49:わからないことは、分からない。
物凄く気まずい空気の中、騎士団長の執務室を出て、廊下を二人で無言で歩く。
何か話さなきゃなと思うけど、何も言えないままでエアリスくんの執務室についてしまった。
「よぉ、遅かったな。で、エアリスん家に行くんだろ?」
「あー、ゼファーさんの家に泊めていただいてもいいでしょうか? なるべくお手は煩わせませんので」
「構わねぇが、そんなに畏まられると気持ちわりぃな……」
酷い。私だって時には、真面目にお願いや挨拶できるんですけどね?
「お前、それでいいの?」
ゼファーさんがエアリスくんにそう聞いたら、エアリスくんはジッと私の方を見つめて、また悲しそうな顔。そして、ゼファーさんに頼むと一言だけ言っていた。
どうしても気になってるんだけど、なんでエアリスくんと私をセットにしたがるのかな? いやまあ、嫌いじゃないし、いい子だし、好きではあるけども。なんというか友だちって感じなんだよね。
出会って数日、またなんにも知らない相手と言ってもいいのに、なんでこんなに懐かれたんだろ?
と、まぁ、考えても分からないので、問題は先送りとします。
「もうちょいで帰るが、なんかしときたいことはあるか?」
ゼファーさんに聞かれて、準備も何もしようがないなと思った。この世界のことも未だに何も知らないのだ。そもそも元手も何も持ち合わせてはいない。
だからこそ、何が必要かも分からないと伝えると、ゼファーさんが手配してくれる事になった。
「んじゃ、家に戻って、使用人に買いに行かせるか」
「お手数おかけします」
「いいよ」
なんとなく気まずい空気のまま、就業時間までエアリスくんの執務室でお茶を飲んだりして過ごした。
ゼファーさんの家の馬車に乗り込み、騎士団舎を後にした。エアリスくんはというと、残業していくからということで、執務室で別れた。
「で、お前たちどうなってんの?」
馬車の座席に座ってすぐ、ゼファーさんが前のめりで聞いてきた。
「どうって?」
「エアリスの気持ちには気づいたんだろ?」
「まぁ……はい」
正直なところ、よくわからない、というのが本音。なんであんなに好意的なんだろう? 結構酷い扱いしてた気がするけども。
「なにが彼の琴線に触れたんでしょうね?」
「さあな。ただ、あいつはたぶん本気だぜ?」
「ぬぅん?」
いやほんと分からない。
分からないことは考えない。いつだってそのスタンスで行こうと思う。
先ずは、ゼファーさんの奥さんにお邪魔しますの挨拶をちゃんとすることを考えないとね。





