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安アパートと宇宙船  作者: 世も据え置き
第三章 宇宙船で宇宙旅行か?
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第四話  俺氏、絶望と歓喜と夜食と①

 そして、その時がやってきた。

 

 

「次は太陽系、太陽系です。お降りの際は焦らず、完全に止まってからシートベルトをお外しください」

 冗談なのかそうでないのか。

 何時ものように成穂のアナウンスが何処からともなく流れる。

「よーしチャッピー行くぞ」

「わん」

 ここは艦橋の艦長席。

 俺達は意気揚々とその瞬間を待ち続ける。

 もちろん服は着たぜ。地球に失礼だからな。

 

 目の前の窓の向こうは相変わらずの漆黒であったが、終着点である地球くらいは見えるだろうと、その時間までこうして一人と一匹で待っていたというわけだ。

 

 

 俺はこの時の衝撃を一生忘れない。

「見えッ――」

 衝撃が走った。実際にはピクリとも揺れてはいない。この場合の衝撃とは精神的なショックという意味だ。

 

 窓一杯に地球が映し出された、そう思った瞬間。

 地球がベロリとめくれた。

 いやめくれたと言うよりひしゃげた。と言った方が正しい。

 地表の青は既にどこかへ消し飛び、地殻は赤々と赤熱したまま歪み続けている。形は既に球体ではなく、まるで紐の様に伸びて、弧を描くようにとぐろを巻いた。

 

「……」

 声が出なかった。胸に抱えたチャッピーも、その温かさだけを返す。

 


「どういうことだ」

 どれぐらい放心していたのだろう。その声は他人の様にかすれて聞こえた。

「やはり失敗しました」

「どういうことだよ!」

 チャッピーをきつく抱きしめる。その身体が震えているのが分かった。事態に怯えているのか、俺自身に怯えているのか。それは分からない。

 もしかしたら自分が震えていたのかもしれない。

「この船の航法ではこの界面領域において、致命的な損壊を招く可能性がありました」

「そ、それはどう――」

「この航宙の機会に様々なデータを収集することが出来ました」

「え……」

「存在を最小にしましたが、それでも余波でこの世界は崩れる。それぐらい主の済む領域は小さいということです」

 存在を最小? 

「最寄りのボイドから此処までの間に、約1000の銀河が消滅しました」

 あ、あああ……。

「超々低速で侵入した天の川銀河。主の住む地球の存在する銀河ですが、ごく浅い宙域であったにも関わらず約16億の恒星が消滅しました」

 ななんで、み、見えなかっ――

「光速を超える速度では、主には外の風景を観察できないということです。今後、要検討です」


 あああ、あああ……俺は馬鹿だ。何も考えず宇宙船を貰って、はしゃいで……。

 顔が涙でぐしゃぐしゃだ。何も見えない。何も考えられない。

 

「わん」

 頬に温もりを感じる。慰めてくれるのか、チャッピー。

 もう一人と一匹になってしまったよ。お前のご主人様になんて謝れば……いや地球上の全ての生命になんだ。

 

 俺が全てを壊したのだ。

 

「これで地球一周クルーズは終了です。またのご利用をお待ちしております」


 そこで意識は途絶えた。

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