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安アパートと宇宙船  作者: 世も据え置き
第十一章  アクションシーンは巻き込んで
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第二話  俺氏、用心棒と異世界と①

「で、ここは何処なのかね、若葉君」

「何ですかその口調は……」


 作戦を決行したその日。俺達は成穂さんの夕飯(茄子の揚げびたしとチキン南蛮。美味)をたらふく食べた後、就寝……したと思わせてこっそり二人で家を出たのだ。

 もちろん俺に計画などなく、若葉さんに叩き起こされ、寝ぼけ眼で手を引かれて付いた先が、若葉さんの中。

「温かいなり」

「それはご主人の心地よいと感じる環境に設定していますから」

「いやまあ……ありがとう」


 まあ種を明かすと宇宙船の環境だった。

 若葉さんの本体であるらしい宙空界面多機能フリゲート艦『若葉』だ。

 妖精艇と言う割には武骨な計器類がホログラフィックを浮かび上がらせている。まあSFの白髭を蓄えた艦長が居そうな艦橋、いやブリッジそのままである。

「ちょっとレトロSFっぽいけどそれもまたよし」

「……私をレトロ呼ばわりとか……誰のせいで……」

「ん、何か言ったかね?」

「内装の設計はご主人の趣味から決められました」

 ……そんな素直に返されると、難聴系の形無しじゃないか。


「で、どこへ向かっているのかね」

「まだその口調を続けるのですか……向かっているのはとある惑星です」

「おおっ、急にSFアドベンチャー!」

「そこであるものを仕入れます」

「ええっ⁉ 若葉君のなんかすごいコズミックパワーでちょちょいと何とかしてくれるんじゃないの?」

「男の意地はどうしたんですか?」


 ぐぬぬ……そう言われると強く言えない。

 そういえば刀の修復の時もよく分からん空間に閉じ込められて必死で鉄を打ったしなあ……。思ったよりも宇宙人とは過程を大事にするのかもしれん。

「まあ……己が苦労してこそだよね」

 ちょっとだけね、ね。

「まったく姉さんも甘いんだから……」

 と、若葉さんが俺に聞こえるように呟き、盛大に溜息を吐いた。俺、難聴系主人公。独り言は聞こえないようによろしく!

 

 

「よお、凄いのお」

「うぴゃう‼」

 びっくりしたびっくりした。

 振り返るとそこには由紀ちゃんの友人の弥生ちゃんが居た。

「え、なになに何で、えあれ?」

「幾ら我でもこんなに速く飛べぬぞ!」

 あれなんか口調が?

「ああヨロさんか」

「お主は鈍いのお……この纏う神気が分らぬのか」

「まあ……格ゲーの1Pと2Pカラーの違いみたいな?」

「我をRPGの色違いの雑魚と一緒にするな!」

 そこまでは言っていない。というか自称神様のくせにゲームに詳しいな。

 

 この人はヨロさん。銘刀『夜路死苦』に降りた神様(事象)だ。弥生ちゃんに憑りついてしまったのは、まあ俺に多分に原因がある。

 しかし無理やり引き剥がすのは宇宙人である成穂さん達にも手間取るということで、何とか一つの体に同居してもらっているのだ。

 

「いやあ時代劇も面白いが、げぇむとやらもいとおかしである」

「流暢にアールピージーって言った後に、そんなキャラ作り始められても……」

「弥生に最近神様っぽくないと言われてな……」

 弥生ちゃんとヨロさんの仲は良好のようだ。

 

「で、何故ヨロさんがここに?」

 不味くない? 成穂さんと若葉さんは俺の遠い親戚っていう設定で通しているのに、急にスペースオペラな世界にようこそ! ってのは。

「問題ありません」

 俺達の漫才に若葉さんが割り込んだ。


「始めから説明します」

 そう前置きしてからのコホンと咳をするジェスチャー。くぁわいい。 

「彼女は護衛役として来てもらいました」

「護衛? 俺が居るのに?」

「……」

「ごめんなさい」

 若葉さんは冗談に厳しい。

「私達では現地の知的生命体に妨害に会う……絡まれる危険性が高いのです」

「う~ん気に入らないが理解は出来る」

 なんせ俺はひょろがりのおっさん、いやお兄さん。若葉さんに至っては名実ともに小学生だ。

「その点ヨロさんは都合がいいのです」

「どこが?」

 横に立っているヨロさんを上から下まで眺める。

 

 2Pカラーは例えでしかなく、目の前に居るのはポニーテールの似合う美女子中学生である弥生ちゃんである。俺の打ち直した日本刀を腰に佩いている以外は普通の女の子にしか見えない。しかし何故か誇らしげに背を反らしている。

 

「弥生さんは高次元精神体の分体であるヨロさんを宿しています。これから向かう星ではその方が威圧効果が高いのです」

「おおう、なるほど……」

 だからこんなに居丈高なのね。……そうやって反らしていると弥生ちゃんも結構おっぱいがあるんだなあと、

「我を邪な目で見ておらぬか?」

「見てません」

 ヨロさんは見てません。

「つまり地球の人間とは感覚器が違うのです。私としてはどちらも劣って見えますけれど」

「一言多いぞ小娘よ」

「宿り主に義理立てですか?」

 こらこら仲良く仲良く。と、ビビりな俺は口に出しては言えない。

 

「あれ? でも弥生ちゃんにバレたら不味いのは解決していないじゃないか」

「それは大丈夫だ。今は弥生はぐっすりだ」

「そうなのか」

「ああ。普段は感覚を共有しているが、どちらかが寝ている時は別なのだ。もちろん緊急時にはその限りではないがな」

「へー」

 本当に上手くやっているんだな。

 彼女達の境遇に責任を感じていた俺は、少しだけ肩の荷が軽くなるのを感じた。

 

「だから夜中にしかゲームが出来んのだ」

「少しは自重しようか」


 *

 

「接触対象の観測圏、及び経済圏に侵入します。偽装フィールド展開」


 気付くと、窓から覗く真っ暗だった宇宙には、ぽっかりと浮かぶ青い惑星が恐ろしい勢いで迫っていた。

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