7:異世界とトイレ事情。
エアリスさんたちが近くの町まで送り届けてくれるというので、前のめりでお願いした。
「あっ、その前にちょっとおし…………」
おおよそイケメンであろう人の前で『おしっこ』と言いかけて、慌てて口を噤んだ。
トイレって言ったらトイレ消えるしな。小用でいいのかな? それはそれでリアル……。
「ちょっとおし?」
「あ、ちょっと小用に……」
「なんだ小便か!」
イケメンの隣にいた、ゴツいヒゲのおっさんが、大きな声で『小便』と言いやがった。しかも、ちょっと先にある草むらを指差して、あそこがいいとか言いやがった。しばくぞこら!
「これトイレなんで大丈夫です!」
後ろにあった建物をベチンベチンと叩いて、ふと気づく。もしや文章の中にあると消えない? 単語だけ言うと、出たり消えたりする?
「トイレ」
「「消えた!?」」
「トイレ」
「「出た!?」」
周りが騒がしいけど、とりあえずトイレに入って用をたした。
スッキリスッキリーっとトイレから出たら、問い詰められた。
「――――ということは、防衛可能な建物で、一番無防備になる状態を回避できる?」
「え? この世界のトイレ事情ってそんなに危険と隣り合わせなんですか!?」
ギルドというところでは、冒険者が様々な依頼を請け負う。そして、様々な場所で冒険をしているらしい。なにそれ、めっちゃ異世界っぽいじゃん! と興奮したのは内緒。
そして、冒険者たちの最大の問題がおトイレ事情。
「騎士団は男ばかりだし、そこまではないが、冒険者はなぁ」
デリカシー無しおじさんが顎ヒゲをモシャモシャ撫でながら、男女混合チームとかなぁ、と渋い顔をしていた。
「ですが、騎士団でもかなり欲しい能力ではありますね」
「そうか?」
「ゼファー、貴方は気にしていないようですが……人のを堂々と覗き過ぎですからね? ブツの大きさとか確認しないでくださいよ」
「……」
美麗イケメン隊長、そういうのわりと気にするのか。
「……あのぉ、道中でトイレに行きたくなったら、言ってください。出しますんで」
「「っ! 本当か!?」」
半数以上の騎士さんが反応した。
おや? わりとみんな野◯◯的なのは嫌なのね?
「っ、今お借りしてもよろしいでしょうか?」
おずおずと申し出てきたのは、皆より少し若く見える騎士さん。
どうぞどうぞとトイレに案内すると、どうやって使うのかと聞かれた。
「え?」
聞けばこの世界は和式風のボットンちゃん。まじかよ。いつの時代だよ。いや、たぶん元の世界にもまだあるけども……。
青年騎士とコソコソと話した。
おしっこなら便座を上げて立ションでもいいし、便座そのままで座ってでもいい。
「なるほど」
「大きい方なら……」
「いや、そこは座ってというのは理解できますからっ!」
「あはは! だよねっ!」
トイレットペーパーも便器の中に流していいこと、流すのはこのレバーだと説明すると、とても驚かれた。どこに流れていくのかと。
すまんが、私も知らん。
トイレの説明をしつつ、こっそり便座裏に尿跳ねがないか確認しておいた。さっき使った私の尊厳のためにっ!