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自己紹介しました。(初耳です)



お父様が私達を連れて入ったのは、第一応接室だった。

えっ、第一でいいの?

大丈夫?


突然だけれど、我が家には応接室が全部で五つある。

お父様やお母様を訪ねてきたお客様が通される部屋なのだが、第一から第五までのどの部屋に通されるかは、お父様達の一存で決まる。

というのも、オックスウッド家は王家に次ぐ権力を有する公爵家であり、他にも公爵家はあれど、財力、権力、領土において家格がオックスウッドに及ばない家ばかりなのだ。

なので、応接室に通されるお客様は人格や家格、個人の権力などで優先順位を見定められる。

オックスウッド家で数の若い応接室に通されることは、貴族社会ではある種のステータス扱いでもある。

第一応接室に近ければ近いほど、その人物はお父様達に重要視されていることの証となるからだ。


第一応接室に通されたなんて知られたら、おじさんは普通に生きていけないんじゃないかな…。

ステータスは憧れと同時に妬みも生むため、おじさんはうちを出たあと他の貴族家に箔付けとして引っ張られるか、嫉妬から命を狙われる可能性が出てくる。

どんなに情報規制したとしても、絶対どこかから漏れるに決まってるのに。

お父様はいったい何を考えているんだろうか。


「さて、まずは掛けてゆっくりしてくれ。」

「はあ。失礼し、ます。」


応接室に入るなりおじさんにソファーを勧め、お父様は向いに腰掛ける。

お母様は当然隣だ。

うん、お父様が昼間にいるなんて珍しいもんね。

いいよ、5歳の娘は気にしないで。


これで私までお父様の側に回ってしまうとおじさんが完全アウェー状態になるので、今回はおじさんの隣に座らせていただきます。

いえす、大義名分!

おじさん、ガッチガチに固まってますが。

それは明らかに私が隣に座ってるからとかいう理由じゃないと見た。

いやまあ、5歳の幼女相手に喜ばれてもそれはそれで微妙だけどさ。

座ってから指先すら動いてないけど、大丈夫かな。

意外と緊張しいなんだ。

あぁ、違うか。

目の前に光りものがあるからか。

二人並ぶと三割り増ししてんじゃないかなってくらい眩しいよ。

我が父母ながらこの眩しさはどうなんだろう。

本当に人間なのかい。

誰かー、ゴーグルちょうだい。


「では改めて、娘をモンスターから救ってくれて、本当にありがとう。申し遅れたが、私はギルバート・オックスウッドという。オックスウッド家の現当主だ。隣は妻のセレスティーナ。そして、なぜか貴殿の隣に座っているのが愛娘のエステルだ。」


なぜかって、そんなに強調しなくても。

紹介に愛娘とかいらない。

んー、てかおじさん、ここがオックスウッド家だって今気づいたんじゃないかな。

固まってる固まってる。

少しつついてみようかな。えい。


「っ、⁉︎」


あ、ビクッてなった。

なんか野生みたいだなー。

…面白い。


「失礼ながら、貴殿の名前を伺っても?言葉は特に気にしなくてもいい。社交場ならともかく、ここは個人の空間だ。自由にしてくれて構わない。」


ずっと固まっていたのに、お父様の言葉で現実に引き戻されたんだろう。

保護された野生動物みたいなおじさんはゆっくりと口を開いた。

なんだか可哀想になってきたぞ。


「は…じゃあ、失礼して、俺は、イアソン・ラスターク。一応、26歳、なんだが…。」


その瞬間、空気が凍った。

にじう…⁉︎

あっはっは、嘘だよ、嘘。

だって顔が三十代半ばくらいだもん。

ふー、危ない危ない。

だって、ねえ?

26っていったら、もしかしてお父様達より年下なんじゃないの?

…マジで?


「あー…んんっ。そうか。いや、失礼した。」

「いや、よくあっから…。」


あっ、遠い目をしている!

おーい、戻っておいで!

おじ、じゃない!

イアソンさん!

