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安アパートと宇宙船  作者: 世も据え置き
第八章 宇宙船、学校へ行く
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第一話  俺氏、ブルマを思う②

「でどうなの?」

「通っていることになっています」

「私もです」


 その日の夕飯時、その辺を聞いてみた所、そんな答えが返ってきた。

「そういえば成穂さんはアルバイトは夕方からにしていたな」

「この見た目ではそれが普通だと統計を取りました」

「私はこの国の法から」

 なるほど。同じ宇宙人であっても情報のアプローチに個性が出るな。

 

「じゃあこの近くの?」

「はい。人の歩行速度、交通機関から逆算して不自然ではない教育機関に」

「私はこの地区の指定校に」

 なるほどー。二人とも考えているんだなあ……宇宙人なのになあ……あの便器で挨拶から、ここまで社会になあ……しみじみ。

 

「主の品を一品減らしましょう」

「あ、まってすみませ――ってそれ今日のメインの唐揚げじゃねえですか厳しすぎぃ!」

「過去のことをねちねちとこれだから童貞は」

 え、嘘、ぐれちゃった⁉ うちの宇宙人ぐれちゃった?

 

「つまり、なにもない場合は通学しています」

「です」

「そうだったのですか、はい、あ、唐揚げは本当に没収なんですね」

 あれ? でも待てよ。

「以前に宇宙船旅行とか他にも俺が非番の時にも居たじゃないか、平日だったりした時も」

「現状、無遅刻無欠席です」

「私もです」

 若葉さんは最近ここに来たから分かるとして、成穂さんは無理だろう。一体どういうことだ?

「……ああ宇宙人的なアレですね」

 一人で納得した。この人達は非常識が服着て歩いているようなものだった。きっと分身の術的なもので通っているのだろう。

 

「ふ~んなるほどな~」

 一人納得して味噌汁を啜る。美味しい。今や成穂さんはうちのおっかさんになりつつある。これは何時、俺と同衾していても何もおかしくないな!

 

「……それでこれなのですが」

 不承不承。そんな様子を隠すことなく、若葉さんは一枚の紙切れを無造作に置く。

「ん、なんだそれ?」

「授業参観のお知らせ、とあります」

 夫婦よろしく一緒に覗き込んだその紙には、保護者の参加の有無の記載を促す項目と、日程が記されていた。

 これはまあ、つまり授業参観のお知らせだな。

「ってええ! じゅ、授業参観のお知らせぇぇ!」

「何を取り乱しているのでしょうか?」

「だって授業参観だよ⁉ 夫婦が結婚して性行為をして出産してその果てにあるのが授業参観だよ‼ いいの? 童貞でもいいの? 参加資格とかで弾かれない?」

「通い始めて直ぐにこんな行事があるなんて……だから嫌だったんですよ、この童貞。」

 若葉さん。痛い、痛いから急に急所を抉るのは止めて欲しい。

 

「……どういうモノなのか情報だけでは判断が付きません」

 俺が悶えている横で成穂さんは思案気(無表情)にプリントを眺めている。若葉さんは俺の唐揚げを不機嫌に頬張っている。

 

「生徒の授業風景を親御さん、まあ俺達なら保護者だな。が、まあ眺めるだけ……だな」

「解りません」

 そうだな、俺も言ってて分かんないもん。

 

 授業参観というのがどういうものなのか、それは成穂さんも分かっているのだろう。しかしそれを行う理由が理解できないのだ。

 まあ宇宙人では当たり前かもしれない。授業参観という行事が全ての国で行われているわけではないだろう。

 つまり保護者の心配を無くす為の行事に必要性を感じることが出来ないのだ。

 これは独り身である俺にも共通することである。世の親御さんは大変だなあ……ではなく今は他人事ではないのだった。

 

 ……あれ? 授業参観って何? 何をすればいいの? 三者面談とは違うの?

 うむむ……しかし若葉さんが来てからいきなりのトラブルが。しかも向こうからやって来るとは……宇宙人まで対象にするとは恐るべし義務教育。恐るべし日本の教育制度。

 

「まあ分からなくても問題ありません。家庭の都合ということで上手くあしらっておきます」

 この話はもうお終いだというように、若葉さんは食器を流しへと運ぶために腰を上げた。

 

 ***

 

「これは行かねばならぬ」

「若葉は不要だと言いましたが」

「いいや、あれは強がりだ」

「そうなのですか?」

 久々に出た成穂さんの疑問形は人の心情的な問題であった。いやまあ今回は宇宙人の、であるが。


 今、俺達は若葉さんを見送った後(本当に学校に通っているようだ)、二人きりになれるタイミングで昨日の事を切り出した。

 

「つまりは愛情を欲しているのだよ」

「愛情」


 よくある事だ。

 新しい家庭、自分の立ち位置の不安定さ。そんなことが重なって同居人が自分をどう見ているか、愛しているのか不安になって、人を試してしまうのだ。

 ドラマとかで見たから間違いない。

 

「つまり来て欲しくないと言いつつ来て欲しい。その幼い心を理解し、受け止めねばならないのだよ」

「……そうなのですか」

 そうなのです。

 

「しかし授業参観など行ったこともないからなあ……慎重派である俺はいささか不安だぜ」

 

 子供の頃の記憶はおぼろげ過ぎて駄目だ。俺はたぶん緊張しすぎて頭真っ白だったろうしな。

 そこで、である。

「ここは斥候を派遣して内部調査を行う」

「斥候」

「こいつだ」

「わん」

「……チャッピーさんですね」

「由紀ちゃんに言って借りてきた」

「緩いですね」

「信用されていると言ってくれ」


 俺の作戦はこうだ。

 チャッピーに女の子バージョンに変身してもらい小学校に侵入。若葉さんにバレることなく授業参観の情報を集めて貰う。

「そして華麗に脱出だ」

「わん」

「そこまでする必要はないと思いますが」

「ついでに俺も美少女モードになって付いていく」

「……そこまでする必要はありません」

 行きたいんだもん。

「駄目です」

「どうして?」

「倫理的に駄目です」

 はっはっは、宇宙人に倫理観で説教されちゃった自己嫌悪が凄いです。

 前の成穂さんなら素直に従ってくれたのになあ。

 まあしょうがない。

「なんとかテレパシー的なもので連絡取りあえるようにはしてくれませんか?」

「分かりました、それぐらいなら」


 ふっ、我ながらなんて隙のない計画だ。

 さあ、作戦名『若葉さんの学校生活を覗いてついでにブルマを拝んじゃおう作戦』開始だ。

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