Episode5 バルカン
バルカンに戻った六人は、指令所へと向かった。
「う~い、戻ったぜぃ」
「ディックったら、軽すぎない?」
「いいんだよ適当で。」
「おお、戻ったか。」
奥からカミキが出てきた。
「あ、ちょうどいい。オヤジ、ちょっと聞きたいことがあるんだが・・・。」
「なんだ?ブレイクよ。」
「ん~、でもここじゃあ話しづらいな・・・。」
「じゃあ、私の部屋に来なさい。」
「マルクたちも来いよ」
「えっ?はい。」
三人はブレイクたちについて、カミキの部屋に入った。
「で、聞きたいこととは何だ?」
「情報部のジャックに聞いたんだが・・・、対GAL武器の開発をしてるそうだな・・・」
「・・・そうか、ついにジャックも教えたか・・・。まあいい、この際、全てを話そう。」
カミキは立ち上がり、話し始めた。
「この組織を立ち上げたのは今から15年前のことだ。まだ幼いディックを連れ、数人の助手といっしょに。」
「ディックはオヤジさんの子供なの?」
「いや、違う。ディックは捨てられた子供だった。二ヶ月探し回り、ようやくこの地を見つけた。そのときにはもうGALは世界中で発生していた。この計画を考えたのは、私のパートナーであり、幼馴染でもあるザリアという男だった。そのためにこの建物を作る際に、地下深くに研究施設を作った。」
カミキは窓の外を見ながら話し続ける。
「一年半後、この建物は完成し、研究が始まった。ディックはそのころから各地に兵を引き連れ、GALを狩っていた。そして狩られたGALを集め、研究に役立てた。」
「ディック、そんなこと一度も言ってなかったじゃないさ」
「・・・まあな、ここからはあまりいい思い出じゃない・・・」
カミキに替わり、ディックが話し始めた。
「あれは、俺が10歳になった頃か、対GAL武器の試作品が作られた。作り上げたザリアはその試作品を持って、GALのもとへ行った。俺とカミキのオヤジはそれを見に行ったんだが・・・」
「どうなったの?」
「武器は暴走を起こし、その場で爆発を起こした。俺達は間一髪免れたが、ザリアは勿論、その辺りの村や自然は消え去った。武器には何らかの化学薬品が使われていたらしかったんだ。みんな知っているだろう?マルゴ地方の北部さ。それからすぐにその計画は中止され、研究施設は封印された。」
「でも何故再び研究を始めたの?」
カミキが再び話し始める。
「三年前、ブレイクとリリーは知っているだろうが、GALの爆発的増加が始まった。世界各地で被害が続発した。そのときこの事実を知っていた私とザリアの息子、ジャックは再び研究を始める決意をした。選ばれし者だけでは間に合わないと思ったからだ。そのためには、安全な武器を作る必要があった。そのためにより多くのGAL、そして君達選ばれし者たちをを研究することにした。」
「俺達を?」
「ああ、GALを殲滅する力を持った選ばれし者たちは、何か石以外の特別な力があるのではないか、そう考えたからだ。」
「それで、その研究は進んでいるのかよ?」
「いや、実は知っての通り極秘の中行われている。だからあまり大きくは動けないでいる」
「そうか・・・」
「あのぉ・・・」
「ん?」
ルークは申し訳なさそうに言う。
「僕・・・お腹すいたんだけど・・・」
「そうだった、まだ朝飯を食べてなかったな・・・」
「みんなで行きましょう」
「そうだな、この話はまた今度だ」
「じゃあ、今日三人は午前中は自由にしてていいぞ」
食事をしながらブレイクはいう。
「午後になったらまた俺がこの中を案内してやる~う」
「ちょっとディック、食事中なんだから落ち着きなさいよ。」
「へ~いへい。」
「ねえ、ルーク。」
「なに?」
食事を終えた三人は、四階にある談話スペースでくつろいでいる。
「さっきのカミキさんの話、どう思う?」
「研究の話?」
「うん。なんで対GAL武器を作らなきゃいけないかと思ってさ。」
「そりゃぁGALをやっつけるためでしょ?」
「それはそうだけど・・・なんか他にも目的があるんじゃないかな・・・」
「他の目的ねぇ~。アリサはどう思う?」
「う~ん、確かにGALを殲滅するだけだったら、そんなもの作らなくても良さそうだもんね・・・」
「アリサもそう思う?」
「もしかして、ブレイクさんが言ってた暗黒の神を倒すことと関係してるんじゃない?」
「確かに・・・、武器で何らかのことをする・・・みたいな・・・?」
「本当にそうだったら、きっと対GAL武器っていうのはただの名目だけかもしれないわね。」
