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安アパートと宇宙船  作者: 世も据え置き
第八章 宇宙船、学校へ行く
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第一話  俺氏、ブルマを思う①

 新しい同居人が増えた。

 若葉さんという成穂さんの妹さんである。

 見た目は小学生高学年くらいのツインテールの可愛らしい美少女だ。

 

「早く食べて下さい、片付けるは私なんですから」

 朝は何時も成穂さんの作った朝食を頂くのが日常なのだが、今日から可愛い妹に急かされるというオプションが付きました。

「わが生涯に一片の悔いなし」

 そう心から思える。

 

 いや思えないわ、俺童貞だったわ。

 

 秋頃に宇宙船を獲得するという宝くじも真っ青の当選を果たしてから今はもう冬真っ盛り。

 世間ではクリスマスなどと愚かにもはしゃいでいるが俺は童貞。

 

「あかんわ」

「はいご主人、コーヒーです」

 成穂さんが淹れたコーヒーを若葉さんが持ってきてくれる。

 しかし我が一片の悔いに童貞ありです。

 

 おかしい。成穂さんは俺にべったべたに惚れている筈。ギャルゲーを一つ二つはクリアした俺が言うのだから間違いない。

 

 ああそうか。もう一度言う、季節はクリスマス真っ盛り。

「いってらっしゃいませ」

 

 *

 

「そういう事か!」

「何が『そういう事』なのよ」

「ぅお、何故店長がここに!」

「あんた店に来てからずっとぶつぶつ独り言で上の空だったわよ」

 どうやら無意識のまま仕事先まで着いてしまったようだ。

 

「クリスマスですよ店長」

「そういえばそんなこと呟いていたわね」

 店長は青髭の似合うムキムキの好青年だ。

 無職だった常連である俺にこの仕事を与えてくれた恩人でもある。

 妙にくねくねしているとか、時折お尻を執拗に撫でまわしてくること以外は常識人で信頼できる人物なのだ。

 

 俺はそんな尊敬する店長に今朝思いついたことを相談してみることにした。

「成穂さんのことですよ」

「なるちゃん?」

 このカマ野郎なに成穂さんのことを愛称で呼んでんだころの野郎。俺が畏怖と崇拝でさん付けでしか呼べなくなったというのにこの野郎。

「で、なるちゃんがどうしたの?」

「あ、ああそれでですね――」

 この思いはその日の為に取って置くことにして、俺はある相談を持ち掛けるのでした。

 

 

「クリスマスは仕事よ」

「なんだとこのカマ野郎」

「〝ああっ?」

「すみません申し訳ございません店長様、つい悔しさが口をついて出てしまったのです。この口っこの口っ悪い子!」

「……はあ、まあいいわ。……やっぱり計画を早めようかしら」

 ふう、なんとかご機嫌取りに成功したようだ。

 しかし計画とは何だろう? そういえば最近男のイメージビデオを勧めてきたり、独り暮らしで怖いからと俺のトランクスを貸してくれと言ってきたり、変わった仕事をさせられる気がするな。まあそれは関係ないか。

 

「それで進展しない関係をクリスマスを使って距離を縮めようっていう話ね」

「はいそうなんです」


 俺が考えたのはこうだ。

 俺にべた惚れである成穂さんは内気な性格が災いして、俺に上手く甘えられない。

 だからこの一年に一度のイベント、聖なる夜ならぬ性なる夜を利用して、俺にべたべたらぶらぶしてもいい状況を作ってあげる。

 

「名付けて『性なる夜に急接近させちゃう作戦』です!」

「童貞の考えね」

 うぐふぅぅぅぅ――

 い、今の一撃は効いたぜ……店長。

「でも無理ね。その日はうちの繁盛期だもの」

「ああ、やっぱりそうなんですね」


 俺が働いているこの店は、いわゆる大人の店。ぶっちゃけるとアダルトショップである。

 俺の様な作戦を決行しようと画策する男達が巷に溢れ、取らぬ狸の皮算用とばかりに、浅ましく大人のおもちゃを買い漁るのだ。

 まあ紳士の皆様も二次元の恋人を探すためにに集うのだが。まあ何時ものことか。

 

「そういえば最近君はうちの商品買わなくなったわねえ……やっぱりなるちゃんが居るから?」

「なんです急に」

 店長は悪戯でも仕掛けるかのような顔でこちらを横目で見ている。

 

 それまでは肉体的接触しか試みてこなかった彼(?)が、こうして俺の私生活に興味を持つようになったのは成穂さんが来てからだ。

 雇っている立場上というのもあるだろうが、素直に彼女のことが心配なのだろう。

 そう理解できるぐらいには、店長とは付き合いが長いのだ。

 

「まあ……ね」

 事実ではある。四六時中美少女と寝食を共にしているのだ。一人で煩悩を解決するという人類が編み出した至高の御業を振るうこともままならない。最近は布団の上でのブリッジもご無沙汰である。

 

 止めには若葉さんの来訪である。

 彼女はなんと、なんとおぞましいことか、俺のコレクションを何時の間にか全て処分していたのだ。

「こんなものは必要ありません」

 そう言い放った彼女の顔は、侮蔑と歓喜に満ちていた。

 歓喜、歓喜である。これは若葉さんの負の感情が笑顔というもっとも原始的な攻撃行動として現れたに違いない。

 「なら君がそのお宝達の代わりになってくれるんだろう?」なんて言えない。言えなかったんだ。

 ヘタレッ! 俺のヘタレッ‼

 

「その様子だとなにも進展していないみたいねぇ」

「いやいやいやいやいや何言ってるんすか俺と成穂さんはそういう関係じゃねいしそもそも好みじゃねえし? まああいつが懇願するんならあれだし? 付き合ってやってもいいっていうかーまあ妹も預かることになったし姉妹丼とからな考えてやってもいいしみたいな?」

 嘘を吐きました。

 

「へぇ妹さん? 急な話ねえ」

 しかし店長の興味を引いたのは、俺の虚勢ではなく妹という単語だった。

「まあこっちも急だったからびっくりしましたし……」

 いかん、口を滑らせた。同居人が宇宙人だとバレでもしたら、俺のラブラブ同棲生活計画が頓挫してしまう。なんとか誤魔化さねば。

 

「まあ子供の世話なんて慣れたもんですから平気です平気です!」

「そうなの、小さな子なのね」

 くっそ何という会話誘導術! どんどん情報が洩れていく。

「ハハハ……いやまあ大したことないですよ、ちょっとした仕草にチンピクするぐらいです」

「……」

 っは、しまった‼

「いや俺はロリコンって訳じゃあないですよ! あいつ頭がいいから大人をからかうのが上手いっていうか、そう手玉に取られる感じで、でもそれが気持ちいいっていうか!」

「……貴方」

 っやべえ! 俺のM気質まで暴露されてしまうとは、何という尋問!

 どうする? 消すか? 消しちゃうか?

 

「ちゃんと学校に行かせているの?」

「へ?」

「二人とも若いんでしょ? ちゃんと学校行かせなきゃ駄目じゃない。で、どうなの?」

 どうなんでしょう?

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