精霊みたいな人
ダンジョンを進んでいくと、耳が尖っている女性が多くの魔物と戦っている所を目撃した。薄い黄緑色の髪をしていて、蒼い瞳。あとすっごくおおきなおっp……胸。
……色白で、大きく尖った耳から精霊であるかのように感じられる。
「加勢しますよ!」
「ぁ、ありが……とう……」
……僕は、彼女が苦戦しているかなと思い、つい加勢してしまった。
勿論この魔物達も風属性であるため、僕が戦えば吹っ飛ばされる。
「あ〜れ〜っ!?」
「……!?」
:即落ち二コマ
:草
……勿論、吹っ飛ばされた。……吹っ飛ばされて、足から天井に刺さっちゃった。助けてください。
動けないし頭に血が上っちゃう……。
「何してんのユウ……」
「ごめん……助けて〜……」
:どうやったらそう刺さるねん
:足が天井に埋まるってなんだよ……。
本当に何でこう刺さるんだろうか……。
普通頭でしょ……頭も嫌だけどね!?
女性は助けに来たにも関わらず天井に埋まった僕に苦笑していた。
「あ……あはは……。そ、その……もう片付きましたよ……? えっと……ありがとう、ございますね……?」
「ボク何もしてないけどね〜……。あと……助けてくれないかな〜……?」
女性は頭から落ちて怪我しないようにか、優しく抱きしめながら引っこ抜いてくれた。
「……それでは自己紹介をしますね。……わたくしはカズハ。風属性のエルフで、能力は風雨烈々です」
女性の名前はカズハと言うようだ。
……あ、エルフについても説明しておこうか。……間に合ってる? 聞けってば。
エルフとは、精霊に近しい存在。
基本長命で耳が尖っている。
日本以外に生息するエルフは小さくいたずら好きだというが、日本のエルフは人の大きさをしていて、顔が美しく、ナイスバディをしている事が多いらしい。
……ちなみに日本のエルフだけは人間との交配が可能だとか。……なら人間では?
「ボクはユウです……。光属性で、能力は……ない、です」
「カヤです。火属性で能力は支離滅裂」
「スズだよ! 雷属性で能力は毒物操作!」
カズハさんは僕らが気になったのか、架夜と鈴那さんをじっと見た後、口を開けた。
「……パーティを組んでいるんですか? そ、その……ユウ……さん? を見ているとなんだか心配になってしまって……。その、よければわたくしも入れてくれると嬉しいんですけど……」
「大歓迎だよ、二人もいいよね?」
「うん、パーティは多ければ多い程いいからね」
「あっ……うん……」
:エルフのお姉さんが仲間になった!
:よっしゃぁ!
カズハさんが仲間に加わった。
……しかし、心配されるような行動してるのかな僕。
「……えーっと、じゃあ進もっか」
◇
ボス部屋まで来てしまった。
「ここのボスは無属性らしいよ。だからユウも飛ばされたりしない……はず」
「なんでボスだけ風属性じゃないの……?」
と、とにかく、ボスと戦おう。
……ボス部屋に入ると、凄く大きな、白くてふわふわした兎さんがいた。
耳らしき物はあるのに、目は見つからない。
毛がとても長いんだろうなぁ……。
「あらかわいい」
「いや、ちょっと大きすぎるって……」
……ボスあんななのに大きすぎてちょっと怖い。
ま、まぁ戦うしかないんだけども。
……僕が銃を撃つと、簡単に怯んだ。
「……あれ? 意外とよわよわ〜? こんなんで怯んじゃって、耐久力すかすか〜」
「……え、えっと……?」
「……言い忘れてたけどユウは敵を煽るからね」
:カズハさん引いてて草
:苦笑いしてて草
カズハさんがドン引きしていたような気がしたが、僕はそんな事気にせず煽っていた。
……というか何で思ってもないことを声に出すんだろうかこの口は……。
「そんな無駄に大きくなって〜? なまっちょろくなるだけだよ〜? で〜ぶ、のろま、ヤラシイ事ずっと考えてるへんた〜い」
:おかしいな俺の事かも……
:あっ……うぐ……
……おかしいな。なんで僕はブーメランを投げたんだろうか……? 自分も十分変態やろがい。
……あ、一応言っておくと、兎は性欲の塊らしいから言ったんだろうね。ヤラしいことずっと考えてる変態だよ。
「ざぁ〜k
……こっ!?」
「わぁ突進してる」
:わ か ら せ
:力強すぎだよ……
ボスは煽り耐性が無かったのか、物凄いパワーで突進してきた。
壁に当たりボキッと逝った音がして、僕は呆気にとられていた。
すぐに胸にとてつもない痛みが来る。
「……げほっ、……ぁ」
痰のような物が出たかと思えば、赤くドロドロとしていた。想像以上にダメージが深刻だったみたい……。
「……ぇっほ、げほっ……ごほっ……」
更に同じものが出てくる。
見るだけで凄く血の気が引いてくる。
「と、……吐血!? ユウ大丈夫!?」
「……ぁ、だめそう……ぇっほ、ごほ……」
