まさか?あの企業がグルメ界に進出!
「やっぱり、今はグルメの時代だな~」
「どうしたんだ。
今ごろ。
もうずっと前からじゃないか」
「お前、知らないだろう」
「何が?」
「とうとう、あの企業も参加した」
「あの企業?
どうせ小さい企業だろう」
「バカ言うな。
世界的な企業だ」
「トヨタか?」
「違う。
でも、トヨタに匹敵する、
いや、それ以上かもしれない」
「じゃあ、アップルか?
リンゴだし~」
ふっと鼻息を漏らして言った。
ゆっくり頷く。
「そんなところだ。
入ってる・・・」
「えッ。
まさか・・・
入ってる、インテル・・・」
「そのまさかだ」
「インテルがグルメ界に進出した?
『ぐるなび』みたいなモノ?」
「そんなモノじゃない」
「レストラン?」
「いや、食材だ」
「食材?
農場でも自動化するのか。
コンピュータの技術を使って」
首を振る。
「でも、グルメとは言えないな。
なにか養殖でもするのか。
ふぐとか」
「ふぐじゃない。
ロブスターだ」
「ロブスター?
確かにそれならグルメだな」
「でもただのロブスターじゃない」
「ただのロブスターじゃない?
とてつもなく大きいのか?」
「そうじゃない。
ロブスターの脳みそだ」
「確かにエビみそは旨いよな。
濃厚で、コクがあって」
「う~ん、
じゃあ、
俺たちもやらないか」
「おう、インテルがエビみそなら、
俺たちはカニみそだ」
「そうだな。
みそと言えば、カニの方がメジャーだ」
二人はビールジョッキを降ろし、お互い力強く手を握った。
10年後、彼らが製造したカニみそは世界を席巻した。
生臭さがまったくない。
それに、甲殻類アレルギーの人も食べられた。
彼らはグルメでインテルに勝利したのだった・・・
・・・そもそもインテルはロブスターの養殖もしていなかった。
でも、ロブスターの脳みそを作った、とは完全な誤りではなかった。
それは、ロブスターの脳相当なプロセッサ。
そのプロセッサは人間の脳構造をモデルにし、
13万のニューロンと1億3000万のシナプスを搭載していた。
それがロブスターの脳レベルという。
これは、いわゆるディープラーニングのコンピュータだ。
数年、十数年後には800億のニューロンを持つ人間を超え、
人工知能が人間を凌駕していく・・・
いや、そうでもなかった。
人工知能には実現できないこともあった。
それは、彼らがやったこと。
そうそれは、勘違い。
この勘違いにより、いくつもの人間の歴史が作られたのだった。