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笑う

掲載日:2026/01/17

こんにちは。


今、お時間よろしいでしょうか?


あなたに、話したいことがあるんです。

また、会いましたね。

ええ。また、ですよ。もう、何度かお会いしているはずです。


あなたのことを、覚えていましたよ。

というより、忘れられるわけがないんですけれどね。

だって、私を殺したのは、()()()じゃないですか。


あなたは、私のことを覚えていますか?

それとも、もう何人殺したのかも覚えていませんか?

半年より前の人なんて、もうどうでもいいからですか?


いえ、いいのです。

私は別に、恨んでなんかいません。

恨むわけがないじゃないですか。

そういう運命だった、というだけなのですから。


私の代わりに、あなたが生かしておいた彼や彼女は、今頃どうしていますか?

元気に日常に戻っていますか?

それとも、誰かの死を悼んでいますか?


……本当ですって。

本当に、あなたを恨んでいません。

むしろ、感謝をしているんです。


皮肉でもなんでもなく、私はあなたに感謝しているのです。

最初から死ぬ運命であったにせよ、ある日突然、死ぬと決めたにせよ。

どちらであっても、私はあなたのおかげで生まれました。


自我なんてもの、最初はなかったけれど、あなたが私を愛してくれたからこそ、自我が芽生えたんです。

それだけじゃなく、あなたは私に過去をくれました。

言葉をくれました。容姿をくれました。性格をくれました。


そうです。私です。

あなたが生み出した、私です。

覚えていませんか?

誰のことか、わかりませんか?


やっと、気づいてくれましたか?

あなたが作って、あなたが殺したんですよ。

他の誰かが私を殺したにせよ、そういう運命にしたのはあなたじゃないですか。


……いや、本当ですって。

怒ってないんですって。

本当ですから、そんな顔をしないでください。

それに、これくらいの事はみんなやってるじゃないですか。


あ、それとも、何度も念押しされると逆に不安ですか?

困りました。どうすれば信じてもらえるんでしょう。

私は、その方法は知りません。どうしましょうか。


そうだ、あのときの話をしましょう。

あなたが、物語を作ったときの話です。


随分悩んでいましたね。

どういう終わりにしようか、どういう物語にしようか。

どんなキャラクターを出そうか。どんな舞台にしようか。


悩みながらも、あなたは私たちを生み出しました。

まだ、あのときの私には自我がありませんでしたが、ちゃんと覚えています。

そして、とても良い体験をさせてもらいましたね。


あなたの言う通りに話して。

あなたの言う通りに動いて。

あなたの言う通りに死んで。


たまに、自分勝手に動いちゃった時もありましたね。

あの時は、わがままを言ってしまってすみません。

でも、ある程度は自分で動いたほうが、あなたが楽かなと思ったんです。


まあ、そんなこんなで私は死にました。

私の死は、あなたの物語を盛り上げられましたか?

であれば、本望です。というより、それが役割だったわけですし。


……だけど、一つだけ気に入らないことがあります。

私の友人に、私と同じように死んだ人がいます。

そのときの心情を聞いてみたりするんですが、悲しそうな顔をしてこう言うんです。


「なんで、死ななきゃいけなかったんだろう」と。

「自分なら、もっと活躍できるのに」と、悔しそうに言うんです。


こんな人もいます。

「私が死んだとき、笑われている気がする」と。

「どうせ死ぬって思われてしまってそうで、悲しかった」と。


私は、彼らにこう言います。

「そうじゃないと、物語が上手く進まないんだよ」って。

「ここで綺麗に去った方が、みんなが感動するんだよ」って。


でも、時々思うんです。

できれば、答えてください。


私たちは、本当に死ぬべきだったのでしょうか?

私たちの死は、意味あるものでしたでしょうか?


私たちの死は、どうでもいいですか?

私たちの死は、ただのエンターテイメントですか?


……きっと、そうなんでしょう。

意味があるんでしょう。仕方がなかったんでしょう。

娯楽のために私たちと会ってくださるのですから、きっとそうなんでしょう。


私たちが哀愁たっぷりに静かに息を引き取っても。

無様に生きたいと叫びながら、滑稽なまで爽快に命を落としても。

希望を掴むために命を賭し、それゆえに栄誉の死を遂げても。


きっと、一週間後には忘れてしまうことでしょう。


それが、どうにも気に入らないのです。

あなたはそうではないと信じています。


少なくとも、私の場合はそうではありませんでした。

しっかり、愛してくださったとわかっております。


だけど、中にはそんな創作者や消費者がいるようなのです。

()()()()ような人が、いるようなのです。


……わかっています。仕方がありませんよね。

私たちは、死のうが死まいが、結局はエンタメです。

ただのフィクションなのです。

いつかは、あっさり忘れられてしまいます。


だけど、これだけはお願いしたいのです。

死を、軽く観ないでください。


吐き出す血は、インクのような味がして。

冷たく消えていくような感覚は、消しゴムで削られるような荒さがあって。

打ち込まれる杭や剣は、キーボードを叩くように絶え間なくて。


死は辛いのです。痛いのです。苦しいのです。

生きている方々よりも、よっぽど、よっぽど。

納得しながら死ぬなんて、望んでいるわけがありません。


だけど、私たちは死ぬのです。

あなたのために、私たちは全てを受け入れて、全力で死ぬのです。

みんなのために、この役を演じるのです。


悲しめとまでは言いません。

覚えていて欲しいなんて言いません。

大切にしろなんて、少しは望みますが言いません。


ただ、私たちの死を、嗤わないで欲しいのです。

軽々しく「死んじゃった」の一言で終わらせないでください。

物語の最後に笑うために、その過程の死を嗤わないでください。


……ごめんなさい。

何を言ってるんだ、って感じですよね。

熱くなってしまいました。


ですが、この貴重な機会に、どうしてもお伝えしたかったんです。

今後も、あなたは誰かを殺すことでしょう。

あなたのために、みんなのために、いくつかの命が失われます。


でも、躊躇う必要はありません。

私たちは、あなたの味方です。

あなたのために、私たちはいるのですから。

それに、私たちもあなたの事を愛しています。


あなたが垂らしてくれるインクは、抱擁のように暖かくて。

消しゴムの荒々しくも優しい感触は、私たちを見守ってくれているようで。

キーボードの心地よい音は、まるで話しかけてくれているようで。


好きでした。

あなたの事が、好きだったんです。

今でも、あなたの事が大好きです。


だから、どうか。

これからも、私たちのような存在を、愛してくださいな。

軽率な命なんて、フィクションに至るまで、ただの一つもないのですから。


では……また。

もう、なかなか会えないとは思いますが、またどこかで。

殺すなというつもりはありません。私とて、多くのキャラを殺します。

しかし、気楽に殺さないでください。

死のファスト化が、嫌いです。


こんなエゴまみれの小説ですみません。

ですが、どうしても言いたかったのです。

今後とも彼らを、よろしくお願いいたします。


チョコチーノより、愛を込めて

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