表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
野球部の俺がなんで異世界に行かなくちゃいけないんだよ!  作者: 綾小路 文麿
第一章 始まりの冒険
7/8

第7話 悲しみの業火

シリアスとハードな内容になります。

苦手な方はご注意

目覚めると窓から清々しい日の出の光が部屋を照らしていた。


「結構よく眠れたな」

自分でも図太い性格をしていると思う。

異世界に来てこんなに熟睡するなんてお気楽だよな〜


今日の目的は町の冒険者ギルドに行って登録する事だ。

町の場所は昨日調べておいたけどワクワクするな!

異世界の醍醐味はやっぱ冒険だよな〜

早く金稼がなければ詰むしな。


起きて顔を洗ったタクヤは身支度を済ませて食堂に行くと女将さんがいた。

「おはようございます」


「あら!おはよう」

「よく眠れたかい?朝食出来てるわよ」


椅子に座り女将さんに返事をする

「ぐっすり眠れました!」

「居心地良くてずっと居たいけど町まで行かないと行けないのでこの料理を食べれないのは名残惜しいですね」

朝のメニューはパンにサラダ、目玉焼き、スープみたいだ、スープは胡椒が効いていて旨い。


「嬉しい事言ってくれるね!」

「ならコレはサービスだよ、お昼にでも食べな!」

と包み紙にはパンに野菜とハムが挟まれたサンドイッチを渡してくれた。

「ありがとう、女将さん、村の近くに来たらまた来るからね」

女将さんに挨拶をして、俺は宿を出た。


「リリスに挨拶をしてから村出ようかな。」

俺は村の郊外のリリスの家に向かって歩いていると悲鳴が聞こえた。

「嫌な予感がする急がないと!」


「お母さん――」

「リリスには手を出さないで下さい!」

リリスのお母さんが盗賊らしき奴らに捕まっていた


「エルフの女をこんな村で見つけるなんてラッキーな 事もあるもんだな」

「兄貴〜娘の方はどうしますか?」

「勿論売っぱらうに決まってるだろ!」

奴らは下衆な眼差しで親子を舐めるように見ている


「妻と娘を返してくれ!」

旦那さんが盗賊達に土下座して懇願しているが恐らくそれは奴らに効果はないだろう。


「男の奴隷は高く売れないから邪魔だなぁ」

「お前らやれ!」

リーダーらしき男が命令すると手下の奴らが手に持つ剣を旦那さんの背中から突き刺し頭を切り飛ばした。

「あんまり血を飛ばすなよ服を汚すんじゃねーよ」

ゲラゲラと気持ち悪い笑い声が響き渡る。


「貴方……」

「お父さん――」

「絶対に許さない!!」

リリスの中のなにかがキレて魔力暴走して周りに溢れている。

リリスは意識を失っているみたいだが何かが彼女の身体に憑依している。

「汝の敵を全てを燃やし尽くして塵にせよ!」

「イフリート召喚」


「駄目よ!リリス!貴女の身体が持たないわ!」


「何だこのガキ!お前ら小娘をやれ!」

「兄貴〜ヤバいですぜコイツは……」

「死にたくねーよ―」

「ギャァオアーーーー」

周りが総て紅蓮の業火に焼かれ盗賊達はもう意識もなく葬られてしまう。

「リリス…お願い……」

「貴女だけでも助かって!」



リリスの母はリリーナはエルフであった。

本来はエルフ同士が子を作り夫婦になるのがこの世界では普通だが、彼女はエルフの村に迷い込んだ人間の青年に恋をした。

だが、排他的なエルフ族達はその恋を認めなかった。

エルフにとって人間は奴隷狩りで同胞を攫う敵でしかない。

ましてや人間とエルフの間には子が出来ないとされていた。

里を追われたリリーナと青年カリスはこの村に行き着き周りの村人にも歓迎されて慎ましくも良い家庭を築いていた。


リリスが産まれてからリリーナはある事に気付いた。

リリスは魔力が異常に高く無意識に火魔法を使ってしまうのである。

彼女はその魔力を封じ込めるべく彼女に自身の魔力を全て使い封印魔法をかけていた。

その為に彼女はエルフでありながら人間以下の魔力と病気がちな体質になってしまったが、彼女は満足であった。

可愛くて大切なリリスと愛するカリスが一緒にいるのならそれで。


「コレはいったい……」

「糞!間に合わなかったのか……」

家の周りは焼かれた死体が散乱して、魔力が溢れて気を失ってるリリスにリリーナが多い被さっていた。


「貴方は……タクヤさん?」

「喋らないで下さい!」

「ヒール!」

「ヒール!」

「タクヤさんもう止めて……私はもう助からないから……」

「そんな事言わないで下さい!何があったんですか?」


「賊が私達の事を見つけてエルフだから…奴隷に…」

「糞!ヒール!何で回復しないんだよ!」

「貴方にお願いがあるの……」

「お願いリリスを守ってあげて…この子の中には火の魔神イフリートが宿っているの…」


俺は彼女の話を聞きながらヒールを掛け続けていた。


「今は私が力を抑えたけど……余り力を使い過ぎるとリリスは身体が持たないの……でもエルフの里にいけば私の姉ならリリスをきっと助けられる……」

「お願い…関係ない貴方に頼む事じゃないけどリリスを………助けて…」


「あぁカリス……迎えに……来てくれたの?」

「リリス……愛してるわ…………」


彼女の手が俺の手から崩れ落ちた。


俺は自分が何も出来ない無力さと盗賊に対する怒りや悲しみで気が狂いそうになるがリリスの手を握り一つの決心をした。

「絶対にリリスを守ってエルフの里に連れて行きリリスを彼女の両親達の分まで幸せに暮らさせてみせると……」






俺は近くの村人たちとリリスの両親を近くの見晴らしの良い場所に埋葬してあげた。

俺はリリスにリリーナが言っていた最後の言葉と体の中のイフリートについてわかる事を説明した


「リリスは俺と一緒に来るかい?」


「一緒に行っても良いの……?」

彼女は泣きそうな瞳で俺を見ながらか細い声で訪ねてきた。


「勿論!俺がリリスを守ってずっと一緒に居るよ!」


「本当に?タクヤお兄ちゃんは居なくならない?」

「私ひとりぼっちは嫌だよ……」


彼女を励まして俺は震える彼女の身体を抱きしめて力強く行った。


「絶対ひとりぼっちにはしない俺が付いてるから!」




リリスの旅支度や家の片付けも村人の助けもあり無事に終わった。

村の人もリリスの事が心配だが、孤児を養う余裕はこの村にはそんな無いだろう。

ましてや、魔神の力を宿した少女などまた盗賊が襲って来ないとも限らない。

そんな状況では村人を責められない。

それにリリスの将来は、エルフの里で力を制御してもらう方法が必要だ。

両親に誓った通り、俺はリリスを守ってエルフの里を目指しながら、今度は全ての人を守る為にも強くならなければと決心する。


「それじゃリリス、出発しようか?」


「うん!」

彼女は真っ直ぐ俺を見ながら頷いた。

その瞳は一晩泣き続けたせいか腫れているが瞳の中には強い意志が垣間見れた。


まさか、村に入る時も出る時もリリスと一緒になるなんて思わなかったな

新たな旅の始まりに不安と胸が高鳴りだしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