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バレてしまったら完全犯罪ではないんですよ



「く、ククク! くははハハ! なんて、なんての! 」


予定通りなのじゃろう。


儂は天井が突き抜けハリボテの夜空が照らす世界で、一人笑いを堪える事が出来なかった。いいや、堪える必要があるだろうか。儂以外の誰がこの笑いを止められる物じゃろうか!


この世界イヴァリスは世界を牛耳ろうと目論む魔族を打倒せんと、人族たちは国と国と手を取り合い連合国を取っているように見えるが違う。


お互いがお互いを牽制し合い化かしあう為に都合の良い共通の敵として魔族が仕立て上げられているだけじゃ。


そしてそうなるよう世界を煽り国が瓦解せんと目論んでいるのが五帝と呼ばれる者達。


その五帝の一人である魔帝スクラダを悠斗は殺してくれた。きっと衝撃が走るじゃろうて。この世界最高峰のレベルを持つ一人が誰にやられたのか分からぬという事は。


しかも残った帝王共はきっとお互いがお互いにスクラダの支配していた場所を奪い合うじゃろう。それは戦となり渦中となり混乱へと陥れてくれるに違いないのじゃ。


「くひ、くひひひひひひはははッ」


儂は神様であるが世界そのもの直接に干渉する事は出来ない。魔法ですら転移者相手にしか使えない。せいぜいが異世界から呼び寄せて来るくらいじゃ。けれどその力は元の世界にとってオーバーパワーになる。急激な発展を齎し世界を百八十度変えてくれる。


それがこうも早く結果を出してくれるとは。


「いや、違うの。悠斗ならば必ず五帝をいつかは殺すじゃろうと信じておった」


"あの"悠斗がああいう邪魔な奴と干渉しない訳が無い。そも、彼の性癖や性格上関わらない訳が無い。得てしてそういった困難を乗り越えた後のヒロインにのみ興味があるのじゃから。



「……ようやくじゃ、ようやく。この世界の均衡が崩れるのじゃ。馬鹿馬鹿しい神共も、阿保らしい人間共も、救い難い魔族共も、みーんなみんな滅ぼしてやるのじゃ! 」



ただ滅ぼすだけではだめなのだ。魔王や裏の幹部や邪神や人ではいけない。ありきたりだ。


面白おかしく愉快痛快に滅ぼして欲しいのだ。


そのためにはもっと悠斗に暴れて貰う必要がある。彼はこの"計画"のメインピースといっても過言ではないのじゃから。



そう、メインピースなのじゃ。


「………」


少しだけ胸が痛む。とうに忘れていたと思った鈍い悲しみが沸き出て来る。



彼は、儂を知らない。儂は彼を知っておるが……。




『そうなのか』


そうなのじゃ。


…………。



「………………………………………へ」


何で、悠斗が返事をしたのじゃ? ここに儂しかいないハズ。いくら悠斗といえど儂の領域に来れる訳がない。ここは神聖とか場所とかそういうモノではない。次元がそもそも違う異空間じゃ。


『そりゃ聞こえてるからな』


じゃから何で儂の返事が聞こえておるのじゃぁあッ???!! 


そこで儂はようやく思い至る。


「って、ああっ! 思念を切るのを忘れてたのじゃ! ………ゆ、悠斗。どこから聞いてたのじゃ!? 」


『お前が高笑いをした所からだな』


高笑いしたのは最初ではないか!


「………あんぎゃあああああああああああああああああああああッ!! 放送事故じゃ! 放送事故! ていく2を求めるのじゃ! 普段こんな魔法使わないからオンオフの癖なんて付いてなかったのじゃあ! 」


なんてことじゃ。なんて事じゃ! 物語の最初にしてもう最終話のオチをばらされてしまったのじゃ!! こんなの解答率100パーになってしまうのじゃああああッ!


この場合儂はきっと末代までネタにされるじゃろう。かつてここまでアホだったラスボスはおっただろうかと。


けれど悠斗はそこいらにあるニュースでも見るかのような色の無い瞳で呟く。


『いや、興味ないから良い』


「ふぇっ!? 」


興味ないじゃと!?


「何で儂が世界を滅ぼそうと考えているとか興味無いのかの!?  仲間に裏切られたのかとか人族に殺されかけたのか夫を殺されたとか。それに、じゃ。何故神様になんてなってしまったのかとか興味ないのか!? 」


いくら悠斗とはいえきっと無視なんてできないはずじゃ。物語の核心となる部分じゃぞ。


『残念だが、さほど興味が沸かない』


「きょ、興味がない……………」


思わず涙が出て来る。儂、これでも一生懸命やっとるのに。ドラマチックにやろうと頑張っておるのに。



「い、いや少し。すこーしぐらいあるじゃろ? なんかちょこーっとだけでも」


『あるか無いかでは有るが、正直今はこっちの方が優先だ』


そういって悠斗は倒れている魔王の女の子に手を差し伸べた。少女は先程までの行為とは真反対な紳士的態度に、ときめいてそうな熱い視線を送っておる。



ぬ、ぬぬぬ、ぬぅうううううっ。ラスボス、なのにぃ、ラスボス。なのじゃのににいぃいい。


「ひど、ひどい゛のじゃあ゛あ゛あ゛あ゛゛ッ。儂じゃってラスボスとかみすてりあすっぽくなろうと頑張っておるのに゛ぃ゛い゛」


『うわっ、馬鹿お前せめてその魔法解いてからにしろっ。鼻水啜る音耳元で聞かされてすげえ複雑な気持ちになるんだよ! 』


「儂だって複雑な気持ちじゃ゛あ゛あ゛あ゛」





明日また上げます。色々とひと段落が着いたので。

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