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The Land of the Last Moon  一章  作者: しんまお
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一章 七話

 ロワが言っていたその日がやってきた。

 特に城の中は代わり栄えなく、いつもどおり。

 ルド゛、ミノア、ヒシリアもいつもどおり朝食(?)を食べ、同席したコダから

今日、一人仲間が増えますよ、とさらりと言われただけだった。


 「仲間って、なんてやつ?どんなやつ?」


 ミノアが即コダの話に食いつく。


 「午後になったら到着しますよ。楽しみですね」


 「…メロアだかメノアだか、っていってなかったか?」


 さすがルド。先日のロワの言葉を覚えていた。


 「えぇ、メノアですね」


 「ええっ、僕に名前にてるね。同じような獣なのかな」


 んー…、とコダは間をあけて言った。


 「似ても似つかわない獣でしょうか。たしかに名前は似てますが、だからといって同じ種ではありませんよ」


 食事を終えると、今日はいろいろ忙しいので勉強はなし、と言ってコダは言ってしまった。



 



 勉強が嫌いだったら、今日はなし、といわれたらうれしいのだろうが、別に嫌ってはいない彼らにとって、新しい仲間が来るその時間までは暇で仕方がなかった。

 ゼッカもケルベロスと共にその仲間を迎えに出向いてるようで、武術の練習も見てくれる人がいない。

 完全自習、となると なかなかやる気がでなかった。


 「んー。出迎えにいってる、ってことは今回はロワが連れて来るんじゃないんだなぁ」


 ミノアがぼそりという。


 いちおう自習。という名目で、3人はいつもの勉強部屋に集まっていた。


 「だよなぁ。ロワなんて ぴょーんといって、ぴょーんと連れて来ちゃうようなことできそうなのにな。…なんで俺らは城の中までつれてきてもくれなきゃ、出迎えてもくれなかったんだろうって思うけどな」


 ヒシリアがペンで何かを書写しながら面白くなさそうに言う。


 「歩けなかったんだぜ?訳がわからないうちにつれてこられて、泉のほとりにぽい、だぜ?しかも、もしも道に迷ったりしてたらヤバかったんじゃねぇの?」


 「まぁ、きっとロワのことだから何か事情か思惑があったんだろ。きっと今ならなんとも思わない距離だったとは思うし、迷子になるまでもなく城門見えてたしな。…そういやあの時ヒシリア大泣きだったよな」


 ちらり、とルドが横目でヒシリアを見る。


 「うっせぇ、どんだけあそこに一人でいたと思ってンだよ!つか、もうそれ言うなよ!」


 こいつ、可愛かったよなぁ…とルドは手元の本にまた目を落として思いにふけった。喜怒哀楽と素直に表現するヒシリアは、ルド自身も自分とは正反対だなと思っていた。単純思考で考えていることがすぐ読める。かと思えば、突拍子もないことをしでかしたりする。


 ロワの守護獣として、ヒシリアと対であるからこう思うのだろうか?


 目だけは本の文字を追いながら、ルドはまた考える。

 最近いつも思う疑問。

 まだ仲間は全て集まっていない。けれどきっと、俺は相棒がヒシリアでよかった、ときっと思う。

 幼い頃からずっといるから?

 同室で始終一緒にいるから?

 いやでも、ミノアも一緒だ。部屋なんてあってないもので、こいつはしょっちゅう遊びに来る。

 

 なんともいえないモヤモヤとしたものを抱えながら、ルドはひとつ溜息をついた。

 

 「なにそんな難しそうな本よんで溜息ついてんだよ。うへぇ、小せぇ字。よく読む気になれるな、こんなん」


 あからさまに嫌そうな顔をしてヒシリアが本を覗き込む。


 「お前は本を読むのが苦手すぎるんだよ。感だけで魔術をこなそうとしてるから、上達しないんじゃないのか?」


 ふん、とそっぽを向いてまたヒシリアは書写をはじめる。

 ルドが言ってることは、以前にコダに言われたことそのままだった。ルドは知らないはずだったんだが。

 どうも、小さな文字を目で追うのが辛い。

 目がちかちかしてくるのもあるが、イライラしてもくる。

 だからつい、大まかに読んで、あとは実践で感を交えて試す。

 それを何度も繰り返せばモノにできると思っていた。

 ヒシリアとしてはゆっくりとは上達してきてるとは思うのだが…常に本を読んで励んでいるルドには上達ぶりは足元にも及ばない。


 「でもさぁ、二人はいいよ~。僕なんて魔術才能ないもん。コダにきっぱりいわれちゃったしなー」


 「おまえはそのぶん、俺なんかよりもすげぇ特技もってんじゃん。俺らより走るの早いし、身の軽さは勝てる気しねぇよ」


 ヒシリアがいうと、へへん、とミノアは笑った。


 「あー。はやくこないかなぁ。メノアってやつ。そろそろだよね?門まで行ったら怒られるかな?」(ミ)


 「んー、コダは何もいってなかったよなー。でもやっぱ城勝手に出ちゃおこられそうだからさ、城の入り口んとこまでは出迎えてていいんじゃねぇ?」(ヒ)


 きっとコダも黙って自分達が自習してるとは思ってないよ…とルドは思ったが、口には出さなかった。

 きりのよいところまで本を読み終えると、しおりを挟んでぱたんと閉じた。それを見て、ヒシリアが んじゃ、行くべ、と扉を開ける。

 浮き足立って前を歩く二人の後を遅れをとらないようにルドはついていく。


 ヒシリアとミノアはけっこう似てるのにな、と思う。

 なのにいつも、目で追うのはヒシリア。


 何なんだろうな、これは。


 そう思いつつ、考えるときりがないのでミノア式を見習って『ま、いつかわかるさ』と自分に言い聞かせる。

 楽天思考では ミノアはヒシリアの上をいくのも、ルドは見抜いていた。

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