:とてもぐろい
:ひっ……
咳が止まらない。
胸も、骨でも折れたかのように痛い。
「早く治療しないと……! リカバリー!」
カズハさんがリカバリーという魔法を使って回復させてくれた。
リカバリーとは、ヒールよりも治す力が強い代わりに、治した時の後遺症が残りやすい回復魔法。
リカバリーとヒールの一番の違いとして、死者でも回復させてしまうというところがある。……といっても、蘇りはしない。
……あくまで神経以外の肉体を修復するだけだ。ヒールは脳さえ残っていれば神経を再生させることができるが、リカバリーはたとえその部分以外の神経が全て残っていようがその部分の神経の再生は不可能。
……つまり、リカバリーを使った際、痛みは残るのだ。ヒールはすぐ痛くなくなるけど……。でも、回復力はヒールよりも格段に良いため、使っている人は多い。
また、リカバリーはヒールより効率が悪い。
ヒールは消費エネルギー分回復してくれるが、リカバリーは消費エネルギー分より回復量がちょっと少ない。
えーっと、分かりやすく説明……。
例えると、1000m進むとする。
ヒールは歩いて、リカバリーは走る、で考えよう。
ヒールは時間がかかるけど、疲れにくい。
リカバリーは時間は短いけど、疲れやすい。
そういう感じに思ってくれればいい。
……歩いても疲れる? それな。
長文失礼いたしました。
「……これで治ったとは思いますが……安静にするんですよ……?」
「は〜い……」
すみませんでしたカズハさん。気をつけます。
「あれ待ってなんかこっち向かっ……」
「ちょっとぉぉぉぉ……!?」
:台無し
:オイ
ごめんなさいカズハさん。また鳴ってはいけないような音鳴りました……。
「は、はぁ……。り、リカバリー……。アレをどうにかしないといけないと……」
カズハさんは面倒臭そうな顔をしながらも、ボスに向かって歩き出す。
「……凩!」
カズハさんが放った魔法がボスを包み込み、傷だらけにしていた。
……しかし、ヨーロッパの言語と名前に関係が無い魔法は珍しい。
何でも、明治維新の時代に大抵の魔法はヨーロッパの言語で統一されたのだとか。規制されたらしくてね。
……でもまぁ、エルフだしなぁ。
「五月雨!」
カズハさんは更に魔法を放ち、ボスの真上にまるでゲリラのような雨を振らせ、もっと傷だらけにしていた。
ボスは少しの間のたうち回ったが、エネルギーが尽きたかのように倒れた。
「……こんなものですかね」
「わ、わぁお……凄……」
「……これ私ら要らなくない……?」
:一瞬で片付いた……
:つよい
「……わ、わたくしを褒めても何にも出ませんけど……?」
「あはは……、褒められることすらないボクよりマシでしょ……」
「そ、そんな事は……な、ない……ですよね……?」
:あー……うん
:可哀想
僕は能力が不明なせいか、家族以外に褒められることは少ない。あっても、はいはい、すごいすごーいくらいのものだ。褒められるだけマシだろう。
「……え、えーっと、ボスも倒したし、この辺で配信はおしまい! グッバイ!」
◇
カズハさんの家はカヤ達よりもボクの家に近いらしく、帰るまで一緒に行くこととなった。
……カズハさんをよく見ると、涙目になっていた。
「……? どうしたんですかカズハさん?」
「……ちょっと、ね。昔……の仲間を思い出してね。……別に何でもないよ。……《《夢音》》。2人のことは、大事にするんだよ?」
「あ、はい……」
……カズハさんの昔の仲間はもう居ない……か。
……エルフの話はやっぱり悲しいものだ。
……あれ?
カズハさんに本名は言っていないはずなのだけど、なぜ知っているのだろうか……?
知り合ったこともないだろうし……。
「……な、何で名前を……」
「……ぁ、そ、そういえば連絡先を交換しないかな? あの二人と交換し忘れていたからユウさんと交換しておこうかなと……」
「……だ、大丈夫……ですけど……名前……」
この人……じゃないエルフ、今話を逸らしたな?
何故名前知ってるんですか……?
「……うん。何かあったら連絡してね。何も無くても連絡してきていいからね……いつも暇してるからね」
「あ、はい……いや名前……」
「……」
カズハさん、無視しないでください……。
……あ、もう家着いた。
「……あ、家ここです」
「そう……。じゃあ、バイバイ?」
……家に入ると、妹……
ではなく、祖母が出迎えてくれた。
「なんでいるの……!?」
カズハ(和葉) 女 167cm F 1940歳頃
黄緑髪碧眼 属性:風
現代人と割と話ができるエルフ。
攻撃性能、防御力共に高い
能力:風雨烈々 A
能力詳細:放つ雨風の強さを超強化できる
魔法:微風、颯
飆、凩
叢雨、時雨、五月雨、リカバリー