Episode2 青い稲妻
「ねえ、ルーク。この道で本当にあってるの?」
今、三人がいる場所は森の中。生い茂った木々しか見えない。
「大丈夫。隣の街は海岸沿いにあるらしいからね。海のほうに向かってるから。」
「よく分かるね・・・」
「よくこの森には遊びに来ていたんだ。秘密基地作ったりしたな~。」
しばらく草を掻き分けながら歩いていくと森が切れて、大きな丘に着いた。
そこからは、いろんなものが見えた。正面には広大な海が見える。
「見て!あの街じゃない?」アリサは海岸沿いに立つビル郡を指差して言った。
「そうだね。ざっと15kmくらいかな。」
「けっこう遠いのね・・・。」
「日が暮れてきたから、今日はここで野宿しよう。」
水平線の上に赤く輝く太陽があった。
焚き火を囲みながら、三人は食事をしていた。
「ねえ、ふたりとも・・・。」
マルクは話しかける。
「どうしたの?」
「あの街を襲ってきた奴らって、何が目的なのかなぁ。」
「確かに。考えた事もなかったよ。」
「そうね。気になるわね。」
「軍隊の様子を見れば、まだ有効手段が見つかってないということだから、出現してからまだ日は浅いとは思うけど・・・。」
「でも、どうして私たちだけは対抗できるのかしら・・・。」
「・・・あーもう難しいこと考えるのなしっ!!」
ルークは叫ぶ。
「それもそうだね。」
三人は食事を終え、テントで眠りに着いた。
翌日・・・
濃い霧の中三人は目覚めた。
今日はあまり天気が良くないらしい。
三人は少しでも早く街に着こうと歩き始めた。
「この道を道なりに行けば街に着くはずだよ。」
「しかしひどい霧ね。100mも前が見えないわ。」
歩き始めて一時間たっても霧はまだ晴れない。
(・・・ヒタッ・・・ ・・・・・・ヒタッ・・・・・・)
マルクは何者かの足音が聞こえたような気がした。
二人は気付いていないらしい。
「!」
足音はだんだん近づいてきている。
「ルーク!前に何かいる!!」
「えっ?」
見えたと思った瞬間、マルクは恐怖を覚えた。
相手はいつの日か見た怪物、いやそれ以上の大きさの生物だった。
前触れもなく三人を取り囲んだ敵は、四方八方から飛び掛ってきた。
「ここはまかせて!」
アリサは鞄から杖を取り出し術を唱えた。
「“守護結界”!」
すると三人を包むように結界が張られた。
相手は弾き飛ばされたが、再び突進してきた。
アリサは別の術を唱えた。
「“火炎術”!」
今度は炎の玉が現れ敵をなぎ倒しっていった。
これ以上やっても歯が立たない事を悟ったらしき敵は、一目散に逃げていった。
「ふぅ~。」
アリサの力を目の当たりにしたマルクとルークは目を丸くしていた。
「・・・強い・・・」
「これくらい出来なくちゃ、この先生きていけないわよ。」
ようやく霧が晴れて、陽があたってきた。
「おっ、街が見えるぞ!」
ルークがそう言った瞬間、轟音と共に目の前に巨大な生物が現れた。
「くうっ・・・。」
今度の相手は前の相手とは比べ物にならないほど巨大、且つ強力だった。
三人がいくら攻撃しても、良くてわずかな傷しか与えられなかった。
「危ないっ!!」
三人は横っ飛びをして相手の一撃を避けた。
相手は間髪入れず次々と攻撃してきた。
攻撃が効かない三人はただ、避け続けることしかできなかった。
相手は少し息を吸うと口から炎を吐き出し、なぎ払うようにして攻撃してきた。
アリサは結界を張るものの、数秒で消えてしまう。
そこへ追い討ちをかけるように近くの木を投げつけてきた。
「うわっ!」
剣で身を守るマルクだが、その衝撃で剣が飛ばされてしまった。
「くそっ、これじゃあやられるだけだ!」
「覚醒すればいけるかもしれないっ!」
「でも覚醒なんてそんな時間ないわよ!その隙にやられるわ!」
「じゃあ、どうすれば・・・・・・」
『!!』
