第四話 俺氏、四千円を使う②
「で」
「お店の人には話し合いで解決しました」
流石成穂さん。俺が聞きたいことを先読みして答えてくれるなんて。
本当は違ったけど。別の異世界のことが聞きたいけど。
まああの店のことも気になるしね。
「話し合いでどうにかなるのか?」
「なりました」
本当だろうか? 店の商品にそっくりなネックレスを持っていた客なんて、窃盗犯扱いしかされない気がするが。
「同じ物を大量に提示したところ納得してくれました」
「話し合いじゃないじゃん!」
「『幾つか融通してくれ、そうすれば警察は呼ばない』と言われたので渡しました」
「話し合いじゃないじゃん!」
「その際に、あの店長と仲良くなりました。『このことは他言無用で』だそうです」
「思いっきり横領しようとしているじゃん‼」
いや横領とは違うか……いやこの場合どうなんだ? 成穂さんがネックレスを店長にあげただけ? 恐喝? 贈賄? 法はよく分からん。
「『今後ともご贔屓に』と」
「駄目じゃん、その店長成穂さんにたかるき満々じゃん」
あ、成穂さんがしょんぼりしてしまった。真顔だけど、ちょっと眉が下がった気がするっ。
「あ、いやまあアレだ。記憶操作を出来るだけしないように頑張ったんだよな。うん、ありがとう成穂さん!」
「それほどでもありません」
まさかの謙遜⁉ この子どんどん変な方向に馴染んでいってないか?
でもまあ、彼女は俺が記憶操作を気に病んでいることを考慮してくれたのだ。
これは素直にありがとうと言うべきことなんだ。
「成穂さん……ありが――」
「十個ほどあの店長に渡したところ名刺を貰いました」
「と……十個? あの値札の丸が数えられないくらい並んでいた、あのネックレスを十個?」
「はい」
その後、俺は切々と成穂さんにこの社会の通貨制度と、貴金属の価値の有り様について語ったのだった。
そして記憶操作を使わせて頂きました。
すごいしょんぼりしてしまいました。
*
後日、ネックレスを取り出した時の偽ホテルの様子について質問した時の話を今しておく。
偽ホテルの壁沿いに歩いていて、あれが異常な挙動をし始めたその時。宝石を見て、確かにアレは怯んだのだ。
「あの世界には宝石や金属がありませんから、アレルギーに似た拒否反応が起きたのでしょう」
と、素っ気ない反応が返ってきた。ええ……そんな説明?
アレルギーか。確かに近づくだけで駄目な人とか居るもんね。それをチ○コに近づけられたら、まあね。
俺としては、成穂さんが危機が迫った時の為に、あのネックレスを持たせてくれていた。で、助けてくれた。……みたいなのを期待していたんだけど、
「主は死にません」
だってさ。
その期待してくれる気持ちは有難いけれど、もうああいう異世界は勘弁してね。
俺はこの時、知らなかったのだ。
成穂さんが俺に全く期待などしていなかったことに。
俺は知らなかったのだ。
主は死なない。これがそのままの意味だったことに。
まあ本当にがっつり改造されてるとは思わないわな。
え、そうでもない? 普通の人は犬と会話しない? いや出来るよ、ペット飼ってる人は。たまに見るもん、バウリンガルなしで会話してる人。




