夏はパラレルワールド
どうしても笑顔なあなたへついに降伏した高温注意報な真昼。
柔らかそうな二の腕に刃物のようなこの指を這わせることを恐れた。
寒くて、汗が止まらない、包まれて、音が消えた。
窓から夏の空が僕らを監視している。
咎めたってもうあなたとつながっている。
最初から我慢していた何もかもを吐き出せばあなたが痛そうに泣いた。
溢れる涙を飲み干して、僕は微笑む、大丈夫だと。
これから僕はあなたと生きるから。
そんな未来がはっきりと見えるんだ。
あなただけ
あなただけを
あなただけしか……
いらない、あなただけでいい。
あなたの中にずっと居たいんだ。
あなたと幸せになりたい。
二人で幸せになるんだ。
窓から夏の空が僕らを監視している。
咎めたってもうあなたとつながってしまった。
どこへでも行けそうなパラレルワールド。
夏の日差しにあなたの漆黒の瞳が揺らめいて、僕は途方に暮れるから。
今は死ねない、あなたをほんとうの笑顔にできるまで、なんて嘯くパラレルワールド。