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神様ですか? 写真いいっすか?

加筆訂正しました。


俺は異世界の住人だった。




もともとは日本の辺境の町に住んでいた引き籠りのニート。それが何の拍子にか最近アニメで取り上げられるような異世界転移をしてしまった。



召喚されたザハル王国に、この世界に住まう魔王を倒してほしいと言われ。



いつの間にか勇者に奉られて、あっという間に魔王を倒して、気が付けば世界最強になっていた。



イージーゲーム? テンプレすぎる? 人生楽が出来るなら楽な方が良いに決まってるだろ! 兎にも角にも俺はその世界での最強の魔王を倒した最強の勇者になった。



だけど魔王を倒して大円団という訳ではなかった。召喚魔法には呼び出す能力はあっても還す能力は無かったらしい。俺はその世界に住むことになった。


俺としては一般人に戻る気などサラサラなかったし、二つ返事で了承したんだが。ザハル王国にとっては問題があったようだ。



なにせ俺は魔王を倒した勇者だ。世界を恐怖に怯えさせた魔王以上の力を持っている事になる。それがいつ敵になるか分かったもんではないからだろう。



そんな俺の力を恐れた王国に半ば外堀を固められるかのように、見目麗しい王国の姫様と婚約を申し込まれた。



姫様も満更でもなかったらしく、それどころか「女狐達の牽制になります」と意気込んでいた。俺としてもザハル王国の次期王という座につけるのだから願ったり叶ったりだった。目に見えないヤンデレデータを扱えるかどうかは分からなかったが。



「ふはははは! この勢いのまま女の子たちを連れ込んであんなことやこんなことをしまくってやる」


流石に次期国王ともなると野宿は許されず、監視と守護を兼ねた王宮の一室を与えられていた俺は息巻いていた。


ここまでは覚えているのだ。夢と希望に満ち溢れた明日をワクワクしながら就寝した。そこから記憶はブラックアウトしておりまったく覚えがない。



―――目が覚めたら。……いや、目が冴えたら変な場所にいた。


真っ黒な場所。いや、微妙に天井と思えるほど高い所に星にしてはずいぶんくすんだ、張りぼてにしか思えない宇宙が広がっていた。頂点部分には年季の入った電球が揺らめいていたし、昭和の漫画辺りのアパートにでも出てきそうだ。


そんな世界の中心と思える所にぽつぽつと色々な物が散在している。転移前の世界にあった漫画や座布団、ゲームやテレビといった物が転がっており、アパートに住む一人身の部屋のような散らかりようだ。そしてその中心に、床に敷かれたお布団の上で、


「よーよーよく来たよく来たのじゃあ」


少女が胡坐をかきながら座っていた。ぽてぃとちぃっぷすと書かれたお菓子をつまみながら。


彼女は真っ白なティーシャツを着ていたが、サイズがどうやらあっていないらしく、太ももまで伸びきるくらいブカブカしている。しかしそれを逆手にとって下が見えないことを良い事にズボンといった物を穿いていなかった。


お蔭で胡坐をかいている少女の下の方は隙だらけで、男ならば目を逸らしかねない程の危なさを保っている。十人に八人は自身の常識に合わせて目を逸らすだろうが、俺は残念ながら残りの二人だ。バッチリ見させて貰おう。


