉とされた由。そこで別の説明を求めれば、次の通り。
(ア)タコやイカの吐く墨が、周囲を黒く覆う姿から「網羅する」との意味。更に推測すれば、当時は、平たく白い石等を用いて、この様な墨で、下書きや練習書きしたので「記録は」(for the record)を意味したのだろう。
(イ)多数の小さな身の詰まった、ザクロの省略形。KU-ROは、常に帳簿の一番下に記載されたので、ザ(座)の省略と解釈される。因みにザクロの実は、自らの重みで、木からぶら下がるので、この点も整合的。更に線文字Aの KU-ROを表せば、「Σ十」が近似値。これを右に倒せば、すぐ下に「合計値」が来るので、ザクロの木から、実が垂れ下がる構図となる。
(ウ)黒髪の乗りなのか、クノッソス宮殿の赤い柱の柱頭が、黒く塗られていたので「黒」に「高さ」の意味が付与された。(英語で冠を意味し、貨幣の単位でもあったCROWNと関係あり)
(エ)倉/蔵の意味。
(オ) 外来語。古典ギリシャ語なら、認証を意味するク-ロス(ΚΥ⁀ΡΟΣ:confirmation, validity, certainty)。
(カ)KU⇒ SI-KU
KUの記号を、横に書いたSI(AB41)とKU(AB81)の合成記号(SI/KU)と見做せば、KU-ROは、SIKU-RO、あるいは KU-RO-SI-ROと読み換え可能。
〇 SIKU-ROなら、古典ギリシャ語で、円を意味するククロス(ΚΥΚΛΟΣ)。
〇 KURO-SIROなら、囲碁が想起される。仮にミノア人が囲碁を知っていた場合、一局終える毎に、黒石と白石を数えるので「合計」の意味。
(キ)RO-KU
右から左へ読んで「六」なら、サイコロの最高の数字で、幸運の象徴。又はミツバチの巣の六角形(ハニカム構造)。あるいは「禄」、「記録」。
なお合計を意味する「KU-RO」の下に「PO-TO KU-RO」と記される場合があり(HT122 B面など)、ギリシャ語で、PANTAが「全てのもの」を意味するので、総和を意味しよう。
(粘土板 HT 13。GORILA I, 26-27)
最上部には、表題。下の各行には、品目名と、その右隣に数字。最後の行には、KU-ROと記載し、数字の合計。左から右へ読んでいく。*118 (AB118)は、天秤の形であり、インダス文字風に、RYO。
表題:単純に読むと、KA-U-DE-TA。しかしUの記号の右上に、十字が隠れていると見做し、U-ROと読めば、KA-URO-DE-TA(高炉/航路、出た/で得た)。
1行目:(ワインの記号)・TE RE-RU・ZA 5+1/2
2行目-3行目: TE-TU 56; TE-KI 27+1/2
3行目(後半):KU-DO-NI 18
4-5行目:DA-SI-*118(RYO) 19; I-DU-NE-SI 5
最終行:KU-RO 130+1/2
〇 断片的ながら、次の解釈が可能。
「高炉/航路、出た/で得た」
ワイン・照れる(の)座 5+1/2
テツ 56; テキ 27+1/2
キドニア 18
(右から左へ読み)ヨシダ 19; イズネ氏 5
合計 130 +1/2
(2)KI-RO
粘土板には表題に「KI-RO」と記された物があり(HT 55、HT 94等)、ジョージアのG.クワシレヴァ(Gia Kvashileva)等、多くの研究者は「負債」と捉えている。ミノア人は養蜂をしたので、ミツバチの腹部の黒と黄色の縞に着目し、KI-ROに「空っぽ」や「欠落」の意味を付与したのだろう。特にKI(*67)は、ハチの腹部の縞に由来し「黄色いハチに御用心」との警告となろう。
すると「KI-RO」は約束不履行で届かない品物の可能性があり、例えば賃料・税金として未納入、船の出航に間に合わなかった、船の遭難等、様々なケースが考えられる。
この他、KI-RE-TA(HT 129)、KI-RI-TA(HT 114)等の表現も出てくるが、これは動詞「切る」と関係し、手頃な大きさに切った品物と推察される。
(3)QI-TU-NE
〇 粘土板 HT 87。(GORILA I: 136)
(表題) QI-TU-NE MA-KA-RI-TE (きつね まかりて)
(内容)各々、数が「1」と記録してある。PI-TA-KE-SI;JA-RE-MI; DI-KI-SE;QE-SU-PU; KU-RU-KU; A-RA-?-A-TU
左右、逆方向に読めば、最初は「しけたび」、2番目は「みれや」、3番目は「せきんじ」、4番目は「ぷーすけ」。
(解釈1)表題は「キツネが咥えて行ってしまった」との印象だが、それなら「行方不明」の意味だろう。下記「HT 117」を参考にすれば、後に続く一連の単語は舟の可能性があり、「出航したまま帰還していない」事の記録。
因みに古代メソポタミアの楔型文字の粘土板文書で、占星術を記した「エヌマ・アヌ・エンリル」のシリーズの第50書板には、星座の現れる事象と地上の出来事の関係について、「カラス座は安定した商売に関連する。キツネ座は強盗」等と言及している由。日本でも古来、子供等の失踪について「神隠し」と呼ぶ習慣があり、その場合の「神」には、キツネも含まれていた。
(解釈2)「農繁期により、海に出られず」。キツネの登場する季節は、農作物に集まる小動物を狙う秋と推察される。その場合も後に続く単語は舟。但し、舟は船着き場に残るので海難の心配はなく、記録も不必要。従って「解釈1」が説得的か。
(注)John Younger, Kansas UのHPを縁にすれば、QI-TU-NEは、アヤ・トリアダ出土の粘土板(HT7)で、表題でなく品目として掲載されているが、場合によりNE-TU-QIを逆にしたもので「根付き」の農産品や器を指す可能性があろう。
〇 粘土板 HT 117。A面上部。(GORILA I: 196)
(表題) MA-KA-RI-TE KI-RO U-MI-NA-SI (まかりて きいろ うみなし)
上記 HT 87と同様の表現で、冒頭のQI-TU-NEが省略されていよう。
(内容)下記10件が記載され、各々、数字の1が付してある。最後にKU-ROと記し、10と記載。
U-SU; MI-TU; KU-RA-MU; MA-RU; KU-PA-NU; TU-JU-MA; U-DI-MI; MI-RU-TA-RA-RE; TE-JA-RE; NA-DA-RE ⇒ KURO 10。
KI-ROが「切ろう」あるいは「黄色」を意味し、黄泉の国に通じるならば、「出航後、行方不明。海難事故の疑い濃し」。10件の名前には「MA-RU」もあり、舟の名前。U-DI-MIは「不死身」か。
(参考)鳥越憲三郎、若林弘子「倭族トラジャ」(大修館書店。1995年)によれば、インドネシアのトラジャ族は「三途の川」の事を「黄色い川」と呼ぶ由。(48頁)
(4)I-TI-NI-SA
(Za 15。GORILA III: 182-185)
ザクロスから発掘された粘土板で見開きになったもの。(「⇒」は筆者が便宜的に書き入れたもの)
(表題)(*47)-KU-NA-(A522)
(内容) 品目 ⇒ 数量
(A面)
QE-SI-ZU-E ⇒ 57
I-TI-NI-SA ⇒ 10 (続けてA507)
MI-ZA-SE ⇒ 3
I(A28b)-NU-MA-RE ⇒ 6
SI-PI-KI ⇒ 2
JA-SA-MU ⇒ 5
SA-MI-DA-E ⇒ 4
SO-KE-MA-SE ⇒ 5
(B面)
KA-DI (*131a) ⇒ 3
KU-RO (*131a) ⇒ 78
(A594) ⇒ 17
(A522)及び(*131a)は、漢字「雨」を思わせるデザインで、線文字Bの類推からワインの記号と見做されている。(屋根の下で液体が発酵する様子の記号化)従って酒類の台帳だろう。
B面の1行目「KA-DI…3」の下に横線が引いてあり、下のKU-ROとの間が綺麗に仕切られている。そしてKU-ROとして2種類が記載され、両者を足すと78+17=95で、A面の品目の合計(92)とB面1行目の数量(3)との合計に等しくなる。
従ってKU-ROの2種類は、似て非なる品目を表すだろう。(A594)として合計17になる品目を探せば、A面のI-TI-NI-SA (10)、SI-PI-KI (2)、SO-KE-MA-SE (あるいはJA-SA-MU)(5)で合計17と確認される。
(A594)は(*131a)の上にRA(*60)と書く記号であり、トルコ等の蒸留酒RAKIAからの類推、またI-TI-NI-SA(一、二、三)(注)、SI-PI-KI(しぶき?)、SO-KE-MA-SEには強そうな響きがあり、蒸留酒だろう。すると(*131a)は通常の醸造ワイン。SA-MI-DA-Eは「さみだれ」。またQE-SI-ZU-Eだけ数量が大きいのは、酒とは異なる麻酔薬であり、場合により「茎のついたケシの実」か。
