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カンテラの街  作者: 齋藤翡翠
6/16

5:札遊戯

「革命!」


「んな!嘘だろっ!」


悲鳴に似た奇声をあげて、ルゥは立ち上がる。



「嘘もクソもありませーん。嘘を吐くのは『ダウト』くらいですー。」



意地の悪い顔をしてマピュスが言い放つ。可愛い顔してるのに、使う言葉は可愛気が無い。



「はい、上がり~」



そして最後の一枚を出してマピュスは一抜けした。えげつないものだ。



「しかも、最後の札が5だと!?ふざけるな!」



お察しの通り、今やっている遊戯ゲームは『大富豪』。現在マピュスが革命をしたことで、3が一番強くなり逆に2が最も弱いランクになっている。


つまり3か4を出せば良いのだ。



「パ、パスだ!こんなの出せるわけが…」

「あ、パスですか?じゃあ私のターンですね。」


「はあっ?お前、出すには一枚しか出せねぇぞ!?」


ルゥがパスしたので、私は残りの一枚を出す。

因みに3を出したら禁止上がりになってしまう。

私が出せるのは、4のみ。



「ちょうど良かったです。」



私はクラブの4を出した。



「マジかよ……!」



ルゥは持っていた札を落とし、口を開けた。


「今回の大貧民もルゥね。何して貰おうかしら?」


「お前ら、グルだなっ!?」


そうなんだろ!と疑いの目を向けるルゥ。

「負け犬の遠吠えね。私たちそんなズルしないわよ。」

呆れた口調でマピュスが答える。


「それにしても、伊織も良い腕してるね。最後の札が"縁起物"だなんて。」


「"縁起物"?」


私は出したクラブの4の札を見つめて首を傾げた。


「そんなんも知らねえと出してたのかよ。」


ルゥが私を馬鹿にするように言う。さっきの態度とは打って変わってだ。


「クラブの4ってのはな、『幸運を呼び込む』って言われてんだ。その昔、一世を風靡した"幸運の神"なるマジシャンが、この札を使って芸を披露した事が始まりだとされている。まぁ、ただの願掛けみたいなもんだな。」


「へぇーそうなんだ。」


「ルゥって無駄な知識はあるのよね。」


「うっせえ!」


ペチャクチャ騒いでいると、不意にコンコンと店の窓を小突く音がした。


「ん?何だろう。」


「おや、お客人ですかな。」


マスターが窓際に行き、窓を開けると灰色の鳥が店に入って来た。


「バッビーノ!?」


オッドの飼い鳥バッビーノだ。何やら足に紙を結び付けている。



「オッドマンからマピーに手紙」とバッビーノが喋った。


「手紙?」


マピュスは足についている紙を取り、開いて読んだ。


「『薬を買ってきてくれ。』だって。」


「薬?」


「うん、オッドが色々な物を作るときに必要なの。知り合いの人が作ってるんだけど……この量は持って帰るの大変ね。」



リストを見ながらマピュスは困ったように言う。



「私、手伝うよ?」


「ありがとう。…それでもちょっと人手が足りないな―…」



そう言ってマピュスはルゥの方を向く。何かを言わんとする目で訴えている。



「ゲッ、ちび、まさか"あそこ"に行けっつーんじゃないだろーな…?」



マピュスの視線にルゥは顔を真っ青にして言う。



「大富豪の罰ゲームにちょうどいいし、拒否権は無いよ?」



マピュスは嫌な微笑を溢す。この子、やっぱり小悪魔が入ってるのかも。


「最悪だ……。」


何か嫌なことがあるのか、言葉を失うルゥ。


「じゃあ、決まり!今からお遣いに行こう!マスター、ごちそうさま。」


「ご馳走様です。」


「いえいえ、また何時でも来て下さいね。」


マスターは目尻に皺を作って優しく微笑んだ。


軽い会釈をして私は歩みを進める。


沈んでいるルゥを連れ出し、私たちは珈琲店を後にした。

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