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The Land of the Last Moon  一章  作者: しんまお
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一章 八話

「まったく、あなたたちの『感』も優れた能力ですね」


 もうすぐ城の出入り口につく、といったところで背後からコダが声をかける。


 「今、堀の跳ね橋を下げようと思ってたところなんですよ」


 そういってコダは3人の前をあるき、ハデスの間まで一直線に伸びるメインの廊下脇の小部屋へ向かった。


 「ヴィギア様もご一緒されてますから、失礼のないようにしてくださいね」


 コダは跳ね橋を下ろす作業をしながら心配そうにミノアを見る。


 「ミノアのことですから、質問攻めにしてしまいそうですし」


 うっ…と言葉がつまるミノア。


 自覚はあったようだ。


 扉が開きますよ。外で出迎えましょう、とコダがまた3人を連れて外へ向かう。


 開いた扉から外を見ると、もう大きなケルベロスとその横に2頭の馬がこちらに向かっているのが見えた。ケルベロスの上にのっているのはゼッカだろう。

 ということは、その横にいるほうのどちらかが…と、ついじっと見つめてしまう。


 彼らが城に到着するのに数分もかからなかった。


 「ケルベロス、ゼッカ、ありがとうございました。お久しぶりです、コダ」


 頭の先から馬まで真っ黒な女性が馬から降りてコダに軽く礼をする。

 綺麗な声だった。


 「お久しぶりです、ヴィギア様。そして、メノアですね?」


 ヴィギアと呼ばれた女性の後方で黒馬から降りた少年にコダは言った。


 「ようこそ、ここにいる3人が今のところここにいるあなたの兄弟です」


 メノア、と呼ばれた少年は無言でミノア、ヒシリア、ルドを見る。


 「よろしく、ロワの子供達」


 声をかけたのはヴィギアだった。


 「あなたが、ヒシリアね?そしてあなたがミノアで…ルドルシフね?大きくなったわね…はじめてみた時は歩くのもやっとだったのに」


 くすり、と笑ってヴィギアは続けた。


 「城を長らく空けるわけにはいきませんので、このままハデスに挨拶をして、私はもどりますね。コダ、メノアもよろしくね」


 そういって彼女はすっと、ハデスの間へ続く廊下を歩いていった。

 長い黒髪がヴェールとともに軽くなびく。


 「えっと…俺らあの人にあったことあったっけ?」


 ヒシリアがじっとコダの顔をみつめて真面目な顔で問う。


 「ふふふ…ヴィギア様は稀にハデス様のところへ遊びにいらっしゃいますからね、たまたまあなた達をみかけたんでしょうね。さ、メノア、中に入りましょう。これからここがあなたの住まう場所となります。これからよろしくお願いいたしますね」


 にこり、とコダが微笑む。


 メノアと呼ばれた少年は軽く頷くとコダの後ろをついて城の中へと進んだ。


 城の中に入るとメノアは着ていたクロークのフードを取った。


 あっ、とミノアが声をあげる。


 同時にヒシリアとルドがじっとメノアの姿を見た。


 「おまえ、すげぇ綺麗な髪だな!光ってる!」


 ミノアの素直な感想なんだろう。確かに、はじめて見る綺麗なブロンドヘアだった。


 じっと見つめられてたじろぐメノア。


 「…あまり見んなよ…」


 初めてメノアが声を出す。


 「ほら、メノアが困ってますよ。きっと後からミノアが質問攻めしそうですが、仲良くやってくださいね。」


 そういってコダはとりあえず、と勉強部屋のほうへ進んだ。


 「メノアはヴィギア様のお城で今まで生活されてたんですよ。ヴィギア様の城もここ、冥界の…はるか西にあるんです。」


 長い通路を、コダは話しながら進んだ。

 ヴィギアの城にはここのように、使用人(?)はおらず、大きな城にヴィギアとメノアの二人きりだったらしい。

 

