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■第14章 第2節:さりげなく

夜。

店を閉めたあとの静かな時間。


「おつかれさまー!」


ミアが大きく伸びをする。


「今日は多かったね!」


リナが帳簿を閉じる。


「はい、少し増えてます」


クロエが横で確認する。


「ストロングの比率が上昇しています」


シャーロットは瓶を洗い終え、手を拭く。


「明日も作る」


短く言う。


それで一日が終わる。


――


寝る前。


それぞれの時間。


シャーロットはいつも通り、明日の準備を少しだけ確認していた。


机の上。


瓶。

道具。

砂時計。


そして――


「……?」


視線が止まる。


そこに、一本の杖があった。


何も言わずに置かれている。


見慣れた形。


手に馴染む長さ。


少しだけ擦れた握り。


シャーロットは動かない。


数秒。


そのまま見る。


「……」


クロエが後ろから言う。


「入手しました」


いつもの調子。


それだけ。


シャーロットは振り返らない。


「……どこで」


小さく聞く。


クロエが答える。


「町の武器屋」


事実だけ。


ミアの声が少し遠くから聞こえる。


「……あったから」


少しだけ控えめ。


リナも静かに言う。


「不要かもしれませんが」


言葉を選んでいる。


シャーロットは、ゆっくりと手を伸ばす。


杖に触れる。


冷たい感触。


持ち上げる。


重さ。


変わらない。


「……そう」


短く言う。


それだけ。


何も続けない。


クロエが言う。


「性能的には必須ではありません」


淡々と。


シャーロットは頷く。


「うん」


肯定でも否定でもない。


ただ受け取る。


ミアが少しだけ言う。


「……ごめん、勝手に」


シャーロットは首を振る。


「いい」


短く。


それで終わる。


リナが小さく息を吐く。


クロエは何も言わない。


――


そのまま、時間が過ぎる。


会話は続かない。


いつも通り、静かに夜が来る。


それぞれの部屋へ。


――


シャーロットの部屋。


灯りは落ちている。


ベッドの上。


横になる。


いつもと同じ。


だが――


手が、少しだけ動く。


横に置かれていた杖に触れる。


少しだけ引き寄せる。


そのまま、抱える。


強くはない。


軽く。


ただ、手の中にある。


「……」


何も言わない。


目を閉じる。


それだけ。


静かな夜。


何も起きない。


何も変わらない。


ただ一つ。


手の中に、戻ってきたものがある。


それだけで、十分だった。

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