(注)I-TI-NI-SAを「一、二、三」と捉える場合、SA(*31)はSANと読むべし。SA(*31)は、3方向に放射するYの字形であり、字源は数の「3」と推定されるので。
(5)数字の解釈
(ア)舟あるいは漕ぎ手
上記HT87、HT117の様に記載数字に1が続く場合、舟あるいは乗組員の名前とその合計と考えられる。
(イ)積み荷の数/重量
HT13の様に、変動する数字が分数と共に並ぶ様な場合、船に積載する品物の数とは限らず、重量を表す可能性もあるだろう。
粘土板は多種多様だが、ミノア人は諸外国との交易で栄えた事が知られ、船で輸出入される農産品や土器、金属加工品に関しては、船の積載能力と照合する必要があっただろう。
線文字Aの数字システムには、分数も含まれるが、重量を正確に計算する為だろう。
2. 献油/献酒の定型碑文(Libation Formulas)
ミノア人は、オリーブ油等の液体を死者に献上する儀式を行ったと見られ、使用された器、柄杓、テーブル等には、様式化された碑文が刻まれている。この様な碑文は、約30例知られており、以下、その原典と解読結果を掲載したが、それぞれを識別する、地名付きの番号はGORILAに従う。
それぞれを日本語として解読すると、亡くなった家族・親戚縁者を弔い慰める鎮魂の祈りであり、様式化された遺族の感情吐露と判明する。
ミノア人は海外交易により栄えた民族なので、多くの人が舟の漕ぎ手として駆り出されただろう。従って戦争がなくても、嵐による海難事故で多くの同胞が命を失い、しかも遺体が回収できない場合が多く、遺族は悲嘆にくれ、感情を吐露する縁を求めただろう。そこで弔意の言葉が、定型の文言として葬儀の道具に記載され、読み上げられた。
これらの道具は公共性が高く、基本的に個人名は記載されていない。I-DA が頻出するが、クレタ島の最高峰IDA山に因む神と見られ、I(*28)の字源は「火」なので、HI-DAと読み換える。
JA-SA-SA-RA-MEが頻繁に登場するが、多くの場合、「ササラ(竹の楽器/ 波)の様に落ちる涙」と解釈可能。外来語なら、イアーシスは古典ギリシャ語で、癒し、治療。イアソウは、癒しの女神。またサラモス(ΘΑʹΛΑ΅ΜΟΣ)は、奥の間(inner room or chamber。Thalamus(視床)の語源)や社(shrine, temple)を指すので「癒しの女神」。他方、サロス(ΣΑ΄ΛΟΣ)と捉えると、荒れた海(the tossing or rolling swell of the sea)。
更にJA-SA-SA-RA-MEを漫画と捉えれば、JAは舟であり、SA-SAの連なりは2本のマスト、あるいは豪雨。RA-MEは、舟の沈没する姿。A-SA-SA-RA-MEの場合、SA-SAは涙の落ちる両目で、女性の泣き顔だろう。
多くの原典で、人の一生が糸輪に例えられ、ついに切れる事に言及しており、運命の女神が生命の糸を紡ぐ、有名なギリシャ神話と繋がる。
(TL Za 1) Troullos(クレタ島ヘラクリオン近郊)出土のレードル(スプーンの先端部分)で、二等辺三角形のハート型。Zaは石器の略。(GORILA IV : 58-59)
Leah Rosenの論文「A Semiotic Analysis of Two Linear A Inscribed Ladles」を検索すると、図6及び7として写真・略図が登場する。
文字列が、二等辺三角形の3辺に並ぶ。3つの記号の下に点があり、これを繰り返し記号、あるいは「ん」と解釈する。破損で読めない記号が多数あるが、この様な定型碑文では、同様の表現を慣用的に繰り返す場合が多いので、補充可能であり、次の通り。
A-TA-I-*301(TO)-WA-JA- [・]- O-SU-QA-RE/MITE/SATE - [・]
〇 あんた いとわん や [・] お すかれさて [の]
貴方が、ふびんで気の毒だし、お疲れ様で
〇 はた いと わ や [の] お すかれ [し]
命の機の糸輪が、追いつかれてしまい、
JA-SA-SA-RA-ME(下点)-U-NA-KA-NA(下点)-SI(下点) -
や ささらめ(ん) うな/ ふな かなし、なし
〇 悲しくて、ささら波の様に、涙が出ます。 ああ、悲しい話。
〇 矢の刺さる様な雨を見舞い、船が悲しくも、見つかりません。
(I-PI-)NA-MA-SI-RU(下点)
いきな ま し る(る)
生霊(の意味)を御存知の、癒しの女神よ。
末尾近くの、I-PI-NA-MAは、様々な原典で頻出する言葉。ここでは「生霊」としたが、「生贄」/「人身御供」と解釈すれば、全ての海難事故の犠牲者は、神への「生贄」/「人身御供」の意味があり、その死は、決して無駄でない、との趣旨が強調されよう。
(KO Za 1) Kophinas(ヘラクリオン地方)。レンガ風置物。(GORILA IV : 18-20)4つの面に記載。
(1)A-TA-I-(TO)-WA-JA (2) TU-RU-SA-[・]- PU-RA-RE/MITE/SATE -[・]-(H)I-DA-
あ/ は た いとわ や つるさ [や] ぶられてさ [し] ひだ
貴方が、ふびんで気の毒、/ 命の機の糸輪の、
弦が切れてしまったのです。ヒダの神様!
(3) A-[・]-U-NA-KA-NA-SI-[・]-I- (4) PI-NA-MA-[・]-SI-RU-SI/YO-TE
あ[の]ふなかなし[や] いぴなま [や] しる して
あの船 放しや/ の話や/ が悲しい、 生霊や、知らせて。
(SY Za 2) Syme (マリアの南方、沿岸方面)出土の石器。(GORILA V : 64-65)
A-TA-I-(TO)-WA-JA-[・]-JA-SU-MA-TU (オリーブの印)
あ/ は た いとわや [の] やすまず
貴方が、ふびんで気の毒、/ 命の機の糸輪が、とても早く、
休まずに献身され、
U-NA-KA-NA-SI (オリーブ油の印) A-JA
あな/ふな かなしい あや。
あな、悲しい/ 船の話や お父様!
大野晋(「日本語とタミル語」)によれば、「あや」は青森や岩手で「父」を意味する方言。
また鳥越憲三郎(「原弥生人の渡来」、310頁)によれば、日本人のルーツを辿る為、中国南部やインドシナ半島の少数民族を現地調査したら、ラワ族(タイ在住)の葬式の歌が次の通りで、酷似する。
「一生の間あなたはいろいろと仕事をして、精いっぱい働きました。もう静かな所へ行くことでしょう。残したことは、私たちがしてあげます」
(AP Za2) Apodoulou(アヤ・トリアダの北西)出土の円筒型石器。(GORILA IV : 4-5)
破損部分については割愛する。
(1)音価
個性的な合成記号につき、次の通り。
〇 上部に長い縦棒が4本伸びる、I(*28)の合成記号:I-(SI/YO)。
〇 中央寄りのPIの記号の変形:頂上が、REに替えてあるので、PI-RE/MITE/SATE。
〇 基本はNAで、縦に並ぶ点が4~5個、強調された合成記号:点の数を読み加えて、NA-(SI/YO)あるいは、NA-(GO/TE)。
〇 右側の4段梯子の記号:(JA/ NU)-(SI/YO)。
〇 リンゴ/ナシの漫画:TUの記号から、三角形部分の縦棒を消したもの。ナシの漫画を兼ねており、TU-NASI。
(2)上段
以下、左側・右側の区別は、GORILAに掲載の写真による。
(ア)左側
(破損) NA-SI-[・] I-(SI/YO)PI-RE/MITE/SATE NA-(SI/YO) MA(破損)
(右から左へ)ま よな きれってさ よい [い/や/し/の] しな
迷うな、切れってさ。酔いの品。
(左から右へ)なし [い/や/し/の] い(し/よ) きれ/さって な(し/よ)
汝の意志/ 石よ。切れ、去ってナシよ/ 綺麗、ナシよ。
合わせれば、「迷うな、切れってさ。酔いの品」。「汝の意志/ 石よ。切れ/ 綺麗、ナシよ」。
(イ)右側
(破損) KU(JA/ NU)-(SI/YO) NA-(SI/YO)TU-NASI NA-(GO/TE)(破損)
(右から左へ)……泣いてなし。強いな。よし、抜く/焼く。
(左から右へ)悔しいな、しつなし、なんて。
合わせれば、「……泣いてなし。強いな。よし、抜く/焼く」。「悔しいな、膣なし、なんて」。
(3)下段
左側だけ。右側は(不明な記号1つ)+ (点)に限り、省略する。NAの記号は、それぞれ垂直に並ぶ点が4つあるので、(SI/YO)を加える。右手のJAは、四角が3つと見做し、MISIKAKUとの読み換えを視野に入れる。
(破損)PI (I/YA/SI/NO) MI (SI/YO)-NA TE [・] I-(SI/YO)NA-(SI/YO)JA/ MISIKAKU RE/MITE/SATE (?)
