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文才無くても小説を書くスレ参加作品

デリケートな部分

 文才なくても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:お尻


「いやー。そーかいー、そーかいー」

「はいはい。そうですかい」

 ドアを開けて入ってくる、テンポのずらされそうな扶美の声にも動じている暇はない。

「あ、じゃあ、次は私だな」

 やけに男前に顔引き締めてトイレに旅立つ美弥に軽く手を振って、また原稿に向かう。

 今は一ページでも多く、一分でも早く仕上げるべき時なのに、何故か扶美は机の前でペンを止めてこっち顔を覗き込んでいる。

「なによ」と睨みつけても、

「いやー」とはぐらかす。

「なんなのよ」と再度問い詰めても、

「やはー」と更にニコニコして返す。

 挙句の果てには「はーい、どうどう。落ち着け、加奈ぁ」と、親友の堂上早苗はあろう事か扶美ではなく私を押さえつけにかかってきた。

「なんでよ」と手を払いのけると、

「いや、私には扶美の考えが分かるから」と、気にした風もなくシレっと返してきた。

「なんの話よ」と妥協してやってみたら、

「トイレの話だよ」などと真顔で返された。

「はぁ?」

 これは、私、もう怒ってもいいと思う。

「やー。トイレー、綺麗だよねー」という間の抜けた声がなかったら、噴火していたかもしれない。

 噴火はしなかったものの、別にわざわざ話題にするほどでもないと思ったので、

「それは、掃除くらいするわよ」とペンを走らせ始めつつ言ったら、

「いやいや、甘いな」と、また邪魔が入った。

 一息で描かなくちゃいけない線を描き終わってから、

「なにがよ」と顔を上げると、そこにはやけにニヤニヤした顔の二人がいた。

「なによ」と問い詰めると、

「いやー」だの「やれやれ」だのと肩を竦められる。

 私はペンをしっかり握り締めると、おもむろに振りかぶって……

「いやいやいや、褒めてるのよ!」と早苗が驚くくらいの形相をしていたらしい。

 ペンを置くと早苗は明らかに安心したようで、

「ウォッシュレットって油断するのよ。うちもそうだからさ」と、またなんか変な優しげな顔をしてきた。

「ほっといてもー、そこそこー自動でー綺麗ー綺麗ー。でー……」言いたくないのか言いたいのかのんびりとした扶美の後を、

「バイオハザードだよね」と早苗が継いだ。

 なかなかいいコンビだと思うし、言いたい事も分かったけれど、

「いや、掃除くらいしなさいよ」としか返す言葉はなかった。

 その答えには何も不自然なところはなかったはずなのに、

「ふあー」だの「さすがだね」だのとまたニヤニヤされている。

「なによ」というと、

「いやいや。さすが正妻の貫禄だよね」と茶化された。

 葛城邦久のことだろう。

 なんというか、男ができないと掃除しないという方程式でも頭の中に根付いているのかなこの二人は。

 それともひょっとしてバレてる?

