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迷子状態で書き進めていくつもりですので、暖かく見守っていただければと思います
刺激なんて無い繰り返しの毎日。退屈だけれど、この停滞した循環がどこか尊いものだということを、漠然と感じていた。
昔から変な直感だけはあるんだ。だから、尊いものを当たり前として享受できず、尊さを知っていたのなら。それは元から無かったものを得たか、もしくは… 元々持っていたものを失ったか。
なによりも得難い退屈は、今や彼方。
私は今、夢見がちな若い頃に焦がれた異世界で息をしている。退屈では無く重圧に身を委ね、出来ることなど何一つ無く。分かっていることを敢えて口にしたくなる。
私は物語の登場人物ではないのだ、と。
死ぬことも殺されることも許されない飼い殺しの生活。誰が望んだわけでもないのに。
逃げるのも抗うのも、もう諦めた。
希望も絶望もなく、ただただ暗い道をあてもなく歩いている。
これは、物語でありきたりな異世界トリップ。文明レベルは元の世界とは遅れているが、ほとんど同じ。だが、この世界には“能力者”が存在した。
能力者は希少である。当然ながら、その能力も各々個性があり、殺傷力の高い能力者は戦争で利用されることもあったという。それを良しとしない、能力者中心の組織が設営され、ギルドと呼称された。
ギルドは人々と争わず、不干渉を貫く信条を掲げた。だが、ギルドの意向に納得しない者が現れ、次第に反勢力になるまでに彼らは膨張した。反勢力は“クラン”という名の組織を立ち上げ、今まで能力者たちを苦しめてきた人間たちに復讐すべく残虐な行為を働く。
ギルドとクランは対立し、長年の争いを続ける。
そんな世界、そんな時代。憐れな女が堕ちてきた。異世界から来た人間だと言う。とある能力者によって、彼女は能力者の素質があると判明した。クランに対抗する力は少しでも欲しいギルドは、彼女を覚醒させる為に手を尽くした。だが、ついぞ彼女は能力に目覚めることなく。クランに渡すわけにはいかず、彼女は結果的に飼い殺しとなった。
そんな彼女に転機が訪れる。クランの一部隊を足止めする任務を与えられた。つまり、捨て駒になれという司令である。彼女は心中で呟いた。あぁ、やっとか、と。煩わしい侮辱も、鬱陶しい憐憫も、勝手に期待されることも失望されることもない。安堵の笑みを浮かべる彼女に、ギルドの長は苛立ちの表情を浮かべて立ち去った。
これより彼女には残酷な現実が待ち受ける。
___これは、馬鹿馬鹿しくて切ない、とある男女の物語である。