第三話 俺氏、帰宅時に買い物を③
「俺達そう見られたかな」
見られた筈だ。間違いない。
「見られました」
簡潔!
しかし今回の簡潔は一味違う。今回は否定ではないのだ。
「そうだよね見られてたよね俺達! その、あれにさっ」
「店内にいた約98.567%がそう見ていました」
「やっぱり」
ああなんて罪づくりなんだろう。
きっと「お似合いのカップルね」だとか「初々しい新婚さんね」とか「あんな仲睦まじいなんて羨ましい」だとかで奥様方の今夜の夕食を考える時間を奪ってしまったのだ。ああ申し訳ないことをしてしまった。
「主は危険な人物だと警戒されて、監視されていました」
「なぜだ」
簡潔。
「私が試作的に発動した、いわゆるステルス効果の結果です」
ああなるほど。
俺は独りでぶつくさ喋る頭の可哀想な人だと思われたと。
「なぜ……何故あの場面でそんな酷なことを……」
「先程主が処理限界により、オーバーフローを起こした事態の原因が私であった為、その解決策を模索していました」
処理限界? オーバーフロー? 一体何時の何の話だ? あと急に饒舌になられるとびっくりする。
「主が労働を行っていた時の処理能力の低下した事態のことです」
ああアダルトグッズ買い漁り事件ね。
大変ではあったけれど仕事なのだからと割り切っていたのだが。成穂は気にしていたのか。
でもあのタイミングでは止めて欲しかった。
「しかし失敗でした」
「主が可愛そうだもんね」
「存在を希薄化させるという試みには成功しました。しかし自転・公転周期、銀河周期、宇宙周期、次元周期、界面周期を予測し、現在起点を維持し続ける必要があり、非常に無駄の多い結果となりました」
「う~んぅ?」
「現時点で計画は凍結されました」
よく分からない。存在が希薄になるとなんでそんなことになるんだ。
「存在の希薄化とは意思の固着化でもあります」
地縛霊とかの話だろうか。
「つまり起点となる物質に合わせて意思が移動し続けなければそれは生命ではなくその為に――」
すとーっぷ。
「いやそこまで難しいのはいらないのですよ。少し不思議でいいからね」
「了解しました」
宇宙人が理屈を捏ねだしたらきりがない。そこは不思議でいいのだ不思議で。
「不思議な理由で計画は頓挫しました」
「よろしい成穂隊員。それでいいのだよそれで」
「ちなみに、ちなみにだよ。あの店内に居た人達のほとんどが俺を、そのアレに見られてたっておかしくないか? 寂れた地元のスーパーだよ? 小数点まで出すほど人はいないんじゃあないかなあ?」
「内訳、脊椎動物門が32.503%。節足動物門が66.064%です」
……ああーゴキちゃん達かあ……俺昆虫にも危険人物扱いされていたのかあ。
駆除業者にでもなろうかな。