(右から左へ)(?)さて短くしよう、ナシ、良い/酔いの。
養い師の手塩/手並み。見や/みやび。
(左から右へ)(?)嫌味、よしなって。石ナシや、隠し見てさ/短くてさ。
合わせれば、「さて短くしよう、ナシ、良い/酔いの。養い師の手塩/手並み。見や/みやび」。「嫌味、よしなって」。「石ナシや、隠し見たら、短くてさ」。
(4)総合
以上を繋げば、「迷うな、切れってさ。酔いの品」。「汝の意志/ 石よ」、「切れ」。
「さて短くしよう、ナシ、良いな」。「綺麗、ナシよ」。
「……泣いてなし。強いな。よし、抜く/焼く」。
「養い師の手塩/手並み。見や/みやび」。
「石ナシや、隠し見たら、短くてさ」。「嫌味、よしなって」。「悔しいな、膣なし、なんて」。
古代ギリシャには、宦官がいた由で、クレタ文明でもいたのだろう。宦官になるための去勢手術(「無し」の手術)の顛末を描いている。
従ってこの石器は、去勢手術にまつわる品物。上段の、ナシの漫画の記号には、底部にシミがあり、その左右にNAの記号があるが、陰嚢の底を切った後、左右の睾丸が落ちてくる姿の漫画である。
(IO Za2) Iouktas/ Juktas山(クノッソス近郊の宗教上の拠点)出土の石器。(GORILA V: 18-19)
これは四角いテーブルで、四方の外側に上段、下段の2段にわたり線文字Aが彫られている。四方の角に上から穴が開けられており、ふた等を固定する為だろう。「Linear A stone table IO Za2」で画像検索が可能。
(上段)A-TA-I-*301(TO)-WA-JA-[・]-JA-DI/60-KI-TU-[・]-
あ/ はた い と わ や [の] や 60 きつ [し]
貴方が、ふびんで気の毒、/ 命の機の糸輪が、矢の様に早く流れて、還暦を迎えられたのに。
JA-SA-SA-RA-ME-[・]-U-NA-KA-NA-SI-[・]-I-PI-NA-MA-[・]
や ささらめ [や] うな かなし [や] いぴなま [の]
(荒海の)癒しの女神よ、ササラ波の様に涙が出ます。矢の刺さる勢いの雨で、
あな、悲しい/ 船、放しや/ 船の話や。貴方の生霊を
(下段) SI-RU-TE-[・]-TA-NA-RA-TE-U-TI-NU-[・]-(H)I-DA-?
しるて [や] た な ら て う ち ぬ [や] ひだ
知って/ 知る天や、弔いの太鼓を打ちます。 ヒダの神!
下段のTA-NA-RA-TE-U-TI-NUが特徴的だが、太鼓を打つ趣旨ならば、テーブルの四隅の穴は、太鼓の革を張るためだろう。
(PK Za 11) クレタ島東部のPalaikastro出土の四角い石のテーブル。「Social Sci Libre Texts 8.2 Linear A」で検索すると、図19に登場する。(GORILA IV : 32-34)
Palaikastroの背後(西側)には聖なるDikte山があり、ゼウス神誕生伝説の洞穴で知られる。四角いテーブルの上には、土俵の様な円形の縁取りがあり、周囲の四つの側面に文字が刻まれている。いくつかの記号の下に、点あり。
A(下点)-TA-I-*301(TO)-WA-E-[・]-A-DI-KI-TE-TE-[・ ⇒ 次の面へ
あ/は た いとわえ [の] あんじきて て [や]
貴方が、ふびんで気の毒、/ 命の糸輪の暗示が、聖なるDikte山から来ていて
・]-DA(下点)-[・]-PI-TE-RI(下点)-[・]-A-KO-A(下点)-NE(下点)-[・]-A(下点) ⇒ 次の面へ
ただ [し] ぴてりん [し] あこ あんねん [し] な
正しく当たってしまいました。お香を上げるので安心なさい。
SA-SA-RA-ME-[・]-U-NA-RU-KA-NA-TI-[・] ⇒ 次の面へ
ささ ら め [や] うなるかなし [い]
(荒海の)癒しの女神よ、涙がささら波の様に出ます、唸る悲しみと共に。
I-PI-NA(下点)-MI(下点)-NA(下点)-(欠落)- SI-RU-[・]- I-NA-JA-PA-QA
いぴなん みな なみな(欠落)しる [や] いなやはか
皆、生きていろ!/ 生霊と、涙を流します。……と信じつつ、何処ですか?
以上から、テーブルは、香をたく台だろう。
3.銀のピン (KN Zf 31) (GORILA IV : 154-155,162)(クノッソス周辺の墓地Mavro Spelioで発見。ヘラクリオン博物館 540番)
約15センチの細長く、U字形の柄のある杖の形の銀ピン。「Canadian zen haiku Mavro Spelio」で検索可能。GORILAに掲載の写真は、柄の部分を含む上部と下部に分かれており、ここでは杖の湾曲した把手を左下に向け、長い枝が、右手に伸びる様に配置して見る事とする。
I. 上から下へ
1. 単純な読み方
J.ヤンガーが、ローマ字転換した内容に基づく。短い区切り[・]は、言葉の区切りと受け止め、I、YA、SI、NOの何れかで適宜、補った。
(1)変則的な記号(上部)
〇 左から3番目の「虹」の様な記号:NARA。
〇 左から5番目の「洋服ハンガー」の様な記号:TU。
〇 左から10番目の、〇の上から×を書いた記号:KA。
〇 右から9番目、A(AB08)の上部中央に「点」:A/NA。
〇 右から4番目: DE。
〇 右から3番目:穂先の記号SE(AB9) に羽5本なので、(TE/GO)-SE。
〇 右から2番目、「南」に似た合成記号:RAとNAの合体で、RANA。
〇 右端:I。
(2)解読
(ア)上部
SI [読解不能] SI ZA NE NARA [・] DA TU MI NE [・] QA MI KE NARA [・] A/NA WA PI [・] TE SU DE (TE/GO)-SE NARA I [・]
しざね なら(い)だ つ みね (の)かみけ なら(い)あ/な わ び(し/の)て す で てせ ならい(い)
……し、残念ですが、イダ山の立つ峰の、神の家/髪の毛に習い、あな、お詫びする、アワビ(祝い/ 銀髪)のテス(鉄)でして。「なら良い」。
イダ山の頂上が、雪に覆われた姿を、白髪/銀髪に例えており、ピンの銀色と符合する。「神の家」と「髪の毛」も掛け言葉。古典ギリシャ語でコメイ(κομη)は、髪・頭髪を意味する。
(イ)下部
[・] A DA RA [・] TI 60 TE QA TI [・] TA SA ZA-[・] TA TE I NARA ZO RE/MITE/SATE-[・]
あ た ら (い)し 60 て か ち (や/し)た さざ(ん)たて いならそれん/いらんな、それ/みて/さて
素晴らしい、60歳 なら勝ちだ/で徒歩のお参りとは。通しましょう。立て!良いなら、それましょう/いらんな、それ。見て、去って。
6番目の記号は、ボーリングのピンの様に並んだ6つの点/短い縦棒の上に横棒で、合致する記号が線文字Aの表にはないが、クレタ聖刻文字ではマルが10を表した形跡があり、ピンの杖の形が高齢者を連想させるので「60歳」。末尾から3つ目の記号は(らせん形の)RAとした。
(ウ)まとめ
以上を合わせれば、次の様なやり取りと解釈できる。
老人: ……し、残念ですが、イダ山の立つ峰の、神の家/髪の毛に習って、銀髪で来てしまい、あな、お詫びします。アワビで祝うテス(鉄)です。
番人:それなら良い。素晴らしい、60歳なら勝ちだ、徒歩のお参りとは。通しましょう。立って! 良いなら、道を空けましょう/いらんな、詫びは。見て、去って。
ピンの形が老人の杖、また銀の素材が白髪を連想させる。クレタ島の聖山を訪問した老人が、番人に呼び止められた場面で、番人は60歳と知り通行を許すが、還暦のお参りと理解したのだろう。
これだけでは番人の正体や役割が判然としないが、クレタ島で最高峰のイダ山には、最高神ゼウスが、生まれた直後に匿われた伝説の洞窟(Idaean Cave)があるので、この入り口を守る番人か。因みにこの洞窟につき検索し、入り口の写真を見ると、アワビに似た形であり、お詫び/アワビ/洞窟、との掛詞が成立し、意味が通る。
以上から、この杖の形の銀ピンは、髪の毛用とも考えられる。
2.精密な読み方
より精密に読めば、下記の通り、理解しやすくなる。
(1)上部
(ア)変則的な記号
〇 左から3番目の「虹」の様な記号:NIJI-YA-PA。
〇 左から5番目の「洋服ハンガー」の様な記号:KU-(NI/RA)-(I/YA/SI/NO)。
〇 左から10番目の、〇の上から×を書いた記号:KA-KUSI。