 という逡巡も数秒もなかったのに、

「あー、だまっちゃったー」と扶美はのんびり言い切った。言い切られた。

「逆よ逆。男ができたから掃除したんじゃなくて、掃除してたから男ができたのよ。ねえ、お二人さん?」

「それは酷いってばあ」などと早苗が嘆くが知った事か。

 触れてはならないところに触れたんだから、それ相応の覚悟はしておきなさい。

「さすがー」とまだ食らいついてくる扶美は無視無視。

「褒めてるんだからツンケンしないでさあ」などと死に損ないの早苗も起き上がってくるので、

「そんなニヤニヤして伝えるお褒めの言葉がありますか」ととどめを刺しておいた。

 さてこれで安心して原稿をと思った矢先に、

「じゃあ、改めて言うけど、凄いよ。お蔭で安心して○コができる」という方向に突っ走られた。

「ナニを真顔で言ってるのよ」と呆れて見せても、

「ナニって、あたしらの間じゃ今更でしょ。男同士でソコでナニしてる本を書いてるんだし」と、私の書きかけの原稿用紙をチョンチョンと突いてくる。

「それにー、そう思っててー、それでもするってー、ポイント高いよねー」と続けた扶美のセリフに乗っかって、

「そうそう。そうだよね」と早苗がはしゃぐ。

 いい加減にして欲しいけど、ここであまり大きな反応をするのは怖い。

 邦久のことは半ば自分からバラしたけど、さすがにその先のプレイまでは知られたくはない。

 そう警戒していたのに、

「安心ー、できるんだよねー」というごく自然な出だしで油断してしまい、

「ウォッシュレットで、ア○ルゴクゴクだよ」なんて続けられて、思わず、

「何言ってるのよ!」と怒鳴ってしまった。

「え?」という早苗の顔には、こっちを揶揄する表情は見受けられない。

 その事に少し安心して、

「何言ってるのって聞いてるの」と押し切ってみることにしたのが失敗だった。

 話題がソレの時に話を聞いてしまったら、

「ウォッシュレットで腸内洗浄……」という話題が表に出てしまうのは当然だった。

「もう、どうしたら……」という私の嘆きに早苗は黙ってくれたが、

「ぎゅっとしてー、水をあててー、それから力をー」という扶美のマイペースっぷりは健在だった。

「やり方を聞いてるんじゃないの!」という嘆きに説得力があったのか、

「加奈ー、ごめんねー」と、何とか止まってくれた。

 けれどまだ話は終わらずに、早苗は真剣な表情で、

「そんなに嫌だったら、言ってこないと」とか言い出した。

「いいよ。ちょっとおどろいただけだから」と、私が言っても、

「ちょっとどころの反応じゃなかったでしょ」と返してきた。

 親友想いの優しい子なんだけどなあ。ちょっと黙ってて欲しい。

「普通にする分には仕方ないわよ」

 ウォッシュレットを後ろで飲んでリバースって、正直なところ便秘の救世主みたいなところもあるしね。

「扶美も美弥も同じ苦しみを味わっているんだから、やめろとは言えないわよ」しかも痔まで併発してるんだし。

 痔の苦しみだけは私も理解ができるから、あくまで普通に、普通に聞こえるように感情を篭めて言い繕った。

「さすが」と調子に乗りそうな声が聞こえたので、

「でも、なんで早苗までやってるの?」と窘めておく。

「いや、だって……、すっきりするし」と申し訳なさそうな声になったので、それはそれで罪悪感を感じてしまい、

「はいはい。もういいから続きしましょ」と助け舟を出してしまった。

「はあい」

「はーいー」

 マッチポンプと思わなくもないけど、これで万事済むんだからみんな幸せでいいよね。

 これで私の尊厳も守られる。

 そこでドアがバンと開けられて、

「綺麗なウォッシュレットっていいよね、ぜんぜん辛くないの。……そういえば、加奈って彼氏とヤる時、後ろも洗浄したりしてる?」という美弥の声が響き渡った。

 恐らく、もうバレるのも時間の問題だろう。

 あっけにとられてすぐに嘘をつけなかった私の負けだ。

 沈黙は肯定となって、私が彼氏とア○ルプレイしている事を公表する事になるのだろう。

 彼氏に逢いに行く前には、毎度毎度チョコポッキーを警戒してしっかりと後ろを洗浄しているところまで。

 ほんと。なんで、私あんな彼氏と付き合っているんだろう。




 はい。酷い話でごめんなさい。

 でも、お尻というお題から一切逃げずに向き合えたと思っています。


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457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/28(水) 23:24:51.61 ID:ezB0PuDi0

もう一声、いや二声お願いします

459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/28(水) 23:31:22.73 ID:JeEK5ZAMo

>>457

お尻

460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/28(水) 23:40:04.64 ID:ezB0PuDi0

>>458-459

把握しました


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