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安アパートと宇宙船  作者: 世も据え置き
第十章 宇宙船と弥生ちゃんの憂鬱
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第二話  俺氏、ご年配は怖い①

 それでどうするの?

「と聞きたい」


 チャッピー像を作ったのが成穂さんだと教えられた弥生ちゃんは大いに感動、尊敬し、終いには成穂さんをお姉ちゃん呼びするまでになった。

 曰く「弟しかいないから姉が欲しかった」だそうで。成穂さんを姉と呼ぶ由紀ちゃんが実は羨ましかったそうだ。

 

「どうもなにも……貸してください」

 若葉さんはひょいと置かれた刀を持ち上げる。

 その刀は正に人を切るために造られた、禍々しささえ感じられる一品だった。

 

 そりが深く切っ先に行くほど細くなる刀身は時代劇で見慣れた日本刀よりごつく見える。刃文は真っすぐで飾り気のない拵えと相まって質実剛健な印象を与える。

 まあぽっきりいっているので全て過去形なのだけれど。


「はい」

 若葉さんの気の抜けた声とともに、折れた部分が吸い付くようにくっついた。

「ちょまてよ」

 俺の似ていない物真似がさく裂する。

「わざわざ現代技術を使う必要はありませんよ。時間を戻せば元通りです」

「時間を戻すというのは正確な表現ではありません」

 妹の仕事に満足げな成穂さん。そんな彼女の赤ペン先生風注釈が入ったが、そんなことはどうでもいい。


「こんなの持っていけないだろう!」

 うちの宇宙人が時間を巻き戻してくれました――って言えるわけないだろうもん。

 

「じゃあ同じものを一から作りますか?」

「それは贋作って言うんだぞ」

「ご主人はどうでもいいことに細かいです」

 何故だ。始めは俺の突拍子もない発想が、宇宙人を困らせるっていう展開を期待していたのに。

 これではまるで、俺が常識人みたいではないか。


「しかし頼まれた依頼を私達は承諾しました」

「それは絶対に履行しなければならないのです」

 おおう……なんか急に宇宙人っぽいこと言い出したぞ。

「主、私達は機動艦そのものなのです。受けた命令を無理だと破棄するなど、自分自身が認められないのです」

「姉さんの言う通りです」

 つまりそう造られたから、しっかり仕事をこなしたい。そういう事なのだろう。

 あ、そういえば君達が宇宙船だっていうの忘れてたわ。

 

「それじゃあ記憶操作しちゃおう」

 なんでも簡単、解決しちゃう記憶操作だ。

 これで刀を折れていない事にすれば問題は起こる前に無くなる。

 人道的には問題だが、ここは平和的宇宙人との初邂逅を先延ばしにすべく、無かったことにするのが良い。

 宇宙とのファーストコンタクトは何処かの大統領にでも任せておこう。騒ぎになるのだけは避けたいのだ。

 

「折った事を忘却させると、再び弥生さんは刀を振る回すことになります。そして折ります」

 確信めいた言い分だなあ。

「完璧な記憶操作とはそういうものです」

「完璧さを感じたことはないなあ」

 使われた人はそこはかとなく違和感を感じている様子だった気がする。

 

「誤差の範囲です」

「そうです」

「……そうですか」

 俺は押しに弱いのだ。

 

「じゃあもう上手くくっついたってことでいいんじゃない?」

 俺は匙を投げた。

 

 *

 

 後日、弥生ちゃんに直ったと伝えると、すぐさま引き取りに来た。

 そして何度もお詫びと感謝の言葉を述べながら、刀を大事に抱えて帰っていったのだった。

 

 めでたしめでたし――とはいかなかった。

 

 

 ***


「祖父に合っていただきたい」

 ある日、突然訪れた弥生ちゃんは、開口一番そう言い放った。それはもう緊迫した様子でである。

 

「やっぱりバレた?」

 まあそういう事もあるかな、と思ってはいた。

 日本刀といえば鋼の芸術品と言われるくらい巧みな技術の結晶だ。

 いくら宇宙人の謎技術を用いても、見る人が見れば修復された事に気づいてもおかしくない。

 

「申し訳ありません」

 そう頭を下げるが、悪いのはこちらである。

「いやいや、こっちの不手際なんだし謝るのはこっちの方だよ」

「でも叱られるべきは私一人の筈なのに、成穂お姉ちゃんと若葉ちゃんを巻き込む形になってしまって……」

 あ、俺じゃないのね。

 

「それ怒り心頭って感じなのかい?」

 あまりに神妙な弥生ちゃんの様子に怖気吐いて質問してみた。そんなに怖いおじいちゃんなのだろうか。怖い。

 

「それが……」

 弥生ちゃんは少し言い淀んだ後、詳細を語り始めた。

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