第三話 俺氏、犬とバカンス①
「現在この船は、最寄りのボイドより地球へと偏在中」
俺は成穂のアナウンスを聞き流しつつ宇宙食を食べていた。
チャッピーはバイキングから豪華なドッグフードを見つけて食べている。
あの後、艦橋から食堂へと移ったのだ。
シートベルトを付けたものの揺れもしないし窓の景色も一切変わらないので、成穂にこのままでいる理由を尋ねたのだ。
「ありません」
とまあ簡潔なお返事を頂いたのでこうして早い昼飯と相成ったわけだ。
「わん」
成穂によそって貰ったご飯をぺろりと平らげたチャッピーはお代わりをご所望だ。太るぞ。
「犬に食わせて大丈夫なのか?」
「問題ありません」
宇宙人が言うのならそうなのだろう。
手元にある宇宙食を恨めし気に眺める。
不味くはない。不味くはないが美味くもない。
宇宙旅行だと聞いてから、宇宙船で宇宙食を食べるという夢を叶えるため買い込んだ。
かくしてそれは叶った。
だがこの虚しさはなんだろう。
足元には豪華なビュッフェを浅ましく掻きこむ畜生。
それに比べ俺の食事は……。
昔はよかった。
宇宙食と言えばよくわからないチューブだったり、錠剤のような固形物だったり、見ているだけでわくわくしたものだ。
だが今は。
今日の俺の昼飯は、お湯で戻した宇宙おにぎりに宇宙カレー。まあ美味い。
デザートに宇宙プリンにマーブルチョコ。サクサクして意外とイケる。
そしてここには重力もあるからチューブから吸う必要もない。
宇宙要素はパッケージに描かれた宇宙ステーションぐらいだろう。
今の宇宙食は出来過ぎなのだ。
「言ってしまえばインスタントだよね。宇宙食って」
誰ともなく呟く。
傍らのリックに目をやる。それは内容物でこんもりと膨らんでいた。この中にはまだまだ宇宙食がたっぷりあるのだ。
多いだろう。だがこれだけで食費三か月分なのだ。そう考えると少ない、少なすぎる。
「わん」
ご満悦なペットがゲップをはき出した。
「……成穂さんや、その食事は問題ないのかね?」
「問題ありません」
簡潔! しかし違う、そうじゃないのだ。
「原材料は、その問題ないのかね? ああ、いや詳しくは話さなくていいんだ。ただそれは俺が知ると……どうにかなっちゃうようなモノだったりするのかな~って」
「知らなけれは問題ありません」
ああそっかー。
結局俺は食べた。超豪華な料理を。
成分が一緒なら腹に入ってしまえば同じ。エビの殻もゴキブリの殻も成分は一緒なのだ。
それに人様のペットにだけ、いかがわしい物を食べさせた。なんてことあってはならないからだ。本当だぞ。
美味しかった。本当に美味しかった。今の俺なら美食俱楽部に入会できるだろう。それぐらい美味しかった。
でも宇宙食を食べたせいでそんなに食べられませんでした。




