13 青に溶ける
青天に日差しが眩しい。夏らしい陽気だ。
柚綺はセーラー服をはためかせて煽風を自らに送っている。
「暑いね」
「暑い」
広場の入り口に、アイスの幟を括り付けたカラフルな屋根つきのリヤカーが止まっている。小さい子にアイスを手渡すおばちゃんの姿が見て取れた。花火アイスの移動販売だ。
暑さに耐えかねて、私達はそちらへ向かった。
お金を渡してアイスを注文すると、おばちゃんは慣れた手つきで原色よろしく鮮やかな氷菓を薔薇のように盛り付けていく。
8色ほどはあるだろうか。それほどカラフルなアイスを受け取る。
青々とした木々から木漏れ日が降り注ぐ。
木陰にかかるベンチを探して座れば幾分暑さは和らいだ。
アイスに口をつける。なんとも言えない、アイスクリームにもシャーベットにも似つかない食感。仄かな甘さは冷たさと共に体に浸透する。幼い頃から食べているせいか、とても安心する味だ。
「柚綺」
「ん」
「夏だね」
「うん、まだまだこれからも暑いよ」
「そうだね」
何か感情の揺れを示すでもなく柚綺がコーンをかじる。その時私はまだアイスを食べていた。
「あ、柚綺、見て」
アイスを食べ終わる頃、広場の隅っこに忘れられたようにブランコがあるのを見つけた。
「遊ぶ?」
「え…うん」
そんな提案をされると思わなくて少し考えてしまった。柚綺は冗談でそういう事を聞いたりしないから。
ブランコに乗るのなんていつぶりだろう。高校生にもなれば滅多に乗ることもなくなるし、それになんとなく恥ずかしい。けれど柚綺が隣にいれば、そんな事は関係ないような気がした。
座って最初に感じたのは違和感だった。地面までの距離、こんなに短かったっけ。自分も成長したのだなと感じる。視界の端で柚綺がブランコを漕ぎ始める。私も追いかけるように地から足を離した。
きい、きい。
前に出たら足を折り曲げて、後ろに行けば足を伸ばして。小さい頃の感覚はまだ残っているようだった。
風を感じる。漕いでも漕いでも空は遠い。でも天高く投げ出されて、少しだけ解放されるような心地に満ちる。
柚綺の空色の髪は、まるで蒼天と溶け合うかのように揺れる。靡くスカート。規則的に動く細い足。
君の瞬間は一つ一つが幻想的で、現実を淡く彩る。
私は本当に柚綺のことが好きなんだと思った。
「柚綺」
「なに」
「好き」
「私も。優美のことが好き」
ブランコを漕ぎながら会話をする。すれ違わない声のやり取りに、息ぴったりに動いていた事に気づいて思わず笑い出す。
そうすれば柚綺もつられて笑い出す。
こんな夏が、ずっと続けばいいのにと思う。