〇 右から9番目、A(AB08)の上部中央に「点」:A-(I/YA/SI/NO)。あるいは、NA。
〇 右から6番目、「羽」が左右に4本ずつの、TEの記号:(YO/SI)-TE。
〇 右から4番目:DEとMAの合成記号。3本の横縞「線」に鑑み、DE/ MA-SA/MI-SEN。
〇 右から3番目の合成記号:(TE/GO)-SE。
〇 右から2番目、「南」に似た合成記号:NA、KU、ZOの合体で、NAKUZO。
〇 右端、4本「羽」の穂先記号あるいはI (AB28)と「涙」の合成記号:(YO/SI)-(SE/I)-NA。
(イ)解読
SI ZA NE (NIJI-YA-PA) [・] DA [KU-(NI/RA)-(I/YA/SI/NO)] MI NE [・] QA MI KAKUSI NA RA [・] AI WA PI [・] SITE SU (DE/ MA-SA/MI-SEN) (TE/GO)-SE NAKUZO (YO/SI)-(SE/I)-NA [・]
ZA NE (NIJI-YA-PA) [I] DA [KU-NI-NO] MI NE [YA] QA MI KAKUSI NA RA AI WA PI SITE SU (DE/MA-MI-SEN) (TE/GO)-SE NAKUZO (YO-SE-NA)
……残念。虹やわ! イダ国の峰や。神隠しがあるなら、相詫びして、すみません。「苦難だぞ、よしな」。
(2)下部
(ア)変則的な記号
〇 右から3つ目:上部の文字列で、右から2番目の「南」に似た合成記号(NAKUZO) の中身が消してあり、左右の波線だけ残るので、NAKUZO-NAKA-NAI-NI/RA。
〇 右端の記号:RE/MITE/SATE / [TI-(I/YA/SI/NO)]。
(イ)解読
[・] A DA RA [・] TI 60 SITE QA TI [・] TA SA ZA [・] TA (TE-YO/SI) (YO/SI)-(SE/I)-NA NAKA-NAI-NI/RA ZO RE/MITE/SATE / [TI-(I/YA/SI/NO)]
A DA RA TI 60 SITE QA TI [YA] TA SA ZA TA TEYO YOINA NAKUZO-NAKA-NAI-NI/RA ZO SATE/ TIREYA
あんたら、素晴らしい!60歳で、勝ち/徒歩や。通しましょう。立てよ、良いな。苦難だぞ/泣くぞ。担い、なかぞ/荷なんか、ないぞ。さて散れ/試練や。
(3)まとめ
以上を合わせれば、次のやり取りとなる。
(上部)
老人: ……残念。虹やわ! イダ国の峰や。神隠しがあるなら、相詫びして、すみませんで。
番人: 苦難だぞ、よしな。
(下部)
番人: あんたら、素晴らしい!60歳で、勝ち/徒歩や。通しましょう。立て、良いな。苦難だぞ/ 泣くぞ、荷担ぎ人の、いないまま。
老人:荷物は、ないからな。さて試練や。
この解釈では、イダ山の(洞窟の)番人が、高齢者の登山を戒めるやり取りである。番人は、当初、これ以上の登山を禁じようとするが、還暦の登山と理解し、「自己責任で」と通すが、荷担ぎ人 (シェルパ)がいないと泣くぞ、と警告。
この文脈から、上部で、右から2つ目の「南」の様な記号(NAKUZO)、及び下部で、右から3つ目、同じ記号(NAKUZO)の中身を消した記号は、双方とも、荷を担ぐリュックの漫画と判明。下部の場合、文脈に従い、荷物のない事が強調されている。
ここの番人は、姿を変えて登場した、山の神の可能性があろう。
II. 下から上へ
基本的に「単純な読み方」を踏襲する。
1. 上部
[・]-I-RANA-ITE-MAWA-SU-TESI-[・]-PI-WA-NA-[・]-RA-NA-KA-MI-QA- [・]-NE-MI- TU-DA-[・]- NARA-NE-ZO
〇知らないで、まあ、捨てた 琵琶なら、中身貸して。音は3つ(弦は3本)だ。鳴らないぞ。
〇知らないで、まあ、捨てたビワなら、中身は菓子ね、蜜(果汁)だ。知らないぞ。
古代ギリシャで、ビワ(loquat)は知られており、食された由。また「みつ」(mitz)はヘブライ語で、果汁を意味する。
2. 下部
[・]-RE/MITE/SATE -ZO-RA-I-TEYO-TA-[・]-
さて空 言って酔った(や)
さて出まかせ言いながら、酔ったが
ZA-SA-TA-[・]-TI-QA-TEYO-60-TI-[・]-RA-DA-NA
ざさた(の)ちかって60し(の)らだな
事情が変わり、60歳の乱だな。
3.まとめ
以上を合わせれば、次の通り。
(上部)
〇知らないで、まあ、捨てた 琵琶なら、中身貸して。音は3つ(弦は3本)だ。鳴らないぞ。
〇知らないで、まあ、捨てたビワなら、中身は菓子ね、蜜(果汁)だ。知らないぞ。
(下部)
さて、出まかせ言いつつ酔ううちに、事情が変わり、60歳の乱だな。
以上から銀ピンの用途として、髪の毛用に加え、琵琶の弦を弾く撥が浮上し、総合すれば装飾品。座興用で、還暦祝いの品物だろう。
4.「Mavro Spelio」の金の指輪(KN Zf 13)(GORILA IV : 152-153,162)大城道則・編著「図説 古代文字入門」河出書房新社、2018年。116頁の図4。
「Golden ring Mavro Spelio」で検索可能。美術品の様な金の指輪で、線文字Aが、淵から中央に旋回する様に刻んである。曖昧な記号が多い。
(1)素朴な読み方
各記号を、原則として単音節と捉える。6つの点の上に、横棒の記号は、「60歳」と解釈。中心部の記号は、線文字AのKU+ファイストスの円盤のSOとする。
(ア)時計回り:外側から
A-RE-NE-SI-60-DA-PI-KE-PA-JA-TA-RA(下線)-I-TE-
は れ ね し 60だ ぴ け ぱ や た ら(に) い て
晴れねえ氏 60歳だ。聞けば、やたらにいて
MU/RI(下線)-NE/KU(下線)- SI/NE-JA- SO /KU(下線)
むり なく しね や そく/くそ
無理なく死んでしまえ、即刻/ くそ!
(イ)反時計回り:中心から
外側から時計回りに読んだ際、「60」に続く記号をDAとしたが、ここでは、繰り返し記号「々」と解釈する。
KU/SO -JA- SI/NE -KU/NE-MU/RI-TE-I- RA-TA-JA-PA-KE-PI-PI-
くやしく ねむりて いらたや ぱけ ぴぴ
悔しく 眠ったまま 届いた化けヒヒ
60-SI-NE-RE-A
60 し ね れ な
60氏、眠れや/ 60歳。死ねれん。
(2)精密な読み方
多数の曖昧な記号を、合成記号(複音節)と見做せば、次の通り。
(ア)記号の音価
記号は、外側から時計回りに旋回し、中心に向かうが、外側から並ぶ順番に、①~⑲を付す。
① SI或いはA-(I/YA/SI/NO)。又はRO-(I/YA/SI/NO)-(I/YA/SI/NO)。更にNE。
② RE/ REYA。またはTI-(I/YA/SI/NO)。更にMITE/SATE。
③ NEMU。
④ SI。あるいはRE。
⑤ 60-(I/YA/SI/NO)。
⑥ インダス風に、NO。あるいは「縦棒にヘビ」と見做し、(I/YA/SI/NO)-MI。
⑦ PIあるいはMA-TI-RE。
⑧ KE。あるいはTI-RE-(I/YA/SI/NO)。
⑨ PA。あるいはRO-(I/YA/SI/NO)。
⑩ JA。
⑪ TA。
⑫ ME。あるいはSA-(I/YA/SI/NO)。
⑬ I。
⑭ TENI。
⑮ MU/RI。
⑯ KU/RO。
⑰ A-(I/YA/SI/NO)。あるいはRO-(NI/RA)。またはNE。
⑱ JA。あるいはKU-(I/YA/SI/NO)-(I/YA/SI/NO)。
⑲ KU-SO-(I/YA/SI/NO)。
(イ)解読
(a)時計回り:外側から
SI/ [A-(I/YA/SI/NO)] / [RO-(I/YA/SI/NO)-(I/YA/SI/NO)] / NE
REYA / [TI-(I/YA/SI/NO)]/ MITE/ SATE NEMU SI/ RE
60-(I/YA/SI/NO) NO / [ (I/YA/SI/NO)-MI] PI / (MA-TI-RE)
KE / [TI-RE-(I/YA/SI/NO)] PA / [RO-(I/YA/SI/NO)] JA TA
ME /[SA-(I/YA/SI/NO)] I TENI MU/RI KU/RO
[RO-(NI/RA)]/ [A-(I/YA/SI/NO)] / NE JA / [KU-(I/YA/SI/NO)-(I/YA/SI/NO)]
