表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/37

第17章

「鈴様、お気づきになりましたか」


目を覚ますと慌てた様子のソニアが視界に映った。


「すぐに、お医者様を呼んでまいります」


カリナは急いで部屋を出て行った。


なんだか、すごく体がだるい。


目が覚めたばかりでいまいち思考もハッキリしない。


なんだか長い夢を見ていた気分だ。


夢の中で、誰かがやさしく髪を撫でてキスしてくれたような……。


そんな夢を見るなんて、あたしって欲求不満なのかな。


痛い!


体を起こそうとすると左肩に痛みが走り、かすかな記憶が甦った。


そっか、あたし矢に当たって……。


それでもどうにか体を起こすと、ちょうどカリナが医者を連れて戻ってきた。


「鈴様! まだ起きてはいけません」


「まだ少し痛むけど、大丈夫よ」


カリナは驚いて駆け寄り、あたしの背中の後ろに枕を立て背もたれを作ってくれ、医者は傷の検診を始めた。


「すばらしい回復力ですな」


なぜか妙に親切丁寧な医者は、もうしばらくは安静にするようにと言って部屋を出て行った。


「4日も意識が戻らないので、本当に心配いたしました」


えっ、4日も!?


カリナの言葉にあたしは驚いた。


「もうこのまま意識が戻らないのかと……」


「ごめんね、心配かけて」


目に涙を溜めているカリナを慰めながら、ふと思い出した。


「そういえば、アシル達は大丈夫だったの?」


「はい、皆様ご無事です。ルカ様以外はお城に戻られました」


そう、無事なんだ。


よかった……。


それにしても、もう城に戻ったてずいぶん冷たいな。


そういえば矢に刺さった時、アシルに怒鳴られたような……。


あの状況で怒られるとはね。


べつに恩を売るつもりはないけど、もうちょっと優しくていいのになぁ。


「アシル様もとても心配しておりました」


あたしは一瞬耳を疑った。


「アシルが!?」


「はい、毎日お見舞いにいらしてました。それに……」


カリナは急に顔を赤くし、言葉を濁らせた。


「それに、何?」


「その……、煎じ薬をご自分で飲めない鈴様に、アシル様自ら……」


なかなか話が進まず、要領を得ない。


「自ら……?」


「わたくしの口からは言えません!」


言えないって……、そこまで言っといて気になるじゃん!


そこへ、ルカが現れた。


「鈴様、お体の方はどうですか?」


「えっ、うん、大丈夫。心配かけたみたいで」


「そうですか、良かったです。アシル様もとても心配しておりましたから」


またその話しだ。


あのアシルの事を考えると、とてもじゃないけど心配しているようには思えない。


「そんなに心配してたの?」


「それはもう、毎日の様に鈴様の様子を見にきておりましたから。しかもアシル様自ら鈴様に煎じ薬を飲ませるとは、わたくしは驚きました」


「ね、その……飲ませるってどうやって? あたしは、意識がなかったわけでしょ?」


「それはもちろん、口移しで」


く、口移しぃ!


もしかして、あたしが見た夢は夢じゃなく……。


「あれほど献身的なアシル様を見たのは初めてです」


うれしそうに話すルカとは対照的に目の前が真っ暗になった。


きっと、立っていたらその場に崩れ落ちていたような気がする。


ファーストキスだけでもショックだったのに。


あぁ、立ち直れない……。


「アシル様が薬を飲ませなければ、鈴様もかなり危ない状況でした」


「……あたし、そんなに危ない状況だったの?」


「かなり高熱がでておりましたから」


そうだったんだ……。


いままでのアシルの横柄な態度を考えるとなんだか信じられない事だけど、それでも非常事態だったんたから感謝……、しなきゃ……ね。


そう思いつつもなんだか複雑な気分だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