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恋黙す

作者: 改革開花

 私はあなたを愛していた。

 あなたは私を愛していた。

 なのに何故、こんなにもあなたの涙が穢れて見えるのか。



****************************************



 あなたはいつでも優しかった。

 私が風邪を引いた時も、労りの言葉と共に手を尽くして私を看病してくれた。


「早く元気になってね」


 そう言って微笑むあなたに、私も笑みを返すと、あなたはそれだけで喜んでくれた。それが嬉しくて、そんなあなたの笑顔が愛おしくて、私はあなたを見る度に笑顔になった。



「君の目は、小さな宇宙みたいだね」


 少しキザっぽくて、ちょっと照れ臭かったけれど、それでもあなたが褒めてくれたから。私は自分の事を好きになれた。あなたが好きな私を、好きになれた。



「大丈夫かい?」


 事ある毎に心配そうになるあなた。その優しさに触れたくて、その優しさを独り占めしたくて。ついつい、あなたが不安になりそうな嘘を吐いてしまう。

 その度に何度も心配してくれるから。

 私は罪悪感を覚えて、二度としまいと決意するけれど。あなたの優しさを思い出しては、いつのまにか嘘を吐いてしまう。私はきっと悪い子だけれど、私に嘘を吐かせるあなたは罪作りだと思う。


 あなたはきっと分からない。

 あなたの言葉が、どれだけ私の支えになったか。

 あなたの心が、どれだけ私の心に温度をもたらしたか。

 あなたという存在を、私がどれだけ愛していたか。


 あなたはきっと分からない。

 あなたの隣で微笑む女を、私が分からないように。

 その女に見せるあなたの笑顔を、私が分からないように。

 あなたと女の指に光る何かを、私が分からないように。


 私がどれだけ望んでも、私がどれだけ願っても。

 あなたの隣に私はいない。あなたの近くに居ても、隣にはなれない。

 それが私には耐えられなくて。



****************************************


 

 狭い世界から飛び出して見れば、無限と思える空があったけれど、その空は何だか寒かった。

 ちらりと振り返ればあなたは泣いていた。


 あなたは私を愛していた。

 私はあなたを愛していた。

 その涙は愛故の涙で、あなたは私を想って泣いてくれているのだろうけれど。

 私はあなたの涙が、隣の女と同じに見えた。


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