KU-SO-(I/YA/SI/NO)
①=SIとする場合。
SI REYA NEMU SI/ RE 60-NO MI-YA PI / (MA-TI-RE)
TI-RE-(I/YA/SI/NO) RO-(I/YA/SI/NO) JA TA
ME / [SA-(I/YA/SI/NO)] I TENI MU/RI KU/RO
[RO-(NI/RA)]/ [A-(I/YA/SI/NO)] / NE JA / [KU-(I/YA/SI/NO)-(I/YA/SI/NO)] KU-SO-(I/YA/SI/NO)
知れや、無念し/ 眠し、60の身や/ みやび。
散れ、呪いやったの、最低に/ 姪にて、無理に苦労、やあね。
悔しい、クソや。
①=[A-(I/YA/SI/NO)]とする場合。
A-(I/YA/SI/NO) SATE NEMU SI/ RE 60-NO MI-YA
PI / (MA-TI-RE) TI-RE-(I/YA/SI/NO) RO-(I/YA/SI/NO)
JA TA SA-SI I TENI MU/RI KU/RO
[RO-(NI/RA)]/ [A-(I/YA/SI/NO)] / NE KU-(I/YA/SI/NO)-(I/YA/SI/NO)
KU-SO-(I/YA/SI/NO)
いや、朝で眠れ、60の身や。
混じれん。散れん。ノロいや。
やった氏、最低に、向くね/むくろね。悔しい、クソや。
①=RO-(I/YA/SI/NO) -(I/YA/SI/NO) とする場合。
RO-I-YA TESA/REYA NEMU SI/ RE 60-NO MI-YA (以下、同様)
慰労、やってさ/やれや。眠し60の身や。(以下、同様)
①=NE とする場合。
NE TESA / [TI-(I/YA/SI/NO)] NEMU SI/ RE 60-NO MI-YA(以下、同様)
寝て幸や、眠れ、60の身や。(以下、同様)
(合成) 以上を合わせれば、次の通り。
知れや、無念し/ 眠し、60のみやび。
散れ、呪いやったの、最低に。姪にて、無理に苦労、やあね。
悔しい、クソや。
いや、朝で眠れ、60の身や。
混じれん。散れん。ノロいや。
やった氏、最低に、向くね。悔しい、クソや。
慰労、やってさ/やれや。眠い、60の身や。(以下、同様)
寝て幸や、眠れ、60の身や。(以下、同様)
(b)反時計回り:中心から
KU-SO-(I/YA/SI/NO) JA / [KU-(I/YA/SI/NO)-(I/YA/SI/NO)]
[RO-(NI/RA)]/ [A-(I/YA/SI/NO)] / NE KU/RO MU/RI TENI
I ME /[SA-(I/YA/SI/NO)] TA JA PA / [RO-(I/YA/SI/NO)]
KE / [TI-RE-(I/YA/SI/NO)] PI / (MA-TI-RE) NO / [ (I/YA/SI/NO)-MI]
60-(I/YA/SI/NO) SI/ RE NEMU REYA / [TI-(I/YA/SI/NO)] / MITE/ SATE
SI/ [A-(I/YA/SI/NO)] / [RO-(I/YA/SI/NO)-(I/YA/SI/NO)] / NE
KU-SO-YA KU-(I/YA/SI/NO)-(I/YA/SI/NO)
[RO-(NI/RA)]/ [A-(I/YA/SI/NO)] / NE KU/RO MU/RI TENI
I ME /[SA-(I/YA/SI/NO)] TA JA RO-(I/YA/SI/NO)
KE / [TI-RE-(I/YA/SI/NO)] PI / (MA-TI-RE) NO / [ (I/YA/SI/NO)-MI]
60-(I/YA/SI/NO) SI/ RE NEMU RE / [TI-(I/YA/SI/NO)] / MITE/ SATE
[A-NO] / [RO-NO-I] / NE
約束の慰労にね。苦労、無理にて、言いさ。良い沙汰や、やろうや、ケチれんの。
野郎、ヤケ混じりの身や。60やし、眠れ。あの呪いね。祈ろうね。
(ウ)読み換え
記号①を双斧と見做し、TENMA(天馬)と読み換える。
(a)時計回り:外側から
TENMA REYA / [TI-(I/YA/SI/NO)]/ MITE/ SATE NEMU SI/ RE
60-(I/YA/SI/NO) NO / [ (I/YA/SI/NO)-MI] PI / (MA-TI-RE)
KE / [TI-RE-(I/YA/SI/NO)] PA / [RO-(I/YA/SI/NO)] JA TA
ME /[SA-(I/YA/SI/NO)] I TENI MU/RI KU/RO
[RO-(NI/RA)]/ [A-(I/YA/SI/NO)] / NE JA / [KU-(I/YA/SI/NO)-(I/YA/SI/NO)]
KU-SO-(I/YA/SI/NO)
天馬 (を)見て、眠れ。60やの。混じれん、散れん。呪いやったし、最低に向くね。悔しい、クソや。
(b)反時計回り:中心から
KU-SO-(I/YA/SI/NO) JA / [KU-(I/YA/SI/NO)-(I/YA/SI/NO)]
[RO-(NI/RA)]/ [A-(I/YA/SI/NO)] / NE KU/RO MU/RI TENI
I ME /[SA-(I/YA/SI/NO)] TA JA PA / [RO-(I/YA/SI/NO)]
KE / [TI-RE-(I/YA/SI/NO)] PI / (MA-TI-RE) NO / [ (I/YA/SI/NO)-MI]
60-(I/YA/SI/NO) SI/ RE NEMU REYA / [TI-(I/YA/SI/NO)] / MITE/ SATE
TENMA
約束やしね、苦労、無理にて、秘めた/日の去ったのや。慰労ケチれまい。
見や、60の氏。「眠れ、や」(と)天馬。
(3)まとめ
当時の還暦は偉業で、大きな達成感と感慨を伴った筈だが、実際に到達した時の複雑な心境が表現された、本人特注の記念品だろう。中央の記号は「くそ」とも読めるが、金の素材と螺旋形が、これを演出している。
時計回り、反時計回り、合わせ読むと、この金の指輪を、世話になった姪に遺す、遺言と理解できる。
5.青銅のボウル(ハニア博物館。1385番。「Mitsotakis」コレクション) (GORILA IV : 158-159 )
「Linear A bronze bowl Chania」で画像検索できる。
(1)左から右へ(単純な解釈)
左端から5番目の記号が不明だが、欧米の研究者にならい、KAとすれば次の通り。
A-RA-KO-KU-KA-WA-SA-TO-MA-RO-AU-TA- DE-PO-NI-ZA
アラこく かわ さと まろ あおた で ぽにざ
アラシヤ国、川里、マロ(村)。青田(銅)工房の紅座
「AU-TA」は銅山。線文字AのDE(*45)は大きな建物のイメージなので「工房」、PO(*11)の字源は「胸」なので「紅」と解した。
(2)左から右へ(精密な解釈)
(ア)変則的な記号が多いので、次の通り、音価を細かく調整する。
〇左端から5番目の、KAの記号: NI(*30)の上から「〇」を書いたとして、MARUNI-KA。
〇上記の右隣の、WA: 下部の「足」が2本余計にあるので、WA-NI。
〇右端から6番目のAU: 右側に余計な横棒が短く書いてあるので、AU-YA。
〇TA(*59):底辺に余計な斜線があるので、TA-I。
(イ)すると、次の通り修正される。
A-RA-KO-KU-MARUNIKA-WANI-SA-TO-MA-RO-AUYA-TAI- DE-PO-NI-ZA
アラシヤ国、マローニ川の里/ワニ/倭人の里 マロ(村)。停まろう、青屋台の紅座
(ウ)KO-KUを国と解釈すれば、青銅器時代、キプロスは、アラシヤと呼ばれたので「A-RA KO-KU」はキプロスだろう。銅の重要な産地であり、周辺地域への輸出で有名だった。
マロ―ニ(Maroni)川は、キプロス南部(ラルナカの西36キロ)にある。マローニ渓谷の海岸沿いに、青銅器時代晩期から集落があり、銅を製錬していた由。従って記述は、製作者の宣伝。「マロ―ニ」は、仏語などで「栗」を意味するので、MAの記号は、栗の漫画だろう。
(出典)Alison South-Todd, Late Bronze Age Settlement patterns in Southern Cyprus : the First Kingdoms? Cahiers du Centre d’Etudes Chypriotes, 2002, 32, pp59-72.
