Q:深まる謎
・伊織
age...16
"カンテラの街"に最近やって来た日本人の少女。
暗闇の中に座り込んでいた所をオッドに発見される。
街に来る以前の記憶がない。
・オッドマン__Odd man
age...不祥(見た目は10~20代)
伊織を助けた(?)謎の青年。自らをオッドマンと名乗るが、本名は不明。通称オッドで街の人達から慕われる。寡黙。
・マピュス__Ma puce
age...10
オッドの家に住む少女。饒舌でたまに毒舌。札遊戯に長けている。
・バッビーノ__Babbino
age...5
雌のヨウム。オッドの飼い鳥。
言葉を理解して話す賢鳥でもある。
・マスター__Master
age...69
珈琲店Atoutのオーナー。人の良い老紳士。本名はまだ語られていない。
・ルゥ__Loup
age...23
街一番のお調子者。女たらしでもある。マピュスとは犬猿の仲。
・キリーロヴナ__Кирилловна
age...不祥(自称24歳)"魔女"と呼ばれる医学者。占い師や薬屋等を生業としている。若い男性が大嫌いな反面、幼女好き。
・アドルフ__Adolph
age...16
黒いキャップに黒いフードのパーカーを着た少年。身長158センチのチビ。オッドのことを尊敬している。
「何で魔女がこんなとこに居んだよ…滅多に外でないくせに」
背中をキリーさんに踏まれた状態でルゥが言った。
「ちょっと話があってね、オッドに。」
踏む足に力を込めて返すキリーさんに唸るルゥ。もうそのくらいで止めてあげて欲しい。
「あら、オッドは?」
その場に居ないので、キリーさんはいつも一緒だろ?と首を傾げる。
「今さっき仕事が終わったとこ、ほらあそこ」
マピュスが指差す方には、多くの人だかりが出来ている。
その中にオッドは揉まれるようにして立っていた。
「ありゃあ、人気者だねぇ。直ぐにはあいつと話せそうにないな」
頭を掻きながらまいったように呟く。
すると人混みの中から、アコーディオンを弾いていた黒子がこちらにやって来た。
「キリーさんじゃないっスか!」
この口調は聞いたことがある。というか、今朝も聞いた。
黒子の男は被っていたものを取り外した。
黒子の隠されていた顔は、今朝見た顔だった。
「アドルフかい。久し振りだね」
「珍しいっスね、外出されてるなんて。何か大事なようでも?」
「ああ、オッドに用があったんだが…あれじゃあね」
キリーさんがオッドの方を指差して笑った。
「オッドさんは街で一番名が通ってますからね」
「アドルフの口調ってなんか正しい敬語とそうじゃないの混じってるよね」マピュスが話に割り込んでそう言った。
「これでもアドルフは正しい敬語を喋っているつもりだろうよ」
「そうっスよ!って、俺完璧な敬語じゃないんですか!?」
本人は自覚なかったようだ。結構驚いている。
「今もわやわやだよ」
呆れたように笑ってアドルフをキリーさんが指摘した。
「しっかし、今日はやけに騒がしいじゃないか。何か良いことでもあったのかい?」
いつもはどれだけ賑わっているのか知らないのでわからないが、オッドの芸がどんなものだったのか教えた。
「そうかい、伊織は勝利の女神を引いたのかい。道理で呼ばれたような気がしたわけだ」
最後の手品を教えたとき、キリーさんは嬉しそうに微笑んだ。
「あ、オッドさんが来たっスよ」
振り返ると、両手に抱えきれない程の食べ物やら花束やらを持ってオッドが立っていた。
「やっと来たと思ったら、凄いねその量」
「暫くは食材買わなくて済むわね」
嬉しそうにマピュスが言った。
「オッドさん、キリーさんが大事な話があるみたいっスよ。ちょうど俺も皆で話したいとこだったんス」
「…そうか」
ポツリと一言返事をして、何かを悟ったオッドは沢山ある荷物をルゥに押し付ける。
「場所を変えて話そう」
オッドは自分の鞄を持って歩き出した。
「俺たちも行きますよ」アドルフが私やマピュスも来るように促す。
「待てよ、俺は荷物係かよ!」
ルゥ後ろで嫌そうに喚いていた。
「ずっと気になっていたんだけど、アドルフはキリーさんと知り合い?それに嫌われてないんだね」
何処かへと向かい歩いている道中、アドルフに質問した。
「知り合いというか、腐れ縁スかね。俺はまだセーフ見たいっスよ。…その内ダメになるかもですけど」
とアドルフは後ろのルゥを見ながら言った。やっぱり誰しもあんな風にはなりたくない筈だ。
それにしても、場所を変えてまで話すことって……もう、一つの事に絞られる。
歩いて十分も経たないうちに、目的地に着いた。
珈琲店『Atout』だ。
先頭にいたオッドが店の扉を押して入る。カランカランと気前のよいベルの音が鳴った。
「いらっしゃい。おや、今日はお客が沢山来たね」
カウンターに居るマスターがにこやかに言った。
やって来て早々、マスターは美味しい珈琲とブラウニーを出してくれた。
一同はブラウニーを摘まみながら珈琲を啜る。
「で、話だが…」
コーヒーカップを置いて、キリーさんが口を開いた。
「伊織は一体何者なんだい?」
予想していた通りの話の運びとなった。
私の名前が出されたことは今までに何回もあったが、やはり余り気持ちの良いものではない。
「まだわからないんスよ、それが」
「代替わりじゃないのかい?」
「あれは、バトンタッチするようなモノじゃないだろう。入れ替わり式だ」
アドルフ、キリーロヴナ、オッドの順に話す。
「…あの、この事ってキリーさんも知ってるんですか?後、マピュスやルゥに聞かれても…良いものなんでしょうか?」
私たちが座っている席とは別の所で休んでいる二人を見た。少し離れているが、聞き耳を立てれば十分聞ける距離だ。
「いいんだよ。何せ私もアンセルムの一人だからね。後、あの二人はその事を知っているよ」
街の人には流石に教えられないけどね。と付け加えながら、キリーさんは目を伏せた。
二人の事は何となくわかっていたが、まさかキリーさんが『アンセルム』だったとは、思いもしなかった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
今日で最後までいきたかったのですが、ちょっと無理がありました。
期待させてしまい申し訳ありません。
また、数時間後に投稿するかもしれません。
その時はまたよろしくお願いいたします。