可愛らしい淡い青色のパンツだ。


「……帰るか」


転移魔法を唱える。お、こういう所って案外魔法は使えないもんだが使えるのか。しみったれた天井に頭をぶつけたりしなければいいが。


「ちょーーーーーーーーーーっと待った。待つのじゃ! おかしいじゃろ! 聞こうよ! もっと色々儂は誰じゃとか此処は何処じゃとか聞く事あるッ! じゃろッ!! 」


「見るもん見れたし帰っていいかなって思ったんだが、違うのか? 」


「そこまで自由じゃないのじゃ! テンプレに沿うのじゃ! 物語始まらんじゃろ!! 」


「残念だが俺は目当てのヒロインを攻略したら次のゲームに行く派なんだ。それにお前はどうやら永遠と同じことをループさせて喋る訳じゃないみたいだしな」


「思い入れーッ! 思い入れを持つのじゃーーッ!! ていうか儂がバグって同じ単語しか言わなかったらそれはそれで怖いじゃろ! 」


「ああいうのって大体選択肢が『はい』がデフォルトにされているの悪意があると思わないか? 」


「話進めないといけないんじゃから当たり前じゃろ! 」


「ううむ。残念ながらお前は攻略対象ではないようだ」


「戦力外通告早すぎないかの!? 」


そこまで話したところで俺のペースに乗せられていた事に気づいたらしい。


「とりあえず儂の話を聞いて欲しいのじゃ! パンツ見たじゃろ! パンツ代! おパンツ代じゃ! 」


大層興奮しながら、少女は新緑に近い優しい翡翠色の髪を揺らしながら怒る。その度に左右のツインテールが空気を切っては激しく揺れていた。

なんというかパンツ連呼されても嬉しくはない。むしろ価値が一瞬にして暴落したみたいだ。希少価値だからこそ意味があるのかもしれん。


ひとしきり息を吸って落ち着たのか、暴れまわった髪を一瞬で形にして髪と同じ色の緑色の瞳をこちらへと据える。表面上は整えたつもりなのだろう。


「初めましてじゃの。儂は神様じゃ」


えっへんと言わんばかりに将来に期待しておきたい胸を張った。シャツ一枚しか無いからかぴっちりと服の上から形が見える。えってぃだ。


「神ぃ? どこらへんが? 」


「……死にたいならそういえばいいのじゃ、殺してやろう」


ぎろり。とんでもない威圧の籠った目で睨まれる。しかも微妙に恨めしそうな気持が伝わってくるのは、本人も気にしている所なのかもしれない。


「大丈夫だ。俺は小さいのもイケる」


「ひぃ!? 身の危険を感じるのじゃ。というよりそういう話じゃないのじゃ! 儂の名はUNKNOWNじゃ。名前がなかったのでのう、今さっき名付けたのじゃ」


「適当すぎだろ」


「神じゃから何でもいいじゃろ」


あまり自分の名前に興味が無さそうに告げるUNKNOWN。言い辛いなんてもんじゃない。ん? UNKnown…? 


「それなら俺があだ名を付けてやる。うんkなう、これでどうだ」


「…………は? 」


「強引すぎたか。UNKまでは良かったと思うんだが、NOWNのN部分を如何しようも無かったからな。じゃあ妥協でうんkだ。これでどうだうんk。初めましてうんk」


「お主、よっぽど殺されたいのかの? 」


先程とは桁違いの殺意を向けてこられた。ぎろり、どころではない。殺す、と目力を感じた程だ。余りの目力に思わず後ろ脚を踏んでしまう。


「別のあだ名にするのじゃあ! 次また同じようなクソみたいなネーミングであったら儂はキレるぞ」


「クソなだけにか」


今度は無言で枕を投げられたが、俺はひょいと避ける。


「……はぁ」


別のあだ名ねえ。正直どうでもいい。うんkじゃ駄目なんだろうか。さっきの様子だと駄目なんだろうな。なかなかいいネーミングだと思ったのだがお気に召さなかったらしい。


「それならU.K.でどうだ? 」


「ん? んん? ああ、unknownをイニシャルで取ったんじゃな。まあ、及第点じゃ」


U.K.は「捻りがないのう」とだけ呟きやがった。こいつ、ぶっ飛ばしてやろうかと思ったが。そんな話をしたい訳ではない。軽く小突いて話を進めることにした。うぐぅ、と低い声を出していた気もする。


「ところでお前、何で俺をここに呼んだ? 」


「待て、待たんか!? い、今儂を小突いたのう!? さらりと何を流そうとしている。儂、神様じゃぞ!? 」


小突かれた事によって触ればふにふにとしていそうな手で抑えながら、半べそをかきつつ怒るU.K.


誘われるままに俺はマシュマロみたいな頬っぺたの感触を精一杯味わうべく両手を伸ばし、天上という言葉すら生易しいほどの感覚を味わった。


「口が滑った」


「手じゃあ!! 手と口の区別くらいつくじゃろ! 間違える事が無いじゃろ!? げー、んー、ざー、いー、進行形じゃあああッ!! それにどんな時でもこんな幼気な少女を小突いて良いわけがなかろ?! 」


ふんがー。と後ろに擬音がつきそうな感じで可愛らしく怒るU.K.


