表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/37

第14章

「無理! 絶対無理!」


「わたくしはこれで失礼致します」


「カリナ、開けて! 開けてよ!」


カリナの言葉に焦ったあたしは、何度も扉を叩いた。


「やめておけ、無駄だ」


あたしが振り向くと、いつのまにか後ろにアシルが立っていた。


無駄って……。


「あんたこの国王様なんでしょ。開けるように言ってよ」


「どうせ、長老達の仕業だろ。それなら、何を言っても無駄だ」


そんな……。


あたしは目の前が真っ暗になるのを感じた。


ここから出れないってことは、一晩アシルと一緒?


あぁ、最悪だぁ。


「簡単に騙されやがって」


落ち込むあたしに、アシルは無情な言葉を言った。


「そうゆう自分はどうなのよ!」


すると、アシルはあたしの両サイドを塞ぐようにして扉に手を叩き付け、あたしは身動きができない状態に追いつめられた。


「何が不満かは知らないが、王の寝室へ来る事がどれだけ名誉な事か、お前にはわからんのか」


睨むようにあたしを見ているが、口調はからかっているようにも聞こえる。


「あたしには何が名誉な事なのかさっぱり理解できないわね。だいたい、長老だかなんだか知らないけど、自分の意見の通らない王様なんて、情けない!」


その瞬間、アシルの顔が怒りで一杯になった。


「ここへ来る事がどれだけ名誉な事か、わからないなら体で教えてやろう」


アシルはあたしの顎に右手を添え、強引に上を向けると乱暴に唇を重ねた。


あたしは何が起こったのかわからず、呆然としてしまった。


えっ、なに?


これって、もしかして……、キス?


そうと気づくとあたしは精一杯の力を振り絞り、アシルの胸を両手で押しやった。


冗談じゃない!


あたしのファーストキスだったのよ!


無理矢理キスをされた事が悔しいくて情けなくて、目に涙が溢れてきた。


アシルは勢い良くあたしから離れたが、あたしの目からは涙が溢れ出て来ているのを見て驚いた顔をしている。


「あたしを、あんたの取り巻き達と一緒にしないで!」


ファーストキスは大好きな人と、ロマンチックな場所でって、憧れてたのに……。


悔しさで涙が止まらない。


「もう、イヤ! 早くあたしを元の世界に返して! あたしは伝説女性なんかじゃない。普通の一般市民で、ただの女子大生なの。なのに、なのに……」


あたしは扉に背中を付けたまま、ズルズルッとその場に座り込んだ。


「お前は……、自ら望んで城に来たのではないのか?」


泣きわめくあたしに、戸惑ったような声で確認するようにアシルが声をかけた。


「あんたは今まで何を聞いていたのよ。言ったでしょ、勝手にあたしを呼んでおいてって」


しばらくの沈黙の後、アシルが仕方なさそうな声で口を開いた。


「ならば、俺から帰れる様話をしてやる」


アシルの意外な言葉にビタッと涙が止まった。


「……ホントに?」


「あぁ、だから、泣くな」


どうゆう心境の変化だろうか、いままでの態度からは想像できない。


無理矢理キスをしたお詫びのつもりだろうか。


「あとは、鍵が開くまで好きにしていろ」


アシルはそれだけ言うと、スタスタと寝室へと戻って行った。


その事があたしの気持ちをホッとさせたとたん、一気に疲れが襲ってきた。


アシルは好きにしていいって言っていたけど……。


よく考えたらベッドは寝室にひとつだけじゃ……。


そう思ったらさっきのキスが生々しく記憶に甦って急に鼓動が早くなった。


あたしったら、なに思い出してんだろ。


好きでもない人とのキスなんて、キスじゃないわ。


そうよ、落ち着けあたし。


事故にでもあったと思って忘れよう。


あたしは寝床を確保すべくそっと寝室を覗くと、思ったとおりベッドはひとつだけだ。


しかも、そこにはアシルがすでに横になっている。


この状況で一体どう好きにしろって言うのよ。


だいたい、ベッドがひとつしかないなら女性に譲るのが普通なんじゃないの。


あたしはツカツカとベッドに近寄ると、上布団を勢い良くはぎ取った。


突然上布団をはぎ取られたことにで、アシルは驚いたようにあたしを見つめている。


「ちょっと、ベッドがひとつしかないなら、女性に譲るのが普通でしょ。なにのんびり寝てんのよ!」


アシルは迷惑そうにあたしを睨んだ。


「俺はこの国の王だぞ。その王に向かってベッドを譲れだと! とても正気で言っているとは思えん。バカか、お前は」


「バカとはなによ! レディーファーストって言葉知らないの」


「そんな言葉は知らん」


アシルははぎ取られた布団を被り直し、再び横になった。


なに、その態度は!


「じゃ、あたしはどこで寝ろっていうのよ」


こちらを見る事なくアシルが指差した方向を見ると、それはソファだった。


「ソファで寝ろっていうの!」


あたしの抗議の言葉は無視され、あたしより体格のいいアシルをベッドから退かせる事も出来ず、しぶしぶソファで寝ることとなってしまった。


女性をこんな所へ寝かせて、自分はのうのうとベッドに寝てるなんて、信じらんない。


一体どうゆう神経してんのよ。


アシルのバカ!





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