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ホワイトウィッチは僕に微笑む  作者: 三角州
月の光に蠢く影
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7歳の誕生日


1975年 1月21日

―――日本 東京


今日は僕の7歳の誕生日だ。


正確には今日の07:07に産まれたらしい。

なんて覚えやすいんだってぐらい数字の7だらけだ。

ラッキーセブンだ!最高だ!



「結人くん、朝ですよ!!起きていますか?!」


僕の住む魔法界では生まれた日の生まれた時間からお祝いを始めるのが習わしらしく、

誕生日にもかかわらず朝早くお母さんの声が

木を組み立ててできたこの家に響き渡り僕はお母さんに起こされる。

僕は朝が苦手だ。普段ならばお母さんは階段の下から僕を呼んだ10分後に階段を登って2階へきて声をかけ、その10分後に僕の部屋の前まできて僕を呼び、その10分後についに僕の部屋のドアを蹴破るんだ。

僕はこれを勝手に「10分侵略」と呼んでいる。

今日もそれが行われるかと思いきや、なんと僕の目はすっきりと開いている。


なぜかといえば理由は明白だ。

僕は今日、7歳になる。


僕達「魔法使い(ウィッチ)」にとっては一大イベントなのだ。


魔法使い達は、7歳になると魔法使い特有の不思議な力である「魔法(マジカル)」を学ぶ為に親元を離れて学校へ入学することが定められている。

住まいが魔法界であろうと人間界であろうと関係なく、魔法の力を操れる子供には、7歳の誕生日になると入学をするよう魔法政府からお達しが下る。


それと同時に、親元を離れ勉学に励む様を称し、7歳は「半成人」として認められ、魔法界でのみ魔法を自由に操る許可を貰える。

逆に言うと、知能の低さと体への負荷を考えて今までは魔法を使ってはいけなかったのだ。

更に言うと、18歳の成人になるまでは、人間界での魔法の使用は法令で禁止されているらしい。


よって僕はわくわくしていた。

魔法学校の話は現在魔法学校3年生のお姉ちゃんから手紙をもらったり帰省してきた際に話を聞いたりしてどんなに楽しいところか聞いていたし、

何より魔法という僕達の種族しか使えない特別な力を自由に使うことができるようになるからだ。


そのわくわくのおかげで、どうやら今日の僕の眠りは浅く、お母さんに起こされる前に目が開いていたのだ。


その他にも、家族や友人からの誕生日プレゼントだったり、誕生日ケーキのことだったり、嬉しいことが山積みだからっていうのも否めないけどね。

何より7歳の誕生日のお祝いはとても豪華だというのをお姉ちゃんの時に知ったから余計かもしれない。


早く目が空いたとはいえ何となくだるい体を起こしてまたお母さんに呼ばれないように僕はパジャマのまま部屋を出た。


部屋を出ただけでも心が踊った。

何かを焼いているような香ばしい香りや甘い香りが既に階段を登ってきていたからだ。

僕は釣られるようにして恐る恐る階段をおりる。


一段一段、噛み締めるように。降りる。


何を噛み締めているのかは分からない。

でもなぜか、ゆっくりと降りたい、そんな気分だった。


階段を降り切った先にはリビングが広がっている。

一段降りるたびに明るいリビングからの光で進む先が明るくなっていく。

まるでこれからの僕のあゆむ道を照らしてくれる光みたいで、吸い込まれるように感じる。


最後の一段に足をかけるとそこにはテーブルの中心にある真っ白なケーキを囲むように、チキンやパン、アクアパッツァのような魚料理など、見たことも無いような豪華な料理が並んでいるのが目に入った。


予想を遥かに超えた豪華さに、僕は最後の一段に足をかけたまま固まった。


フンフンと鼻歌を歌って準備をしていたお母さんが僕に気づき、声をかけた。


「あら、結人くん!おはよう。もう起きたのね?!

まあまあ、早起きさんだこと!流石は大人の仲間入りをした男の子ね……ところで結人くん、いつまでそうしているのかしら?

早くお席に座りなさいね。」


お母さんはなぜだか感慨深そうに言い、僕は一番右の自分の席に座る。


「結人くん、飲み物、何を飲む?」

「そうだなぁ……カフェオレ、にしようかな 」


「カフェ…カフェオレ……?

コーンポタージュとかじゃなく…?」


お母さんは、びっくりしたみたいだった。

いつもはコーンポタージュやココア、オニオンスープといった苦くないものを飲んでいるからだ。


「そう。なんとなく、カフェオレだよ!」


僕はどことなく恥ずかしくてお母さんから目を逸らした。

理由なんてない。そうだ。理由なんてないんだ。

背伸びなんて、してないんだ。


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