(エ)冒頭の3文字、A、RA、KOの下には点があり、繰り返しの記号とすれば、A-A-RA-RA KO-KO-KUとなり、
「あーらら、ここってマローニ川の里/ワニ/倭人の里、マロ村、青屋台の紅座?」
(3)右から左へ
合成記号の音価を調整しつつ、次の通り。
ZA-NI-PO-DE-TAI-YAAU-RO-MA-TO-SA-WANI-KANIMARU-KU-KOKO-RARA-AA
さんぽ でたいや おうろ まと さわにかに まるく ここらならなあ
散歩に出たいや。往路の目的は、沢ガニ、丸いやつ。ここら、ならな。
今度はMAの記号が、カニの漫画に見える。
6.金の針(アギオス・ニコラオス博物館。GORILA IV. 146-147, 162)
これは約15センチの金の針であり、枝の太い部分に文字が刻まれている。「Minoan Golden Needle, Sven Buchholz」で検索可能。「KA-NI」の文字列があり、「蟹」と解釈すれば、身を掻き出す道具だろう。句読点の様な、短い縦棒[・]が4か所あり、「い」、「や」、「し」、「の」で補いながら次のとおり。
(1)素朴な解釈
(左から右へ)末尾の記号には曖昧さがあるので、DE/MAと読み換える。
A-MA-WA-SI-[・]-KA-NI-JA-MI-[・]-I-JA-[・]-QA-KI-SE-NU-TI-[・]-A-TA-DE/MA
あまわし(の) かにやみ(し)いや(し)かきせぬち(や)あたで/あたま
海ワシ氏 カニ病みで 卑しい。掻きせぬ地は 後で/頭。
海ワシ/アマワ氏はカニを病的に好み、卑しい。掻き出していない場所は、後でと/自分の頭。
海ワシと人の名前がかけてあり、アマワ氏は、蟹肉を食べる際、金の道具を使う金持ちと揶揄している。おそらく彼は、全ての小作人等から情け容赦なく地代、賃料や税金を取り立てる習性があり「未徴収の所は後で」との姿勢。「かきせぬち」は「書きせぬ地」(納入が未記録の土地)とも解釈され、金の針が、帳簿の記録用の「筆ペン」に見える。
末尾を「頭」に読み換えれば、アマワ氏への悪口になり、金の針で耳をかくべき旨示唆する。
(右から左へ)
MA/DE-TA-A-[・]-TI-NU-SE-KI-QA-[・]-JA-I-[・]-MI-JA-NI-KA-[・]-SI-WA-MA-A
またあ(の)親戚か(い)。ヤイ、「(の)みや」に(訪問)か(い)? しまわないと。
(2)QA-QA
良く見ると記号QA(AB16)の下に点があり、これを繰り返しの記号と見做せば、次のとおり。
(ア)左から右へ
A-MA-WA-SI-[・]-KA-NI-JA-MI-[・]-I-JA-[・]-QA-QA-KI-SE-NU-TI-[・]-A-TA-DE/MA
あまわし(の)かにやみ(し)いや(や)かか きせぬち(や)あたで
忌まわしい、カニにはまり、いやだ。「母の来ないうちに、後で」
(イ)右から左へ
MA/DE-TA-A-[・]-TI-NU-SE-KI-QA-QA-[・]-JA-I-[・]-MI-JA-NI-KA-[・]-SI-WA-MA-A
ま た あ の しぬせき かか(の)やい(の)みやにか(い)しわまあ
またあの義理の母の「ヤイの!」が、「飲み屋」に(訪問)かい? しまわないと。
(3)精密な解釈
文字列には、線文字A・Bの共通文字(原型)から逸脱した記号があるので、左から右へ、「・」を除き、①から⑱までの番号を付して、次の通り読み換える。
① 左端(及び⑯)の記号。Aの変形: 中央の縦棒が上下に分離しているので、 ANO/ ASI/ SINO/ SINIJA。
② MAが二重になった記号:MAMA/MANI/MARA。
③ WAの変形:四角形を支える足がずれているので、WA-(I/YA/SI/NO)。
④ SI。
⑤ KA、但し中央の縦棒が上下に分離している: KA/KANI。
⑨ 中央より。Iの変形:右下に支線が出ているので、SEI/REI。
⑩ 中央、右寄り。JAの変形: 2連の太鼓にも似ているので、JA/BA。
以上を踏まえて解読すると、次の通り。
(ア)左から右へ
ANO-MAMA-WA-SI-[・]-KA-NI-JA-MI-[・]-SEI-JABA-[・]-QAQA-KI-SE-NU-TI-[・]-ASI-TA-MA/DE
あのまま わし(の)かにや かにやみ(の)せい、やば。かか きせぬち あしたまで
あのままワシのカニや。カニ病みのせいで、ヤバ。母来せぬ地で、明日まで(お預けだ)。
(イ)右から左へ
DE-TA-ANO-[・]-TI-NU-SE-KI-QAQA-[・]-BA-REI-[・]-MI-JA-NI-KANI-[・]-SI-WANO-MAMA-SINIJA
でたあの しぬせき かか(や) ばれい(の)みやに かんにん(や)し わのまま しにや
出た、あの親戚、義理の母や、無礼。「飲み屋」に堪忍や。シワのまま、死にや。
(4)読み換え
① 及び⑯の記号を双斧と見做し、TENMA(天馬)と読み換える。
(ア)左から右へ
TENMA -MARA-WA-SI-[・]-KA-NI-JA-MI-[・]-SEI-JABA-[・]-QAQA-KI-SE-NU-TI-[・]- TENMA -TA-MA/DE
まんてん らんまん わし(の)かにやみ(の)せい、やば。かか きせぬち(や) てんまたんで
満点、爛漫、ワシのカニ病みのせいで、ヤバ。母来せぬうちや。天馬、待たんで。
(イ)右から左へ
DE-TA- TENMA -[・]-TI-NU-SE-KI-QAQA-[・]-BA-REI-[・]-MI-JA-NI-KANI-[・]-SI-WANO-MAMA- TENMA
でたてんま(の) しぬせき かか(や) ばれい(の)みやに カニ(の)あし わのまま まてん
出た、天馬の親戚、義理の母や、無礼。「飲み屋」にカニの足。我が儘、待てん/満点。
7.クノッソスのコップ(KN Zc6)(Arthur Evans卿の1909年の著書「Scripta Minoa」29頁図より)
日向数男偏「新装版 古代文字」(グラフィック社。2014年)、95頁の図5。
内側にインクで書かれた文字列が3つの同心円状に並び、中心部の文字列は、目をつむり杯あおる男性の顔(眉と目尻)の漫画を兼ねる。「Linear A cup from Knossos」で検索可能。時計回り、反時計回りで解読すると、双方向で意味が通じる。
曖昧な文字は、合成記号。A(*08)の上部中央に点のある場合、涙の連想でNAとした。内側の同心円上で、縦棒と点で仕切られた3つの記号(時計回りにNU-JA-I)は、中心部と合体させた。
(1)素朴な読み方
(ア)時計回り
(外側の同心円)
最初の記号は、SA(*31)とRI(*53)の合成記号でSA-RI、2番目の記号はKE(AB44)とRU(*26)でKE-RUとした。
SARI-KERU-(TO?)-QI-NA-KU-PA-NA-KU-NE
さりける とき なくぱ なくね
別れの時には 泣くに 泣くね。
(内側の同心円)
不明瞭な縦棒は、句読点を兼ねた記号。KIの記号は、左上にKUが織り込まれ、KUKI。
KU-PA-TI-KUKI-DA-[・]-DI-NA-[・]
く わ し くき だ (し)じ な(い)
詳しく聞いたが、信じられない。
(中心部)
中心の奥に曖昧な4本の縦棒があり、合成記号でRA-TI。右隣のSEと共に、片目をつむる人の顔の漫画である。
RATI-SE-NU-JA-I-[・]
らち せぬ やいの
理解できないと。
(イ)反時計回り
(外側の同心円) NE-KU-NA-PA-KU-NA-QI-(TO?)-RUKE-RISA
なくな ぱく なきとるけりさ
泣くな、パコ/と言葉はく。泣いて忘れるからさ。
(内側の同心円) NA-DI-[・]-DA-KIKU-TI-PA-KU-[・]
なんじ(い)だ き くち ぱく(し)。
汝を抱き、口パクし。
(中心部) I-JA-NU-TI-RA-SE
いやぬ ちらせ
嫌な 知らせだ。
(ウ)まとめ
以上を繋げば「別れの時には、泣くに泣くね。詳しく聞いたが信じられない、理解できないと」。「嫌な知らせだ。汝を抱き、静かに言う。泣くな、と言葉はく。泣いて忘れるからさ」。
因みにPA-KUはパコ(酒をあおる擬態)。「口パクし」は、中心部の漫画の男が、口を丸く開き、杯をあおる姿と符合する。
(2)精密な読み方(外側の同心円のみ)
外側の同心円に関し、時計回りに読む際、末尾のNA-KU-NEに関し、NAは、線文字A・Bの共通文字、NA(*06)から逸脱するので、上から下へ、三つに分けて、SI-SAN-NAと修正。またKU⇒ KU-YAとし、NEに斜線が入っているのでNE⇒ SINEとした。
更に時計回りで冒頭の4つの文字に関し、縁側の半分が消えているのは(インダス文字風に)意図的な摩耗と解釈し、KIE/KESI等の音価を読み加えた。
(ア)時計回り
(KIE)-SARI-KERU-(TO?)-QI-(E)-NA-KU-PA-SISANNA -KUYA-SINE
きえさりける ときえ なくは しさんなく くやしいね
消え去った時へ、泣くのは、資産亡くし、悔しいね。
(イ)反時計回り
