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遠くへ
目をゆっくり開くと、余韻の中に居た。顔をつつむ冷たい空気をたっぷり吸いこんで、冷たい世界を布団で隠す。世界がボワッと包まれて、僕は意識を放っておきたい気持ちになった。
はるか遠く。何年も眠っていた記憶があふれ出し、辺りを染めていく。そこには古い新鮮さがあった。
明日がどうなるか分からない不安と、その明日への期待。僕らが過ごした時間が、何かに刻まれながら西の空へ消えていく。僕は、遠い昔に刻まれた、その何かを見た。遠い昔の夕方を、いま見送るような感覚であった。
夕方を見送った僕は、遠い昔の夜にいるのだろう
確かにその感覚である
余韻に浸った僕に生じる、不思議な情緒を分析してみると、こういう風だった。
布団をぱたりと退かすと、惰性で立ち上がる自分に気づいた。僕はそのとき大人の惰性がつくづく嫌になったのであった。