第二話 俺氏、宇宙でアトラクション②
「それで……これが窓でいいのか?」
俺が触れているのは、艦橋の半分を占める、周囲に取り付けられた黒い壁。
これが位置からしても宇宙を眺めるための窓だと思うのだが。
「……前の暖炉があった部屋を思い出すねえ」
あの時も窓の外は漆黒だった。もしかして同じ場所にあるのだろうか。
「ん……チャッピーおいで。怖いわけじゃないけどおいで」
あのうるさい犬が恋しくなる。いや恋しいわけではない。相沢さん一家に頼まれた大事なワンちゃんだから。怖いわけではないのだ。
「あっこの馬鹿犬」
妙に静かだと思ったら、あの野郎近くの制御盤みたいなものにマーキングしてやがった。
「わん」
「『わん』じゃねえよ壊れたらどうすんだよ!」
注意一生怪我一秒。どうかトラブルの前振りではありませんように。
「この度はご乗船ありがとうございます」
びっくりした。
「これより本船は地球に向かって発進いたします」
どこからか成穂声が聞こえる。まあ艦橋なんだからスピーカーくらいあるか。
「お客様は最寄りのシートにご着席ください」
最寄りのシートったって座れる場所はよくわからんスイッチまみれの台に付属しているのしか……いや待てよ。
「やっぱりあったぜ艦長席」
「わん」
出入口よりもさらに上、その中央にそれはあった。
そこには他の席などよりも豪華な正に艦長が座るに相応しいシートがあった。
「まさに俺が座るにふさわしい席だ、これチャッピーお前は乗るな」
「本船は揺れる可能性がございます。シートベルトをお締めください」
シートベルト? ……あった。
あれ? なんか急にアレな感じがしてきたぞ?
「そうだ犬はどうするんだよ……ええいしょうがない」
「わん」
俺はチャッピーを抱えてまとめてシートベルトで止めた。
「わん」
「しょうがないだろう俺だっていやだよ、こら暴れるな!」
「準備が出来ましたら係員にお知らせください」
係員って誰だよ。
「おい成穂、聞こえてるんだろ」
「なんでしょうか」
「ここは本当に宇宙なのか?」
「……」
おいおい。
「はい」
本当なのだろうか。もしかして俺は宇宙人に一杯食わされているだけなのではないだろうか?
「だったらなんで窓から星がなんにも見えないんだよ」
「見えます」
「どこにだよ」
「此処です」
すると目の前の透明なモニターに丸い円が映し出された。
丁度その向こうが漆黒が映る窓になっている。この円の中に星が見えると言いたいのだろう。だがしかし、
「なんにも見えないぞー」
「これが最もこの船から近い恒星です」
おいおい俺近眼なんだぞ、っと思ったけれど治ったんだったか。
「ちなみにどのくらいの距離なんだ?」
「2億1千200光年先です」
「見えるわけねえ」
ギャグなのか? 宇宙人なら見えるのか? 本当に見えるのか?
「ハンドバッグや鞄など、大きい荷物は足元に置いてください。安全のため、カメラや携帯のご使用はお止めください」
ん?
「それでは宇宙の旅をお楽しみください」
あやっぱこれアトラクションだわ。




