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余風
山を巻く、平日の午後には誰も通らないようなアスファルトの道が好きだ。途中 道の片側に一本送電塔が立っていて、身長ぐらいの高さの機械がならんでいる。送電塔と機械を、ひし形網の鉄フェンスが四角くかこって、その隣には、草と枯れ葉の混じったスペースがある。
はるか昔の小さい冬晴れの午後に、このスペースから鉄塔のてっぺんを覗くと、真っ青で途方もない空に落っこちてしまうんじゃないかと気づいた。夕方のグラデーションが出て少し暗くなるまで、ちらちら鉄塔のてっぺんを見ながらそこで過ごした。その深い余韻が、家に帰って炬燵に入ってお風呂に入って、とにかく僕の意識に刻まれて、周りの人の知らない僕だけの世界、そして僕の知ることのできない他の人たちだけの世界に触れっぱなしになったような気がした。
僕は冬の澄んだ空気が好きだ。いっぱい吸い込んで、顔をやさしく包んで、それだけですっきりとして、あの時の余韻に浸ることができる