「神様になっても叱って貰える奴がいるだけありがたいと思え」


俺が静かに逆ギレすると、U.K.は疑惑の視線を飛ばしてきた。


「え、えぇ、ええぇぇぇぇ? なのじゃあ………」


「神だからって崇めて貰えると思うなよ。崇めて貰えるような背格好と雰囲気を携えたら考えてやる」


「そ、そうなのかの? 」


「お前には無いがな」


「あ、上げて落としよった! 努力すれば出るかもしれんのに! 」


「胸も無いしな。はん、それに努力して出ればいいけどな。安易なキャラ作りに精々勤しむが良い」


「何で一々儂は胸の事を弄られんといけんのじゃ!? それにこれはキャラじゃなくて素じゃ! ……そもそも儂が怒ってた話なのじゃが」


なんだろう。こいつ弄ってて面白い。


U.K.は物憂げにため息をつく。その姿がシャツ一枚にパンツ一枚でなければ、それなりに絵になる程可愛らしかった。が、本人に言うと調子に乗りそうな気がする。


俺の話題逸らしのせいで完全に出鼻を挫かれたU.K.はやる気を無くしたらしく、先程までつまんでいたお菓子へと手を伸ばし横になってゴロゴロし始めた。


その際に胡坐をかいていたおかげで図らずともすこしだけほんの少しだけ見えていたパンツが完全に外へとむき出しになってしまったが、それも俺は言わない。なんだか見せてるだけのパンツに価値はなさそうだが、性格はともかく顔はいいので良しとしよう。それが聞こえてしまえばクズ認定されそうだから黙っている。


見えているなら仕方がない。見てしまっても。パンツに罪は無い、俺にも罪は無い。


しかし会話の印象ではU.K.は一度拗ねるとこじらせそうな性格をしていそうだ。


U.K.の頭を鷲掴みにし、身体を起こさせる。その際に日差し一杯浴びたかのような爽やかな匂いがしたが、そもそもここらへんどこに太陽とかあるんだ。あと少しだけムラっとしたのは秘密だ。


「早く切り出せ」


「あだ、あだだだだだだだだだだだだだだだだッ!! 痛い、痛い痛い痛いのじゃ!!! 暴力反対!! 暴力反対なのじゃ!! 起きる、起きるから止めてほしいのじゃあ!! 」


おおよそ女の子らしからぬ悲鳴を上げながら起き上がったので、力を緩めてやる。


「で、でぃーぶぃじゃ!! 女子の頭をつかむとはどうなっておるのじゃ!? 」


「これ、取れないんだな」


「とーれーたーらー、死ぬわぁッ!!? 自然にサイコパス装うのはやめてほしいのじゃ! 」


「ははは」


「ひぇ……、正真正銘の"さいこぱす"じゃあ……。せめて儂の反論を適当に返すのはやめて欲しいのに……。もうよい、もう勝手に始める……」


最初の頃はそれなりに整っていたツインテールをぐしゃぐしゃにして、ついでにぽろぽろと涙を流し顔を鼻水でグシュグシュにしてU.K.は愚図りながらぽつぽつと喋り始めた。


いや、拭けよ!


「さっそくじゃが、お主にはもう一つ似たような世界に渡って貰いたいのじゃ」


「似たような世界だと? 」


「左様じゃ。そこにはある程度の文明と、じゅるっ、魔法技術がはびこっておる。魔物も存在しておるし、エルフとかも存在しておるぞ」


またこの手の奴か。思わず溜息が漏れてしまう。


「―――で、俺にその世界の魔王を殺して救って貰いたいとか言うのか? 」


「ううむ、違うのじゃ。じゅるっ」


U.K.は鼻水をずるずる吸いながらしゃべり続ける。仕方なく俺は近くに投げ捨てられていたティッシュを箱ごと渡した。


「のじゃあックシュン! その世界を滅ぼして欲しいのじゃ」


「は? 」


何だそのくしゃみの仕方。そんな漫画みたいなクシャミの仕方する奴初めて見たわ。


「ん? のじゃあックシュン! 聞こえなかったのかのう? その世界を滅ぼして欲しいと言ったのじゃ。お主だって思っておったろう。『ああ、また異世界に召喚されてその世界を救って欲しいだとか言うのか』と。のじゃあックシュン! 儂も思っておった。のじゃあックシュン! 」



やべえ煩すぎて話が頭に入ってこねえ! 変てこなキャラ付けされた語尾にくしゃみが混ざるとここまでひどくなるもんなのか。



彼女はようやく出し終えたらしく、ティッシュを丸めて後ろにあった可燃物の袋へと投げた。


いやいや、ここどうやって業者来るんだよ。しかもゴミ箱じゃなくて袋そのものって辺りにズボラさを感じるわ! ツッコミ所しかねえ。


そしてそのまま近くに置いてあったコーラへと手を付ける。ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ。ぷはぁ、と口元を拭いながら親父くさく飲み終えた。賞味期限が一日過ぎているのは教えるべきなんだろうか。面白そうなので黙っておこう。


