表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/9

009 壱章 其の玖 勇者キャメルと新米冒険者達

本作は『異世界転生剣豪伝〜転生しても宮本武蔵でした〜』の大幅改稿に伴う、改稿前エピソードのアーカイブ(旧約)です。


現在メインで更新している最新版とは、描写の密度や展開が異なる箇所がございます。最新の物語、および続きをお読みになりたい方は、以下の【本編】よりお楽しみください。


【本編・最新版はこちら】 https://ncode.syosetu.com/n5417ig/

または【タイトル上の”異世界転生剣豪伝”シリーズから移動】

「ムサシ君だ!」

「ふむ。お主、拙者を知っているでござるか?」

「わたし、キャメルだよ。今日髪が銀色になっちゃったの」

「おお、キャメルでござったか」

「ねぇ、なんでそんな変な言葉で喋ってるの?」

「むむ、変でござるか?」


 キャメルと名乗った5歳の少女はムサシと面識があるようだ。


 マルボとケントがやってくる。

 ラークは早々にマルボに少し粗めの口調で言う。


「おいっ!マルボ!お前ムサシに何教えてんだよっ!」


「やぁ、ラーク。取り敢えずあの子達の回復していいかな?」


 さらりとラークの言葉をかわすマルボ。


「あ、あぁ」


 最優先事項であるため、これ以上何も言えない。


 マルボは回復魔法を使い、冒険者達を回復させた。


 ミノタウロスの討伐確認の為の角だけを剥ぎ取り、屍の多すぎるこの場を少し離れ皆で話し合う。


「それは見たかったなー」


 ムサシの新技の話に目を輝かせてマルボは言う。


「そうだ!マルボ!お前ムサシに何教えてるだよ!」

「別に何も問題無いでしょ。それよりもっと大事な話があるから」

「現実に無い技教えるのはリスクがあるだろ!歴史の認知も!」

「実際、成功したじゃないか」

「だからって…」

「ラークだって見たいでしょ。大地を斬り、海を斬り、空を斬り、そして全てを斬る!とか!」

「それはそうだが…」

「なら良いじゃん。実際強いでしょ」


「マルボさん、あの話をしないと」


 いつも通りのラークとマルボに向かってケントは言う。


「あぁ、そうだったね」


 マルボは思いだし、真剣な顔になる。


「まず、この子は勇者だって」

「はぁ!?」

 ラークは驚き声を出す。

 6人の冒険者達も唖然としている。

 ムサシは話の意味が分からず首を傾げるが、後で教えると言い話を進めた。


「今朝、解放の儀式を行ったら勇者だったらしい」

「うん、それで髪が銀色になっちゃったの」

「力がみなぎってるから、追いかけてきちゃったんでしょ?」

「うん!!」

「あの受付の姉ちゃんそれを早く言っとけよ!」


 ラークが愚痴を呟いている。


 6人の冒険者達は、呆然としている。


「ごめんね。思考が追い付かないと思うけど、ムサシを含め僕達4人は転生者なんだ」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ??」

「て、転生者??」

「ムサシもっ??」


 孤児である6人とキャメルは同じ孤児院で育ち、兄弟のように接してきた。

 その妹分であるキャメルが伝説の勇者だった。

 そして聞いた事はあるものの、噂話程度にしか認識していない転生者という存在が目の前に現れた。

 以前より認識のあったムサシも転生者だという。


「ははは、大人びているなとは思ってたけど」


 1人の冒険者がムサシに言う。


 しかし、空気を読まないムサシの口からさらに驚愕の言葉が発せられた。


「しかし、髪の色まで変わるとは。いったい解放の儀式とはどういうものでござろうか」

「……」

「……」

「……」


 解放の儀式はどういうものか?

 解放の儀式を知らない?

