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安アパートと宇宙船  作者: 世も据え置き
第十一章  アクションシーンは巻き込んで
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第二話  俺氏、用心棒と異世界と②

「大海原だー!」

 俺は船長。宇宙船の? いいや時は大航海時代だぜ。船の船長だ。

「偽装としてこの世界の技術で製作可能な外見に変更。ご主人とヨロさんの服装は向かう地方の一般的な旅装です」

「いかすいかす」

 革の鎧にショートソード。ヨロさんも腰に日本刀を吊るしているが似たような装備。

 つまりこれは、

「最終的な幻想であるな、初期の頃の」

 あうとあうと。

「ちなみに感染症・風土病の類、言語、等々の対策は実施済みです」

「ごくろうごくろう」

「語彙が、知能が低下していますよご主人」


 だってしょうごのいじょのいこ。いやしょうがないじゃないか。

 これは、ようやく、待ちに待った。

「異世界転移だー‼」

「RPGだー」

 ちっちっち、甘いなヨロくん。異世界とゲームの世界を一緒にしてはいけないよ。

「ステータスオープン」

「やめてっ」

「異世界ではなく異星です」

 うーん……異世界は一度行ったことがあるけど、あれはSAN値減る系だったからなあ。あれこそ異星であって欲しかったなあ。




 とまあ俺達は海の上に居る。何時の間にか船へと変身した宇宙船に揺られて、いや気味が悪い程に揺れないな……。まあ豪華客船並みの大きさの帆船に乗っているのだ。若葉さんは「小さくなりすぎて窮屈です」と言っていたが、十分すぎるほど広いぞ。


「若葉さんは町娘風旅装か。可愛いじゃないか」

「……もうすぐ見える港に寄港します。あまりはしゃがないようにして下さい」

「あいさーキャプテン」

「……もういいです」


 *


 若葉さんに愛想をつかされてからしばらく。目的の港に入港した。

 謎の要領の良さで入港許可やら身分証やら税やらの支払いがあっという間に済む……かと思いきや、一波乱だ。

 

「ちょと待ちたまえ……もう一度聞く。船員の数は?」

「三人です」

 

 見た目普通の外国人の宇宙人が、うちの宇宙人である若葉さんを見て目を丸くしている。

「ただの商船が寄港すると聞いていたのに、着いたのは見た事もない巨大で立派な船だし……君の親御さんはどこに? 船長は?」

「船長は彼ですが、責任者は私です。書類は揃っている筈です」

「ううむ……そうは言ってもねえ君」

 そうしてこちらを睨む事務仕事の人。そんな目で見られても困る。顔色悪いし脂汗ダラダラ。大丈夫だろうか。


 なんか揉めてるが俺のうっきうきは止まらない。隣に居るヨロさんもまだかまだかと足踏みしているぞ。

 

 ドタドタと後ろから聞こえてきた方を見ると、我が船『若葉さん号』を見分していた衛兵さんである。


「おう、どうだった?」

「……本当に誰もいません」

「……積み荷は?」

「キャ、キャロッサが――」

 事務の人はあからさまにホッとした表情になった。大した物じゃあ無かったからだろう。

 

「で、キャロッサって何?」

 こっそり聞いてみた。

「主要な食物の一つです」

 ふ~ん、それなら問題ないな。さすが若葉さん。抜かりなく荷物検査の事も考えている。


 だが、

「か、数え切れないほど……」

「なんだそれは。それをするのが君達の仕事だろう?」

「か、数え切れないっ! 本当に数え切れないんですっ!!」

 衛兵さん様子がおかしいことに事務の人も気づいた。

「どういうことだ? 詳しく話したまえよ」

 そう言われた顔色の悪い衛兵さんは生唾を飲み込み、一息吐いて言った。

「し、調べました……出来る限りっ! ……う、上から下まで……みっちり……何もない、それ以外何もないんですっっっ!!」

「ッッッ‼」


 へーそうなってたのか。宇宙船から姿を変えてから船長室とやらから甲板にしか出てないから知らなかった……って、

「いやおかしいでしょう」

「複製したはいいのですが、思ったよりこの星の船が小さかったのです」

 若葉さんはそう言って頬を膨らませるが、この若葉さん号はデカい。俺から見ても巨大な交易港に入らないのだ。

「なあ、本当にこの船ってここの技術で造れる外見をしているのか?」

「していますよ。この星の知性が高い人物を上位から500人ほど集めて地球時間で280年ほどかければ作れます。見た目だけですけれど。あ、浮きはします」

 それって造れるって言うの?

 

 因みに今、何処かというとまだ船の上。大きすぎて港に入れないので手前で停泊。事務の人が衛兵さんを連れて小舟で慌てて乗り込んだ次第である。

 

「……」

 ファーストコンタクト現地民である彼らは沈黙したまま見つめ合っている。

 あれれ、俺何か不味い事しちゃいました? なんてとぼけなくても分かる。不味いですよ。

 

 彼ら気付いただろう、自分達の置かれた状況に。

 不気味な船員三人以外人っ子一人いない超巨大な船。それはまるで幽霊船そのものだ。そしてここはまだ海の上。港がすぐ側だというのに声は届かない距離。周囲の船は転覆を恐れて離れてしまった。助けを呼ぶことも出来ない。

 こんなシチュエーション、ホラー展開待ったなし。

 

「うぁああああああああ……あ? ああ問題なし。ほら、これが書類だ」

「ありがとうございます」

「どうしたのだこいつら?」

 港を眺めていたヨロさんが、不思議そうに眺める。

「まあ、落ち着いたんでしょう」

 先程まで口が裂ける程に叫んでいた彼らの、その人が変わったかのような落ち着きぶりを。

 

 *

 

「私は姉さんの様に船の性能を貶めてまで偽装する必要はないと思っています」

 そんな若葉さんの言い訳がましい言葉を上陸した俺達は聞いていた。

 

 あの時若葉さんは面倒になって、宇宙人お得意の記憶操作を使ったのであった。

 なんだかんだと自制していた能力であるが、あの状況はああするしか無かっただろう。事務の人も衛兵さんも、コズミックな深淵に気づいた事実を忘れてSAN値が減らずに済んだのだ。良かった良かった。

 まあ若葉さんにも抜けたところもあると分って俺は――

「い、い゛だイ」

「さ、行きますよ」

 お尻を抓られた。

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