()()()、のじゃ」


U.K.はあくびをしながら、気怠そうにする。俺はお前に飽きないよ……。


「飽きた、飽きた、飽きたのじゃ。毎回毎回同じような展開、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。テンプレート過ぎるのじゃ。王道は最強であるが故に王道じゃが、似たような味付けばかりでは飽きが来てしまうものじゃ」


「お菓子なんかと同じでのう」と呟きながら新しく取り出した別のお菓子の袋を開ける。そしてそのまま食べ始めた。


「じゃから、世界を滅ぼして貰いたいのじゃ」


「お、おう」


何て話だっけ。って聞けねえ。鼻水処理してる音とか色々ツッコミ多すぎて聞いてなかったとか聞けるわけが無い。難聴系主人公になってしまった。


「にゃはははは、言い方が悪かったのかのう。次に渡る異世界を壊せと言っておるのじゃ」


なんだか分からんが俺が世界を滅ぼさなければいけないらしい。何で俺が女の子がいる世界を滅ぼさなきゃならんのだ。


「………………なぜ、俺なんだ? 」


意味深に聞いてみた。何一つ話を理解していないが。


「そりゃお主が前の世界の『最強』じゃからのう。精母加護、龍神加護、魔神加護、加護系統ならほぼ全てをコンプしておるし、ステータスについては言わずもがな。スキルに至ってはお主の『天上天下』で使えぬ物はないじゃろうし、属性は唯一の無属性。極めつけに『勇者』ではないか」


「元勇者だ」


「にゃははは、すまんのう。最強であるお主を似たような世界に送ってやれば、その世界を簡単に滅ぼしてくれそうだからじゃ。それに、お主以外を呼び寄せるのも面倒臭いんじゃ。世界が似通ってないと力を酷使してしまうしのう。儂はそんな真似はごめんじゃ」


U.K.は目を細め、気だるげに笑う。


そこには確かに神がいた。似た玩具を使っていつもと違う遊びをしようとする、人の上の存在が。俺に頭をモミクチャにされ、鼻水タレタレでゴミをまともに捨てないうんkという名の神が。


――ひどい、酷すぎる。間違っても美少女女神なんかではない。見た目は綺麗だが、色々と汚い。こいつがもしも某RTAをしていても俺は何一つ疑問を持たないだろう。



「じゃからのう、お主に飛んでもらう訳じゃ。その世界を"破壊"してもらう為に、のう? 」


「断る」


「じゃろうなあ……。もし世界を滅ぼしたら一つ、どんな願いでも叶えてやるのじゃ。世界を支配する権利でも、ハーレムでも、何でもじゃあ」


「断る。何で俺が自分で手に入れられる物をわざわざ苦労しなきゃいけないんだ」


もしこいつが数分前の印象のままだったら、こいつの処女でも賭けてやってみても良かったが。……流石になぁ。今のこいつは鼻水うんkズボラ女神という汚物が固まったみたいな印象だ。少なくとも欲情はしない。黙ってれば美少女なんだが。


「………」


すっげえ涙目でこっちを見てる。残念ながら今のお前に価値はたぶんない。貧乳女神という所だけは評価出来るが。


願い、願いねえ。正直言ってある意味前の世界で殆ど全てを叶えてしまっている。……逆を言えば、もうやれることが無いという事でもあるが。


そう考えるとこれは"渡りに船"という奴なのではないだろうか。コンプリートとまではいかないでも、クリアをした奴にのみ与えられる報酬。それくらい役得があってもおかしくはない。


「じゃあ、とりあえず異世界にだけ行かせろ」


「は……? 」


鳩が豆鉄砲を喰らったかのような間抜け面をするU.K.


「いや、儂として嬉しいのだがの……。お主、何を企んでおるのじゃ? 」


「企んでなんかいないさ。ただ元の世界にもそろそろ飽きてきたってだけだ」


「……お主、元の世界に婚約者がおるじゃろ。何とも思わんのか」


「あいつなら俺がいなくても幸せに暮らせるさ。元より平和な世界に勇者なんていらないだろうしな」


く、ククク。ハーッハッハ! これでまた女の子と遊ぶことが出来る。それに俺は好感度を稼いだら次に移るタイプなんだ。いつまでも同じ所にいられるか!


俺が浴びたいのは拍手喝采雨霰だ!! 間違っても異世界スローライフや、救済後のアフターストーリーがやりたい訳じゃあ。ない。俺より遥か格下を狩り倒して不幸そうで幸薄そうな女の子を救ったり、奴隷の子を養って将来結婚したりするのが俺の生き甲斐だ!!