気づいた時には遅かった・・・。
相手の蹴りが入って、三人は道の脇に飛ばされた。
薄れる意識の中で、マルクは青い何かが近づいてくるのが見えた。
「・・・・・・」
青いものは無言で腰に挿してあった刀を掴み、相手に近づいて斬りかかった。
相手は大きな体ながら、スレスレのところでかわした。
両者は踏み込むと接近戦に入った。
相手は何度も攻撃をするも青いものはすべてかわし、斬っていった。
相手がよろめいてスキを見せた瞬間、青いものは刀で相手を両断した。
「愚か者め・・・。」
血しぶきを浴びながらそういった青いものは、晴れ渡る空を見上げた。
「・・・・・・、・・・・・・。」
マルクはぼんやりと目を覚ました。
両隣にはルークとアリサが寝ている。二人とも、いや自分も含め傷だらけだ。
体を起こすとあちこちが痛んだ。
ここはどこかの病院のようだ。
決して広くない部屋だが設備は整っている。
空の感じを見る限り今は夕方らしい。
ふと、入口のほうに人影が見えた。
「よう、起きたか。」
その男はぼさぼさの頭をかきながら近づいてきた。
「感謝しろよ、俺がお前さんたちをここに運んできたんだから。」
「あ、ありがとうございます。・・・えっと・・・。」
「そうだ、自己紹介がまだだったな。俺はブレイク、お前たちと同じ選ばれし者だ。」
「えぇっ!そうなんですか?・・・もしかして石の色は・・・。」
「俺のか?青だよ。」ポケットから石を取り出した。
「じゃあ、あそこで助けてくれたのって・・・」
「あぁ、俺だ。森のほうで音が聞こえたから行ってみたらお前たちがふっとばされていたんだ。」
あの青いものは覚醒したブレイクだったのだ。
「そうだ、お前たちにはいろいろ教える事がある。二人が起きたら呼んでくれ。」
「あ、はい。」
ブレイクは部屋を出て行った。
マルクは脇に置いてあった食べ物を食べ、また眠りについた。
再び目を覚ました時にはもう夜だった。
横を見るとそこに二人の姿が見えない。
体を起こし、とりあえず部屋を出た。
病院の中は、時間も遅いだけあってか、人の姿は少なかった。
休憩所の明かりがついていることに気付いたマルクは中を覗いてみた。
「おっ、来たか。」ブレイクがこっちを見て言った。
円卓にはルークとアリサもいた。なにやら話をしていたらしい。
「マルク、大丈夫?」アリサは心配そうに言う。
「うん、あちこちが痛いけどね。ところで何話してたの?」
「三人いるときに話すって言ったからな。今は世間話だ。この街はいい所だぞ。」
「ふ~ん。で、話ってなんですか?」
マルクはイスに腰掛けるとブレイクに尋ねた。
「あぁ、そうだな。お前た・・・・・・!」
急にドアが開いて医師が入ってきた。
「君たち、今何時だと思っているんだい。はやく部屋に戻りなさい。」
「・・・・・・は~い。」
ぶつぶつ言いながら去っていく医師を横目にブレイクは言った。
「話はまた明日だ。朝迎えに来るから支度しとけよ。」
そう言ってブレイクは口笛を鳴らしながら部屋を出て行った。
「僕らも帰るか・・・」
「そうだね。」
三人は部屋に戻りベッドに潜り込んだ。
「ねえ、マルク・・・」ルークが小声で話しかけてきた。
アリサはもう寝ているようだ。
「・・・何・・・?」
「ブレイクさんの話ってなんだと思う?」
「ルークはブレイクさんが僕たちと同じ選ばれし者って聞いた?」
「うん、休憩所に行く前にアリサと一緒に。」
「きっとそのことだと思うよ・・・。僕らの知らない事を知っているんじゃないかな。」
「う~ん、ま、明日早いし寝よっか。」
「うん。おやすみ・・・」
夜道を歩いているブレイクはなにから話すべきか迷っていた。
きっとあの三人は知らない事だらけだろう。
もしかしたらショックを受けるかもしれない。
「どうすっかな~。」
夜は次第に更けていく・・・