 「そっかぁ、なんかそれ寂しそうだな。その城だって広かったんだろ?広い場所でぽつーんってのはすげぇ寂しいよな、俺も生まれたときそうだったもんなー」


 はるか昔を思い出すようにヒシリアが言う。


 「あ、でもこれからはうるさくなるぜ?朝なんて寝ていたくてもコイツ起こしにくるからなー」


 「一人部屋だって寂しいんだよ?一緒にゴハンたべたっていいじゃん。最近だまって部屋にはいったりしてないし!」


 だまって、は入ってこないが『はいるよー』と一方的に言うだけ言って入ってくることが多いのだが。


 「あぁ、メノアもいまのところ一人部屋ですね。相方はラルフですが…まだロワ様から連絡いただいてないのでいつこちらに来られるかまだわからないですね…」


 「コダは…おれたちの名前みな知ってるのか?」


 ふと疑問におもったことをルドが問う。


 くすり、と笑ってえぇ、と答えると コダは勉強部屋の扉をあけた。


 「こちらが毎日いろいろと『勉強』する場所です」


 そういって4人を適当に座らせると、紙とペンを出してコダは書きはじめた。


 1獣 ラヴァ・ルドルシフ


 「あ?ルドのことだよな?ラヴァて?」


 即ヒシリアがルドに問う。


 ルドも少し困った顔をして、名前の一部だとは思うが…と言った。


 「知らなくて当然かもしれません。ちゃんとルドルシフのお名前ですよ。ラヴァとは洗練された、という意味とでも思ってください」


 コダが次の名前を書く


 2獣 ラミア・オルーラ


 「ラミア…?」


 ミノアが読んでみるが、かまわずコダは次を書く。


 3獣 ルキス・シノ・ラガリューノ


 4獣 メノア・ルシルーヴァ


 「あ、お前4番目なのか」


 ヒシリアが言う。

 

 「…俺もしらなかった」

 

 ぶっきらぼうにメノアが答える。


 5獣 シグマ・サラリオ


 6獣 ラルフ・ミル・スクーラ


 7獣 ミノア・スローヴ


 「あ!僕だ。スローヴって、なに?」


 「えぇと…風の様に動く、といったような意味ですよ」


 8獣 シオン・シャルール


 9獣 ラーザ・ヒシリア


 「ラーザは守護者、という意味です」


 ヒシリアに問われる前にコダは言った。


 4人ともじっと紙を見つめる。


 いままで当たり前に呼び合っていたのは名前の一部分だったのか。


 「これで全部ですよ。ロワ様がつけてくださったお名前です。ミノアの相方はルキス、メノアの相方はラルフ。私もまだ会ったことはありませんがいつかきっと、ここに皆集いますから」


 さて、私もヴィギア様が帰られる前にハデス様のところへいってきます、後はたのみましたよ、とコダは言うと部屋を出て行った。




 メノアが初めてきたその部屋の四方を見回していると、ミノアが声をかけた。


 「な、お前、獣はなに?」


 テーブルに乗り出して問うその姿を見て、メノアが思わず言う。


 「お前…犬みたいだな」


 「え?」


 ミノアもヒシリアもルドも、『犬』というのは本のなかでしかしたなかった。確かにミノアの獣の姿は…言われてみると似ていた。


 「おまえ、あれ、犬だったのか!」

 

 ヒシリアがにやりとして言う。彼が読んだ本には人間に飼い慣らされている犬のことがかかれていたのだ。


 「え、僕が犬って?似てるとは…思ったことあったけど犬じゃないよ!」


 むっとしてミノアが言う。


 「いや…本当に犬なのか?」


 すこし困ってメノアが言う。彼のいたヴィギアの城にはありとあらゆる生物の書物があったため、ミノアの好奇心旺盛でまるで尻尾をふってなついてくる姿が犬のように見えただけなのだが…


 「僕、こんなの」


 そういって んっ、と伸びをするとミノアは変化を遂げた。


 以前の子犬のコロコロとした姿ではなく、充分に成長した…細身で長毛のハウンドといったところか…


 ぷっ、と噴出してメノアが言う。


 「本当に犬なのか」


 「ええっ、僕って犬なの?!」


 少し泣きそうなミノアに少しフォローしようと思ったのかメノアが言い直す。


 「まぁ、狼ってとこかもな。これといった名前があるわけでもなかろう、俺たちの獣の姿に」


 「まぁ…コダも以前に言ってたが、『ロワの子』は唯一のしゅだっていうし。現存する種で言ってしまえば、ヒシリアは猫だしな。」


 ルドがにっとしてヒシリアに言う。


 「俺は猫じゃねぇ!」


 「犬に猫か…まぁ、俺は蛇だ。」


 ヘビ?


 にょろーんと細長くて、くねくねしてる?とミノアが問う。


 すごい表現だな、と苦笑してメノアが答える。


 「この髪の色と同じ金の蛇。いっとくが細くはねぇよ」


 変化してくれないか、とミノアは期待して見ていたが この夜の世界じゃ目立ちすぎて自分の姿が好きじゃない、と言ってメノアはフードを被った。


 たのしみにしてたのにー、とミノアがぶーたれる。


 「ま、気にすんなよ。ルドなんて真っ白だぜ?そのうち見せてくれるの楽しみにしとくさ」


 そういってヒシリアは立ち上がると 腹へってねぇ?それとも少し休むか?とメノアにきいた。彼なりにメノアに気を使ってるんだろう。


 自分の部屋にまず行きたい、ということで4人は部屋へ向かった。

 

 それなりの長旅だったのもあって食事の時間までは少し休む、とメノアは一人部屋に入った。


 時間になったら呼びに行く、とルドが告げて自分の部屋に戻ると…あたりまえのようにヒシリアと一緒にミノアも部屋にいる。


 一人が寂しいのもわかる。が、最近寝るときぐらいしかこいつ自分の部屋にもどらんな、とルドは小さく苦笑した。









  

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