SINE-KUYA- SISANNA -PA-KU-NA-QI-(KESI)-(TO?)-KERU-SA-(KIE)
しね くや しさんな ぱく なき とけるさ
死ね、悔しい、悲惨な/ 資産が! パコ。泣けば、消し溶けるさ。先へ。
(3)総合
以上から「消え去った時へ、泣くのは資産亡くしで、悔しいね。詳しく聞いたが、信じられない、理解できないと」。「嫌な知らせだ。汝を抱き、口パクし。死ね、悔しい、悲惨な/ 資産が!パコと酒をあおる。泣けば、消し溶けるさ。先へ」。
「素朴な読み方」では、やけ酒の原因が定かでなく、突然の離別や別れ話と推測されるが、「精密な読み方」により、船の遭難により資産を失った事と判明する。
するとコップの内側を周回する様に文字を並べ、船が沈む様子を描いたのだろう。外側の同心円で、冒頭の4つの文字が、縁側で半分、消えているのは、強い風を表す。
8.ザクロスの大甕(ZA Zb 3)(GORILA IV : 112-113)
これは、クレタ島東部沿岸に近いザクロスの高台から発掘された高さ約170cmの大きな土器の甕(Pithos)で、中央部が腹の様に膨らんでいる。最上部の周囲が、太い縄の模様で飾られ、その下に線文字Aが、上下2段に刻まれている。GORILA (4.Autres Documents, Texte112) に掲載の文字列(模写)と、J.G.P. Bestによるネット論文 「Zakro Pithos Inscription, Again」に掲載の文字列(模写)を照合しつつ、双方向から読めば、次の通り。
(1)上段
(ア)音価
左端の記号(AB131a)は、線文字B の類推からワインの記号で、その隣は、22。これらを除き、左から右へ、①~⑩の番号を付す。変則的な記号につき、複音節の合成記号と捉えれば、次の通り。
① これは右隣の②の記号、DIに良く似ているが、NAとの合成記号で、NADI。
⑤ 中央寄り、右から6つ目の記号で、ANA。
⑦ MERU。
⑨ Aの上部に短い横棒があり、A-(I/YA/SI/NO)。または、ANA。
(イ)解読
(左から右へ)
記号(AB131a)22 NADI DI KA SE [・] ANA SA MERU NE [・] AYA SE
ワイン 22単位 なんじじかんせ(や)あな さめるね(い)あやせ
ワイン換算22単位。 汝/ 次男、時間だぜ。あな、目覚めるね、あやせ。
(折り返して、右から左へ)
IA [・] NE RUME SA ANA [・] SE KA DI NADI 記号(AB131a)22
いや、寝る前さ、あな(・)せかち なんじ 32単位 ワイン
いや、寝る前さ。あな、せっかち、汝/ 次男。ワイン換算22単位。
(2)下段
(ア)音価
左から右へ、①~⑭の番号を付せば、変則的な記号につき、次の通り。
③ Iの頭部「羽飾り」が通常、3本のところ、4本なので、(I/YA/SI/NO)を加える。更に、内側1本は、点と線なので適宜NAを加える。
④ 線文字A・Bの共通記号(131a)と目され、左に傾けると梢の鳥に見えるので、TO。あるいは、ZOYA。従って、TO/ ZOYA。
⑤ クラゲの様な記号。DEMA、あるいはDE-(I/YA/SI/NO)。
⑧ RE、またはMITE/ SATE。
⑨ 肺/ 本の様な記号。上部の「両耳」で、MA。その下は、PIの底部を矢の羽に仕立てたもので、MAPIYA。あるいはMA+TI+底部の弧(I/YA/SI/NO)と捉え、MATI-(I/YA/SI/NO。
⑩ RE、またはMITE/ SATE。
⑬ TI。上部の菱形をインダス風にWOとすれば、TIWO。他方、右から3番目の記号と合わせれば、「乳」が2つなので、TITINI。
⑭ 右端。合成記号で、KUME。
(イ)解読
(左から右へ)
ANA [・] TA I-(I/YA/SI/NO)-NA TO/ ZOYA DEMA KA A-(I/YA/SI/NO) RE/ MITE/ SATE MATISI RE/ MITE/ SATE NA [・] TI TIWO KUME
あなた いやなぞや まだか はしてさ まちしれ な(・)ち ちを くめ
あなた! いや、なんぞや、またか。走ってさ、待ちを知れ、な! 乳を汲め。
(右から左へ)
MEKU TITINI [・] NA RE/ MITE/ SATE YAMAPI RE/ MITE/ SATE A-(I/YA/SI/NO) KA DE-(I/YA/SI/NO) TO/ ZOYA I-(I/YA/SI/NO) TA [・] NAA
めくちちに(し) なれ やまいてさ。あ、いかんで/ いかして、と いのたなぁ
ときめく父に死なれ、病まいでさ。「ああ、逝かんで/生かして」そう祈ったのになぁ。
(3)総合
以上を合わせれば、次の通り。
いや、寝る前さ。あな、せっかち、汝/ 次男。ワイン換算22単位。
汝/ 次男、時間だぜ。あな、目覚めるね。あやせ。
あなた! いや、なんぞ、またか。走ってさ、待ちを知れ、な! 乳を汲め。
ときめく父に死なれ、病まいでさ。「ああ、逝かんで/生かして」、そう祈ったのになぁ。
以上から、大甕を牝牛等の乳房に見立てており、次男が子供の頃、父が、乳を汲んでくれた。(この次男の授乳の場合、母親の授乳負担の軽減のため、牛乳等が用いられたのだろう)大人になり、やがて父が病気になると、今度は、父のために(ワインの替わりに)乳を汲む様になったが、その父も亡くなった、との思い出話。子供の頃から立場が逆転したが、「父の乳」と言うべきか。
因みに、下段の文字列の右端近くでは、乳房形の記号が2つ連なるが、家畜の垂れ下がる乳首とすべく、文字列を上下逆さに見れば、すぐ下にバケツ状の容器が現れ、乳しぼりの漫画が登場する。
9.クノッソスのコップ/杯(KN Zc7)(GORILA IV : 122-125)
これは、ぐい飲みの様な形の焼き物で、内側に線文字Aが旋回する様に2段にわたり墨で記され、器を覗き込んだ時に、上下正しく読める。「Knossos cup KN Zc7」で検索すると、ネット上データベース、SigLAなどに行き着く。
器の底には小さな「針の穴」が複数あり、醸し出す模様が人面(顔の左側)に見えるが、女性とも、口ヒゲの男性とも解釈可能。また杯の淵の方から、内側を旋回する様に、やや濃い線が刻まれている。
以下、文字列が、常にUの字になる様に、器を見る事とする。
(1)単純な解釈
A(*08)に関し、上部中央に点がある場合、NAとした。底寄りの文字列では、右端寄りのZAは角が生えており、ZAMA/MAZA。また淵寄りの文字列で、SAとRAの下の点は、強調記号として濁点や「ん」とした。
句読点の様な、短い縦棒[・]は、文の冒頭や最後ではサイレントと見做した。底寄りのDU(*51)の左隣の[・]は、DUの象る牛の頭部と合わせ、縦棒2本に見えるので、NI。
(ア)時計回り
(a)底寄り
[・]-RA-ZAMA-NA-[・]-RE-RA-DU-[・]-TI-RI-NU-KA-NA
らざまな (し)れ ら ず(に)ち り ぬ か な
成果なし 知られずに散ってゆく 悲しさ
「らざまな」は、レーズンを連想させ、またペルシャ語でREZAが満足を意味するので「成果」と解釈した。GORILAでは、ZAをZU、RIをZAと読んでいる。
(b)淵寄り
[・]-NE-NA-A-RA-SA-JA
(し) ね な あ らざん や
根を荒らされてしまった故に。
器を花に見立てれば「根」はオシベやメシベと見られ、本来の位置に針穴だけなので「花の目的を遂げずに散っていく」と解釈できる。この場合に想定されるのはミノア人の栽培したサフランの花であり「人間が香料としてオシベとメシベを摘んでしまい、実をつける事が出来ない」との深い嘆きだろう。
(イ) 反時計回り
(a)底寄り
NA-KA-NU-RI-TI-[NI]-DU-RA-RE-[・]-NA-MAZA-RA-[・]
なかぬりしに つられ(の) なまざら(し)
中を塗らないかと 誘われたので 打ち明けよう
(b)淵寄り
JA-SA-RA-A-NA-NE-[・] WI-PI-[・]
や さ ら あ な ね(の) ウィピし
やせた姉御の (署名)ウィピ氏
(ウ)解釈
当初は、サフランの花の嘆き、と読めるが、反対方向に読んだ内容と合わせると、自分の境遇をサフランの花になぞらえた嘆きの詩が浮上する。
「打ち明けよう」について、器の底の性別不詳の横顔があり、署名者「ウィピ」は、戦傷者、受刑者か宦官だろう。すると淵の方から旋回する線は、身体の傷を表す。宦官は、古代のアッシリアやローマでも知られていた由。
なお鳥越憲三郎は、中国雲南省の佤族に関し、高床式・屋根の千木等、家の特徴から弥生人(倭人)に通じると捉えて調査し、子供を名付ける際には、男女の区別を示す冠詞があり、例えば名前が「レン」ならば、男は「アイ・レン」、女なら「イェ・レン」とする旨紹介している。特にミャンマーとの国境近くの布朗族の場合、男に「アイ」、女には「ヰ」。然るに杯の署名「ウィピ」の「ウィ」は「ヰ」に相当するので、肖像はヒゲの女性か。
(注)鳥越憲三郎、若林弘子「弥生文化の源流考-雲南省佤族の精査と新発見」(大修館書店。1998年)