この場にいる全員に勘違いを受けていたことが判明した今、イアソンさんに声をかける勇者はいなかった。


「ともあれ、娘を助けてもらって礼もしないでは話にならない。良ければ何か、希望することはあるか?できる限り尽力しよう。」


あ、なかったことにした。

そうするしかないけども。


「希望すること?」


ああ、イアソンさんが困ってる。

やっぱ美味しいな、おじさん。

ただの老け顔だけど、ここまでくればもう別腹だ!

ご馳走さまです!

イアソンさんは顎に手を当ててなにやら考え込んでいる様子だけどさ、私は見逃さなかった。

お父様の目が獲物を追い詰める獅子のようにギラリと光ったのを。

怖っ。


「聞くが、貴殿は冒険者か?それにしてはずいぶんと軽装だが、成り立てだろうか?」

「は、いや…冒険者じゃねぇ。」


え、冒険者は存在するんだ?

魔法ないのに。

剣だけでモンスターと戦うの?

スキルとかもなしに?

…なにその鬼畜。

この世界ヤバい。

もはや乙ゲーじゃないじゃん。

そんな設定あったっけ?

ていうか、イアソンさんの存在すら覚えてないってどうよ、私。

隠れキャラとか?


「では、以前は何をしておいでだった。」


追い詰めモード発動ですか。

尋問じゃないんだから、もっと穏やかにいこうよ。

大きな身体から冷や汗を一筋流し、彼はお父様から目をそらして傍にある剣に触れた。

てか、使い込まれすぎて削れてるけど、よく見れば剣の柄にあるのって軍の紋章じゃん?

うぉい、イアソンさん何者。


「以前は…、王都の駐屯部隊所属の兵士だった。この剣はその時のもんだ。」

「では、今は?」

「ちょうど昨日、部隊長に首を切られてな。貴様のような奴はいらないから、どこへ行くなりしろ、だと。」

「理由を聞いても構わないか。」

「理由な…。はっきりしてるわけじゃねぇんだ。ただ、その前の週に隊員全員で剣術比べをしたんだが、隊長をコテンパンにのしちまってな。その隊長ってのが貴族出身だったもんだから、余計に拗れたというか。」


なにそいつ、部下に負けたらか腹いせにクビにしたってこと?

上官の風上にも置けない。


この国の軍人には貴族もいるけど、基本は皆平民からの叩き上げで構成されている。

兵士も騎士も将軍も、実力主義者の集まりなのだ。

だから貴族がいるといっても、武人系が多いはずなんだけど、今回のはコネかなんかで入った馬鹿の可能性が高いな。


イアソンさんは懐かしそうに剣を撫で、息を吐くように笑った。

クビにされたということは、二度と軍には戻れないかもしれない。

それでも、なんてことなさそうに笑うんだ。


「別にいいんだ。クビになろうが兵士のままだろうが、結局生きてくことに変わりねぇからな。それに、クビになってなきゃ、俺はあそこにいなかった。お嬢ちゃんも助けられたし、それならそれで構いやしねぇよ。」


どこまで男前なんだ、イアソンさん!

私のライフはもうゼロよ!

かっこいいなぁー。

前世にこんな人いないよ。

いたとしても、きっとあっという間に攫われちゃうんだよ。

飢えた女子に。


「ほぉう…?」


ちょっと待った。

お父様?なんで今含み笑いを?


「では、貴殿は今現在無所属というわけだな?」

「あ、ああ。」


ひぃっ!飢えた美形がここにいる!

お父様⁉︎

いったいイアソンさんに何を言うつもりなんだー!

なんで気づかないんだよイアソンさん!

狙われてるよ!

ああ、じゃないよまったく!

このお人好し!


お父様が手を組み、ことさら美しく微笑んで口を開く。

自分の顔わかっててやってるな、これ。

微笑んでるし。

お父様のお腹はきっと真っ暗闇色だ。

一点の光もない感じ。


「そういうことなら、是非エステルの従者になってみないか。」


…なんですと⁉︎


これでいいのか…。

キャラの性格が定まってない気がしてならない。

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