これはチャンスだ。


これは世界を破壊する免罪符を得た、好き勝手にさせて貰うチャンスに違いない。


「良かった良かったのじゃ。頑張って異世界破壊ライフを楽しむのじゃ」


向日葵でも咲いたかのように朗らかに笑うU.K.に、俺はずっと気になっていた事を尋ねる事にした。その異世界へと飛ばされる前にどうしても確認しておかなければならない。


「…………ところで、最後に一ついいか? 」


「なんじゃ」


「――――()()()()()()()? 」


U.K.の笑顔が凍る。今までの朗らかさの裏に何かが潜んでいるかのような。不気味な雰囲気が漂った。先程までは柔らかな御花畑だったような緑の瞳は、まるで全てを呑み込む深緑のように薄暗い。


「ほう? どういう事じゃ」


「俺が会った、俺の世界の神はお前じゃない。確かに"アイツ"は言っていたぞ、私こそがこの世界の神様だと」


「ふ、ふ」


「この場所にも見覚えがある。"アイツ"が住んでいた場所だ。鏡写しみたいにな。……いや、違うな。鏡写しなんてもんじゃない。此処は"アイツ"が住んでいた場所そのものだ」


「ふは」


「もう一度言うぞ、お前は誰だ」


「ふ、ふふふ、ふふはははははははははは、ふはははははははははははははははははははッッ!! 」


U.K.は気が狂ったように笑う。そこには無邪気に喜ぶ悪戯が見つかった子供がいた。どこか含んだような怪しげな感情を露わにする。


「面白い! 面白いのじゃ! よくぞ気づいたのじゃ! 勇者……………ええっと、なんじゃったかな」


「サクライだ。後最初から気づいてたぞ」


「面白い! 面白いのじゃ! よくぞ気づいたのじゃ! 勇者サクライ!! 」


ああ、そこからやるのか。しかも俺の言った事ガン無視で。ほーん。


「因みに嘘だ。本名はタナカだ」


「………………、面白い! 面白いのじゃ! よくぞ気づいたのじゃ! 勇者タ」


「それも嘘だ」


「……………………………………………………………………」


U.K.は今までのキメてるかのような発狂具合を抑えて、静かになってしまった。てっきり神だと名乗るぐらいなのだから、俺の事を事前に調べているぐらいはしているのかと思っていた。


「どうした、急に黙って。クスリでも切れたのか? 」


「そうじゃのう、キレておるのう」


「キメキメだな! 」


「な訳ないじゃろ!! 」


「冗談だ冗談」


軽く笑いながらやると、U.K.は緑色の目をじとーっとさせる。


「ふーんじゃ、神を弄んだ罪は重いのじゃ」


「神が本当かは知らんが、俺からしてみればお前はただのガキだ」


するとU.K.は「ふぅん? 」と蠱惑的な笑みを浮かべながら。


「あーあー儂は気分が悪いのだ。折角聞いてやった質問に答えてやろうかと思ってやったのに」


もしかしないでもこいつ、元から俺の質問を聞くだけ聞いて答えるつもりは無かったな?


「子供か」


「ガキじゃから、のう? 」


してやったりとU.K.は堪えきれぬ笑いを漏らす。うぜえ。


「口先だけは神だな」


「………乗らぬぞ。タコめが」


そう呟くU.K.は俺が一瞬見惚れてしまう程、嬉しそうに笑っていた。まるで、悠久の時を潰すかのように。最初からそういうミステリアスな感じを醸し出していたらお前の処女を賭けてただろうな。


残念ながら新しい世界を滅ぼすなんてつもり毛頭にないけどな!


「勇者サクライ、世界を滅ぼさせる為にお主を飛ばしてやるのじゃ」


どうやら先程の偽名をまだ根に持っているらしい。


「適当に滅ぼしてくるか」


「ふははは。一発屋にだけはならんで欲しいのう。なるべく楽しく、面白く、滅ぼして欲しいのじゃ。――――『転移』」


U.K.が俺をその世界に飛ばすであろう呪文を唱える。ふと掌を見ると、うっすらと床が見え始めていた。


「―――じゃあなU.K.」


「またの、サクライ」


名残惜しそうにも見えるU.K.の顔を見ながら、俺の意識はゆっくりと薄れていった。











「―――()()()()()()()()()()()()()()()()()。『悠斗』」


返事は、無い。



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