第二話 俺氏、新しいクサにはまる③
何時からだ? なぜ今まで疑問に思わなかった? でも女として生きてきた記憶もある。なんだこれは?
「お前らがやったんじゃあないのか?」
「夕飯が冷めてしまいます」
「何でも私達がやっていると思われるのは心外です」
どういうことだ? こいつらが嘘を付いているのか? 俺がおかしくなったのか?
「主の精神を調査しましたが、過度の混乱が見受けられる以外は、外部からの精神操作の兆候は現時点ではありません」
「何度か弄ったせいで不調が出たんじゃないでしょうか」
なんか恐ろしい事言っているが、彼女、いや彼らも俺の態度に疑問を持っているのが分かる。
今回の件は宇宙人的要素が絡んでいないということなのか?
「煙草!」
そうだ、煙草だ。成穂さんから買った煙草を吸ったあの日からおかしくなったのだ。
慌てて懐を探ると、確かにそこにあった。
見慣れた極彩色のパッケージ。
「これをお前らから買ったんだ」
「……確かに私達が制作した物のようです。しかし作った記憶はありません」
「……ご主人の頭がおかしくなった訳ではなかったのですか」
二人はその煙草を調べてみると言ってくれた。
取り敢えずこれで問題は解決だろう。
そうと決まれば、である。
これは二度目のチャンスなのだ。
女体化するという機会が巡ってきた男がするのはお決まりのアレである。
改めて鏡で見た自分は中々の美人だった。くたびれたOL風とでもいうのだろうか。眠たげながらも大きな目。大きな胸。くびれた腰。
成穂さんにも若葉さんにもない大人の色気がむんむんである。
さっそくお風呂の続きと行こう。そして女体の神秘を観察するのだ。
*
……なんか上手くいかない。
今の俺は男性である俺と、女性である俺が同居しているような感じだ。
つまり興奮しようとしても直ぐに冷めてしまうのだ。
成穂さん、若葉さんも男であるということに気楽さを感じながらも、女ではないことに幻滅する自分がいる。
これはもしかして。前回は気付かなかったが、余程のナルシストでないと女体化してもエンジョイ出来ないのではないか?
「煙草の解析が完了しました」
「ありがたい。早く元に戻りたいと思っていた所なんだ」
俺はもう現状に辟易し始め、ぐったりなのだ。
「この煙草にはリラックスする効果がありました」
「うーんそれだけ?」
「はい。これを私が作った記憶はありませんが、間違いなく私が作ったものです。なので簡単に解析できました」
「この男性が女性に、女性が男性になっていることと、煙草は関係ない?」
「私にはそうした次元改変を認識していません。主は接触した時点で女性、XX染色体保有者でした」
どゆこと? つまり……
「成穂さんでも解決できないってこと、戻せないってことなのか⁉」
「一度全人類の遺伝子を回収、雌雄を反転して再構成。生産し直して、昔からそうであったと偽の記憶を植え付ければ、見かけ上は雌雄の逆転が可能です」
「……それはもう別人では?」
これは参ったぞ。俺はずっとこの違和感と過ごしていかなければならないのか。性同一性障害の人の気持ちが少しは分かった気がする。
「まだご主人は自分が男性だったと言っているのですか?」
「はい。若葉も検証は行ったのですね」
「まあ、一応はですけど。私も姉さんと同じで異常は見受けられませんでしたけど」
「若葉さんもなのか……」
「私は姉さんには能力は劣ります。姉さんが分らないなら私にも分りませんよ」
俺はがっくりと肩を落とした。