「ますます謎が深まるなぁ・・・」
しばらく無言になる三人。
「ふわぁぁ・・・。なんか難しい事考えてたら眠くなってきちゃったよ・・・」
「ルーク、寝るなら自分の部屋に戻りなよ・・・」
「そうだね、じゃ、おやすみ~。」
ルークは自分の部屋に戻っていく。
「私達も戻ろうか、マルク。・・・マルク?」
「んぁ、う、うん戻ろうか。」
「?」
「ルーク、そろそろ起きなさいよ!」
「んん?あぁ、アリサ、どうしたの?」
「どうしたじゃないよ、もう夕方よ?」
後ろにはバルカンの中を案内するはずだったディックがイライラした顔で立っている。
「まったく、ほらっ、いくぞ!」
ディックはルークをベッドから引き摺り下ろす。
「うわっ!」
『は~や~く~。』
マルクとアリサはそろってルークを急かす。
「ていうか、どうやって部屋に入ってきたの?」
ルークは眠たそうな顔で尋ねる。
「どうやってって、お前部屋の鍵くらい閉めておけよ。」
「あ~、そういうことか・・・。」
「じゃあ、下の階から順に案内しよう。」
『は~い。』
一行はエレベーターで地下3階に降りた。
「ここには浴場がある。好きな時に入るといい。」
続いて地下2階へと行った。
「ここは、俺達や兵のための武器・防具を作っている『ファクトリー』だ。俺達くらいだったら、オーダーメイドで作ってくれるぞ。」
「本当!?」
いち早く反応したルークはすぐ近くにいた研究員らしき人のところへ行った。
「ねえねえ、俺の銃作ってよ!」
「おやおや。うわさに聞いていた新たな選ばれし者ですな?」
「うん!」
「では、どんなものがいいですかな?」
ルークは自分の要望を伝えている。
「ほら、おまえさん二人も行くといい。」
ディックが促すと暇していた研究員が近づいてきた。
「では、早急に仕上げるんで、できたら連絡しますね。」
『は~い』
「じゃあ、いくぞ。」
次に、2階へと昇った。
「ここは訓練場がある。人同士では勿論、シュミレーションもできる。」
「へぇ~、早速シュミレーションやろうよ!」
「残念だが今はアップデート中だから使えない。また今度な。」
すると、ディックの携帯が鳴り始めた。
「・・・ブレイクから?」
ディックは電話に出る。
「なんか用か?」
『いや、せっかくの休みに悪いな。ちょっと4人で指令所まで来てくれ。話したいことがある。』
「いいけど・・・なんで俺が三人と一緒にいるって知ってんだ?」
『ここの警備システムなめんなよぉ。どこにいるかくらい判るさ。』
「はいはい。じゃあ今から行く。」
電話を終えると4人は司令室へ向かった。
「で、話ってなんだよ?」
リリーも合流し、指令所に集まっている。
「まあ、GALの習性がわかったとでもいえばいいのかな。」
「要は出現する場所には共通点があったのよ。」
リリーが補足をする。
「共通点?」
「ああ、そうだ。結論から先に言うと、俺達『選ばれし者たち』が関係しているところに、よく出現している。」
その言葉を聞いたマルクは気付いた。
自分の村、ルークとアリサに会った街、ルークのよく遊んでいた森、そしてブレイクとリリーの滞在していた街。
全てその共通点に当てはまっている。
「じゃあ、この間のコーム村の出来事は?」
「判らない。もしかしたら他の選ばれし者が関係していたのかもしれないな。」
「そうか。これからはGALが大量に出現したところに、他の選ばれし者が関係していると見たほうがいいな。」
「じゃ、早速コーム村に行くか。」
「相変わらず行動だけは早いのね。」
「準備できたか~?」
『は~い!』
すると屋上の扉が勢いよく開いて研究員が走ってきた。
「三人とも~武器ができましたよ~!」
「マジ?」
ルークは飛びついていった。
「おぉ~、かっこいい~!」
ルークは武器を受け取ると早速装備していた。
「見てみて!これ僕の新しい武器!」
「うん、見れば判る。」ディックは冷静にあしらう。
二人も武器を受け取った。
「そんじゃ、行くぞ」
六人はヘリに乗り込み、コーム村へ向かった。
「あっ!操作方法教えてもらうの忘れた!」
『ワハハハハ』
「・・・・・・・・・」
カミキは窓の外を眺めていた・・・。
鉛色の雲が空を埋め尽くしている。
「コンコン」戸を叩く音がする。
「誰だい?」
「私です、ジャックです。」
「・・・入りなさい・・・」
「それで、どうだね?」
「はい、今のところ順調に進んでおります。」
「そうか・・・」
カミキは茶をすする。
(あとは、あの子達次第か・・・)