 つまりムサシは解放の儀式を受けていない。

 既にムサシはこの世界で人類最強ではないかと思っているラーク・マルボ・ケントは青ざめた顔をしている。


 ラーク・マルボ・ケントは自分達が選ばれし者と自覚していた。

 転生者であり物語の主人公のような立場。

 自惚れではなく使命感を持って生きていたのである。

 この世界を救うべき存在かもしれないと。

 事実今まで自分達より強い者には会っていなかった。

 ムサシに出会ってから、その自負心は崩れつつある。

 だが、まだギリギリ許容範囲でもあったのだが……


「ア、アマルテアに育てられたから……」

「言うな、言うんじゃねぇ」


 解放の儀式を行えば、確実に今より強くなる。

 これ以上は、期待や希望を通り越してドン引レベル。



「ムサシ君、解放の儀式受けて無いの?」


 ピュアな5歳のキャメルの言葉に、ドキッと3人は驚きムサシの方を見る。

 コンマ数秒の間であるが、3人は途方もない時間を感じた。



「うむ、受けて無いでござる」


「いやいやいや!解放してないのに何でそんなに強いんだよ!!」


 突っ込みで現実に戻ってくるラーク。


 マルボはそこら辺にあった木の枝を使って地面に何かを書きながら「ふふふ、僕の魔法も大した事ないね」と現実逃避をしている。


 ケントは遠くを見ながら「お花畑が見えます」と言っている。


 朝食を取ってからさほど時間は経っていない、午前中の出来事であった。


◆◆◆◆


 ムサシ・ラーク・マルボ・ケント。

 キャメルと6人の少年少女の冒険者達。

 11人は森の中を歩いている。


 ラークのおごりで昼食を一緒にする事にした。

 折角なのでキャメルの誕生日祝いも盛大にしてあげるとなり、キャメルは大喜びである。

 だが、まだ昼食の時間には早いので簡単なクエストをこなしてから、街に戻ろうという行程になった。


 簡単といってもそれはラーク達にとってである、新米冒険者達には受注すら出来ないクエストである。


【オーガ10体の討伐】

 オーガ1体倒せるかどうか・・・


【ミノタウロス1体の討伐】

 達成済みだが実際全滅仕掛けている。


【場所指定:ガーゴイル2体の討伐】

 石の魔物に6人では武器も通らない。


【場所指定:人面樹20体の討伐】

 人面樹は群れで動くので集団戦になり人面樹1体が6人冒険者1人より強いので不可能。


【場所指定:ドライアドへの貢ぎ物】

 ドライアドに接触する前に全滅必須である。


 6人にとっては危険しか無いのだが、ラーク達が全く問題無いというので、勉強になるから一緒に昼まで同行する事にしたのだ。


「ここで止まるんだ」


 ラークが言う。


「全部いるの?」


 マルボがラークに尋ねると


「いや、23体いるな」


 目の前に人面樹がいるようだ。

 6人の冒険者達に緊張が走る。


 人面樹は普段他の木と見分けがつかない。

 トレジャーハンター・ラークの感知スキルで見極めたのだ。


「どうするでござるか?」


 木刀に手をかけムサシは言うが


「まぁ、見てなって」


 ラークがムサシを制止する。


 次の瞬間ラークが走りだし木々を駆け抜けて行った。

 次々に人面樹の急所に短剣を刺して人面樹を狩っていく。

 その動きはまるで踊っているようだった。


「すげぇ!」

「あんな動き見た事ねぇ!」


 瞬く間に人面樹23体の討伐を終えた。


「ふむ。見事でござる」


 ムサシは素直に感心している。


「しかし惜しいでござるな。無駄な動きが無ければもっと速くなるだけに惜しいでござる」

「……」

「……」

「……」

「……」


「ん?拙者変な事を言ったでござるかな?皆黙ってしまったでござるが」

「いや、ムサシさん……それ以上速く動けたら人間じゃないですよ」

「ふむ……」

 ケントの言葉にムサシは沈黙する。


 ラークは自分の速さには自信がある。

 実際足の速さだけならラークはムサシより速い。

 だが、宮本武蔵の言葉には興味がある。


「いや、教えて欲しい。無駄な動きってのは、どういう事なんだ?」


「うむ。蹴るより抜くでござる」

「瞬歩とか縮地ってやつか?」

「おお、知っているでござるか」

「言葉だけしか知らないが」


 他は何を言っているのか分からない。


「踏み込む足に力を入れると、力をためる、蹴る力を入れる、体に力を伝える、と時間差が出来るでござる」


 その場で講釈が始まってしまったが何人かは興味を持ってしまい、そのまま説明が始まってしまった。


「横に素早く動くには、このように二本の足を開き、重心を真ん中に保つでござる。

 ラーク殿の動きはここから右に動く時に左足に力をいれているでござる。

 しかし、右足を上げると重心が崩れて右側に体が倒れて行くでござる。

 この崩れを利用して右に移動するでござる」


 実践するムサシのサイドステップのスピードが異常に速く、他の冒険者達には消えたように見えた。


「なるほど、ムサシの初速はこう言う事か」

「この重心を動かす技術は抜重と言うでござるよ」

「あー前世で聞いた事はあるけど、その時はよく分からなかったなー」


 と言いながらラークは抜重の練習をはじめる。


 この異世界の生物は身体能力が高い。

 当然、人類の身体能力も高く、鍛えればより強くなる。

 そのせいでフィジカルを追う事に意識が向きがちになってしまい、体技の技術というものはあまり発展しない。


 転生者3人以上に6人の冒険者とキャメルは初めて知る洗練された技術に魅了されていた。


「あのさ、取り敢えずお昼までのクエスト終わらせない?」


 マルボ以外の皆が抜重の練習を始めてしまったので、マルボは声をかけた。


「そうだな。後で詳しく教えてくれ」


「そうでござるな。歩きながらでも修練は出来るでござるが、後程にするでござる」


「歩きながらか……」


 ラークは呟きながら歩みはじめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