43:記載に嘘はない。
入口すぐの左手側に階段があり、そこを登っていく。
二階はロフトのような感じ――吹き抜けって言うんだっけ?――だった。
登るよう言われた階段は、手すりがあるだけのものなので、一階の様子が丸見え。
チラチラとこちらを見て、ヒソヒソと小さな声で囁いている。明らかに何か噂をしてる。
騎士団と冒険者、仲悪すぎない? こんなに警戒されるとか聞いてないよ。
このままの勢いで二階に行って大丈夫なのかと、さすがの私もチキンになるってもんだ。
そして二階に到着すると、やっぱり同じような空気ではあった。そも、二階から一階が見えてるしね。
「エアリス様、本日はどういった御用で?」
ロングの白髪に、鼻下にハの字と顎ピョロヒゲのおじいちゃんがいた。なんというか、印籠を出しそうな好々爺感。
一番奥にある偉そうな席に座ってるから、たぶんギルド長的な人だろうと思っていたら、ビンゴ。
「ルコ」
スッと椅子を勧められたので座ろうとしたら、ちょっとお高めの料理屋さんみたいに、イスを引かれて、座るときにはスッと動かされた。
場違い感が凄いが、エアリスくんは貴族だから、基本的にこうするのかもしれない。会議場ではなかった気もするが。
エアリスくんがギルド長と声をかけつつ書類を二枚渡し、説明を始めた。
どうやら一枚は、騎士団が私を保護観察対象にしているというものらしい。
残り一枚は、登録するための書類。
「エアリス様、記載に嘘は――――」
「ない」
「…………二十八?」
どうしてこうも、年齢を連呼されるんだか。
そんなに私って童顔だったっけな? いや、普通に普通だよ。アジア系、恐るべし。
「ジローと同じ国の出身だそうだ」
「なんと! そういう種族なのですな」
いやまぁ、そうなんだけどね。他人に言われるとなんとなく、攻撃力が高いなと思った。
登録自体はすぐに終わった。
何も書かれていないクレジットカードみたいなものを渡されて、説明を受ける。
魔力を流すと、カード面に文字が浮かび上がる仕様らしい。
「ほむん? ……ほむん」
流してみろと言われ、流し方など知らんと堂々と宣言した。
私が流せるのはトイレの水くらいだ。
エアリスくんが慌てて説明してくれた内容によると、体中に張り巡らされた血管をイメージするといいかもしれないとのことだった。そして身体の中心から指先に移動していくような――――。
「うぉっ、出た出たっ! 出たよ!」
なんか便秘解消したくらいの勢いで喜んでしまった。カード面に浮き上がった文字に喜んだだけだからねと、謎の言い訳をしていたら、エアリスくんが机に突っ伏してカタカタと震え出した。
大丈夫かね? 何かの病気かね?