(2)精密な解釈
(ア)底寄り
(a) 音価
各記号に、反時計回りに(左から右へ)、①から⑪の番号を付す。変則的な記号に付き、次の通り。(中央寄りの「丑」記号DUが、⑥)
① NAと読んだ記号。A- (I/YA/SI/NO)、と読み換える。
② このKAは、縦線が上部から突き出ており、突出部分をI/YA/SI/NOとする。
③ NUと読んだ記号。「橋」に似ているので、読み換えとして、HASI-NI。
④ RI(AB53)の下半分が消去されたものと捉え、(KESI/KIE)-RI。
⑤ TI(AB37)の左右から「角」が出ているので、MAを読み加え、TIMA。
⑥ DU(AB51)の左隣の[・]は、DUの象る牛の頭部(左側)と合わせ、縦棒2本に見えるのでNI。
⑨ NAと読んだ記号。A- (I/YA/SI/NO)、と読み換える。
⑩ ZAMAと読んだ記号。(右側に2本、左側に1本)角が生えているので、ZAMA-I/YA/SI/NO)。あるいはZA-I-(NI/RA)。
(b)時計回り
[・] RA [ZAMA-(I/YA/SI/NO)]/ [ZA-I-(NI/RA)] NA /[A- (I/YA/SI/NO)]
[・] RE RA DU [NI] TIMA (KESI/KIE)-RI NU/ HASINI
KA- (I/YA/SI/NO) NA/ [A- (I/YA/SI/NO)]
[I] RA ZAMAYA/ ZAINI ANAYA [SI] RE RA DU [NI] MATI (KESI/KIE)-RI NU KAI ANAYA
(い)ら ざいに あなや (し)れ ら ず(に)まち りきえ ぬ かい な
いらん罪人、あなや。知られずに、混じり、消えぬかいな
(c) 反時計回り
NA/ [A- (I/YA/SI/NO)] KA- (I/YA/SI/NO) NU/ HASINI (KESI/KIE)-RI
TIMA [NI] DU RA RE [・] NA /[A- (I/YA/SI/NO)]
[ZAMA-(I/YA/SI/NO)]/ [ZA-I-(NI/RA)] RA [・]
なかの ぬけりし まち に つられ (し) あの ざいにん/のざま ら(し)
中の(もの)抜けりし、町に連れられた、あの罪人の様(俺)や
(イ) 淵寄り
(a) 音価
各記号に、反時計回りに(左から右へ)、①から⑥の番号を付す。変則的な記号につき、次の通り。
① (MASU/ SIKAKU)+(I/YA/SI/NO) とする。左端にあるので、適宜HASIを読み加える。
② SA(AB31)が分解した形であり、SA-WAKE。あるいはSA-BETU。
③ RA(AB60)の下半分が消去されたものと捉え、(KIE/KESI) -RA。
④ NA/ [A- (I/YA/SI/NO)]。
⑥ NEの中央が、ヘビの様にくねっているので、NE/ NEMI/ KUNE。
(b)時計回り
[・] NE/ NEMI/KUNE NA NA/ [A- (I/YA/SI/NO)] (KIE/KESI) -RA
SARAN / SABETU (MASU/ SIKAKU)+(I/YA/SI/NO)
死ねないなら、消え去らん。差別 増すし。
(c) 反時計回り
HASI -(MASU/ SIKAKU)+(I/YA/SI/NO) SARAN/ SABETU
(KIE/KESI) -RA NA/ [A- (I/YA/SI/NO)] NA NE/ NEMI/ KUNE [・]
(末尾)WI-PI- SIYA
恥かくし、いや差別、消えらん。あなや、泣くね。 (署名)ウィピ氏や
(ウ)まとめ
以上、精密に読んだ結果を合わせれば、次の通り。
中の(もの)抜けりし、町に連れられた、あの罪人の様(俺)や。
いらん罪人、あなや。知られずに、混じり、消えぬかいな。
死ねないなら、消え去らん。差別、増すし。
恥かくし、いや差別、消えらん。あなや、泣くね。 (署名)ウィピ氏や
単純な解釈を敷衍しており、宮刑になった人物の嘆きの詩と判明する。
10.アルカロコリの金の双斧 (AR Zf1) (GORILA IV : 142,162)
英語のWikipediaにて、Labrysで検索すると、上部・右手に登場する。4つの記号が刻まれている。多くの欧米の研究者は、I-DA-MA-TE、と読み、デメテル神と解釈するが、次の通り。
(1)音価
4つの記号に、左から右へ、①~④の番号を付せば、次の通り。
① 左端。上部は、I/RE/SE。REを更に分解すれば、RE/MITE/SATE。中央が、ハンダ付けの様に肉付けしてあるので、TUKE/NIKU。底部は、逆さのSA/DA。従って、(I/RE/MITE/SATE/SE)- (TUKE/NIKU)-(SA/DA)。
② 合成記号で、SA/DA。
③ MAの記号を栗の様に象ったもので、MA/KURI。
④ TE/SATE。
(2)解読
(ア)右⇒左
TE/SATE MA/KURI SA/DA (I/RE/MITE/SATE/SE)- (TUKE/NIKU)-(SA/DA)
TE MA SA/DA (I/RE/MITE/SATE)- (TUKE/NIKU)-(SA/DA)
天馬、去った。肉突け、入れて見てさ、そうだ。
左端の記号を上下、逆さに見ると、首を上げた馬の様な動物が現れる。
(イ)折り返して、左⇒右⇒左
SA/DA MA/KURI TE/SATE
貞待って、さて、まくり。そうだ。
(ウ)折り返して、右⇒左⇒右
MA/KURI SA/DA (I/RE/MITE/SATE/SE)- (TUKE/NIKU)-(SA/DA) SA/DA MA/KURI TE/SATE
混ぜて見てさ、肉付き/貞、聞くにつれ、黙って。
(3)まとめ
合わせれば「天馬が去った。肉突け、入れて見てさ、そうだ。貞待って、さて、まくり。そうだ。混ぜて見てさ、肉付きの貞を聞くにつれ、黙って」。
内臓占いの儀式の段取りが記されている。天馬は、天のお告げを届ける役目から、地上に降り、この双斧に乗り移る。従って、この双斧を使い、動物を犠牲に捧げると、天のお告げが、動物の内臓に徴候を残す、とされたのだろう。
双斧の写真を、特に上下逆さにして想像力を働かせれば、双斧が、左右に翼を広げ、飛んでいく天馬に変貌する。
これは甲骨文字の「午」を想起させる形であり、また漢字の「午」は、双斧を象る可能性があろう。
11. ファイストス出土の長方形の粘土板(PH15)(GORILA I: 304-305)「MA-TE-RE」
主たる記号が4つあるが、西洋の研究者は左から4つ目が読めず、MA-TE-RE-?-[・] としがちである。左端のMAを除き、全て合成記号なので書き出せば、MA-ZO/TE/RO-TE/RE-SA/MA-「・」。
左から2つ目の記号に関し、上の三角屋根をインダス文字風に解釈して ZOをRIと読めば、MA-RI/TE/RO-TE/RE-SA/MA-「・」。すると次の通り。
〇 左から、MA-TE-RE-SAMA-(YA)(まてれさまや)。
〇 折り返して左へ、MASA-RE-TERI (まされてり)。
〇 再び左から、MA-RO-TERE-SAMA-(SI)(まろてれさまし)。
繋げれば「マテレ様や、優れてり。我を照れ覚まし」(マテレ様は優れておられ、我を照らし、目を開いて下さる)。太陽神信仰ならば、語感から女神と推定される。左端のMAをアマと読めば「アマテレ様」となり、アマテラスに通じるか。
12.「特別展 古代ギリシャ - 時空を超えた旅-」(展覧会図録。2016年)より、「線文字Aの粘土板」(展示品 40番。イラクリオン考古学博物館所蔵)
長さ8.9センチの長方形の粘土板で、線文字Aが一列に刻まれている。合成記号が多いところ、左から右へ1から10の番号を付して分析すれば、次の通り。なお5番と10番、それぞれの右隣に、句読点の様な短い縦棒が刻まれている。
1.単純に考えれば、JE。合成記号とすれば、SA-NO。
2.分かりにくいが、Iの右下に短い縦棒と捉えて、I-SI。
3.「一」に類似する、矢の様な、短い横棒でYA/SI。
4.素直に読めば、PU。合成記号なら、DE-SE。
5.馬の頭を思わせるUを書き、その外側に三角形を書いた様な記号で、U-RI。
6.大きな「×」の中央に円を描いた形。KAの外側に矢が4本と見做して、KA-SI-YA。
7.縦長の目の中に、短い縦棒が7本。インダス文字の読み方を参考に、SI-SAN-ME。
8.DE。
9.目の中にTIでMA-TI。
10.NU。
左から右へ、JE/SANO ISI YA PU URI。KASIYA SISANME DE MATI NU (家/砂の 石 やぶ/安 売り。貸し家 資産め で 待ちぬ)。解釈すれば「砂岩の家。安売りあるいは貸し家として。資産を愛でながらお待ちします」。粘土板の素材が砂岩にも似ているので、整合的か。
右から左へ読む際、5番と10番、それぞれの右隣の短い縦棒を、NO、SI、と読み込む。すると、SI NU MA DE SISANME KASIYA NO URI DESE SI ISI JEとなり「死ぬまで資産め。貸し家の売りですし、石の家」。不動産の広告である。