表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/138

■第13章 第2節:偽物の中身

通りを少し外れた場所。

人の少ない路地に入る。


「……ここなら大丈夫かな」


ミアが小さく言う。


リナが頷く。


「人目は少ないです」


クロエはすでにさっきの瓶を手に持っていた。


シャーロットは壁際にしゃがみ込む。


「見る」


短く言う。


それだけで作業に入る。


瓶の蓋を開ける。

中の液体を少しだけ取り出す。


匂いを確認する。


「……薄い」


小さく呟く。


クロエが続ける。


「成分濃度、低」


「抽出不完全」


リナも覗き込む。


「色も違いますね」


わずかに濁っている。


均一ではない。


ミアが言う。


「でも、普通の人なら分からないかも」


正直な感想。


クロエが答える。


「はい」


「外見での判別は困難です」


シャーロットは指先で液体を軽く触る。


魔力を少しだけ流す。


反応を見る。


「……弱い」


はっきりと。


クロエが頷く。


「回復量、通常未満」


「ばらつきあり」


結論は明確だった。


リナが静かに言う。


「完全な偽物ですね」


シャーロットは首を振る。


「違う」


短く否定。


三人が見る。


シャーロットは言う。


「作ろうとしてる」


それだけ。


完全な粗悪品ではない。


真似している。


だが――


届いていない。


クロエが補足する。


「工程再現失敗」


「精度不足」


ミアが言う。


「なんでできないの?」


単純な疑問。


シャーロットは少し考える。


「揃ってないから」


短い答え。


クロエが続ける。


「温度管理なし」


「時間管理不十分」


「魔力調整不安定」


今までの問題と同じ。


リナが頷く。


「だから、ばらつくんですね」


シャーロットはもう一度液体を見る。


「危なくはない」


クロエが同意する。


「最低限の安全性は確保されています」


「致命的な欠陥なし」


ミアが少し安心したように言う。


「じゃあ、大丈夫?」


クロエは少しだけ間を置く。


「……いいえ」


はっきりと。


「問題は別にあります」


リナが言う。


「名前、ですね」


クロエが頷く。


「白花の薬屋と表記されています」


「品質との乖離」


つまり――


名前と中身が一致していない。


シャーロットは瓶を閉じる。


「……そのまま使う人もいる」


小さく言う。


リナが言う。


「効果が弱いと、誤認される可能性がありますね」


クロエが補足する。


「評価低下リスク」


ミアが少し不安そうに言う。


「それって、まずくない?」


シャーロットは立ち上がる。


「見る」


それだけ。


今は判断しない。


クロエが頷く。


「情報収集優先」


リナも同意する。


「広がり方を確認します」


ミアはまだ少しだけ気にしている。


「……でも、なんかやだね」


素直な気持ち。


シャーロットは答えない。


ただ、瓶をポーチに入れる。


証拠として持っていく。


通りへ戻る。


町は変わらず動いている。


人も、物も、噂も。


白花の薬屋の名前も、その中に混ざっている。


本物と偽物。


まだ、大きな差は見えていない。


だが――


このままなら、いずれ混ざる。


シャーロットは歩く。


止まらない。


焦らない。


ただ、状況を見ている。


それで十分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