あの人が帰って来た!
突然だが、僕の一家は魔法一家だ。
代々魔法使いのいわば純粋な魔法使いの家柄だ。
今じゃ人間界に出て商いをする魔法使いも多いため、魔法使いと人間のハーフなんてのもいる。
僕たち魔法使いは、「自然」の力と「人口」の力のどちらかの流れを詠んで魔法を使うらしく、
魔法使いとハーフとの違いとしては、その「詠み」が得意か不得意からしい。
僕自体もまだ魔法を扱ったことがない為、よくわからない。
僕は生まれも育ちも魔法界な為、ハーフには出会ったことはない。
学校に入学したらハーフがちょいちょい通っているとお姉ちゃんから聞いている為、そう行った出会いも楽しみの一つだ。
そんな魔法学校への入学はいよいよ1ヶ月を切った。
ミーンミーンとなく蝉が鳴いているこの季節。パリでも蝉は鳴くのだろうか。
最近の僕の興味は全て海の向こうだ。
「結人。いるか?」
今日は土曜日。
僕は今、お母さんに言われ自分の部屋の中で洋服の整理をしていたところで、部屋の外からいつもは聞かない声が聞こえて来た。
「お父さん!!」
僕は嬉しくなって部屋の扉を勢いよく開けた。
「おぉ、結人!久々だなぁ!少し背が伸びたか??」
「お父さん、誕生日ぶりだから、半年くらいだよ!背は少し伸びたかもね」
声の主は僕の大好きなお父さん。
お父さんのお仕事は、魔法使いを代表する魔法使いならではのお仕事「魔法警察」だ。
元は魔法界を取り仕切っている魔法政府の警察部門、日本管轄の警察官だったそうなのだが、
僕が4歳の頃に偉くなったらしく、日本の幅を超えて今ではアジアを統括する偉い人になって
基本的には家を留守にしている。
「それにしてもお父さん、いつ帰って来たの?びっくりだよ!
先月送ってくれた手紙には、今はインドにいるって行ってたけど・・・」
「まあまあ、そうだね、つい昨日まではインドにいたよ。
でも結人、君の為に休暇を取って帰って来たんだ。」
お父さんは入ろうと行って僕の部屋へ入って来て、ベッドへと腰掛けた。
僕のために帰って来たということは、魔法学校への入学の件であろう。
お父さんの隣に座って改めて聞いてみる。
「僕のためって?学校に関係があるの?」
そう問えば、お父さんは少し嬉しそうな顔をした。
「そうだね。じゃあ聞いてみようかな。
結人は、今のままで学校に行けると思う?」
「今のままっていうと?」
「今の、この部屋にあるものだけを持って、魔法学校に行くと、どうなると思う?」
この部屋にあるものだけ・・・・
学校に持って行くものは洋服があればいいと思っているが。
「どういうこと?洋服があるよ。それじゃダメなの?」
僕の回答にお父さんは豪快に笑う。
「ハハハハハ、洋服ね。そうだ。それも大切だ。
だけど、結人もお姉ちゃんが帰って来た時の格好見たことがあるだろう?」
「お姉ちゃん・・・・あっ!!!」
「何か思いついたかな?」
「そうだ!お姉ちゃんはいつも不思議な洋服を着ていた!」
「そうだ!それは学校の制服と行って、学校にいる間に身に纏う洋服だ。
そのほかに・・・お母さんやお姉ちゃん、例えばお父さんがよく使っているものは・・・」
お母さんたちがよく使っているもの。
そう言われて僕はピンと来た。
僕が今まで、一番羨ましく思っていたもの。
不思議が詰まっているもの。
お姉ちゃんがそれを買った時も僕は着いて行った。
「杖だ!!」
興奮気味にそういうと、お父さんは僕の頭をワシワシと力強く撫でた。
「そうだ!結人は杖をずっと羨ましがっていただろう。
ようやく自分の杖を持てる歳になった。
そしてこの乙宮家を継ぐ結人には、より良いものを使って欲しいと思っている。」
「お姉ちゃんのよりも?」
「お姉ちゃんのも立派だぞ!基本的には一生使う相棒になる。
さあ、出かける準備をしたら下へ降りておいで。杖や制服、学校で必要なものを揃えに行くぞ。」
お父さんは早口にそういうと部屋を笑顔で出て行った。
僕はお父さんの出て行った後をしばらく眺めていたが、
次第に実感が湧いて来た。
「〜〜〜〜〜〜僕の杖〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
嬉しくて小さい部屋をぐるぐる駆け回った。




