41:長い付き合いになる。
シニッカさんにまた来るねと挨拶して、パン屋さんから出てすぐにある、朝市や夜市が開かれるという大きな噴水のある広場にきた。
お昼に屋台はほとんど出ておらず、噴水の周りで人々が思い思いに過ごしているようだった。
ある人はジャグリング、ある人は昼寝、ある人は串焼きにかぶりついている。
「あそこに座って食べましょうか」
「うん」
噴水の縁は幅が結構広いので、ベンチとしての役割も持たせて作られているっぽい。
座ろうとしたら、エアリスくんがサッとハンカチを敷いてくれた。この上に座れという。なんか高そうなシルクチックだけど? ってか、すごく貴族っぽい。いや、貴族だけどさ。
「エアリスくんって貴族なんだよね?」
「……誰かから聞きましたか」
「ん? うん。エアリスくんとゼファーさんが貴族だってくらいしか知らないけど。こういう外で食べ歩きとかするんだなぁって」
個人的なイメージは、オシャンティなお店でオシャンティに小指立てて紅茶とか飲んだり、なんか大きいお皿にちょこーっと乗せられた、よくわからない名前の料理を食べているイメージだ。
「あははははは! なんですかそれ!」
真面目に説明したのに、爆笑された。
貴族といっても色々いて、騎士団には一代限りの男爵位を持っている人が多いのだとか。だからほとんど平民と変わらない生活を続けているのだとか。
「へぇ。ゼファーさんも?」
「アレは伯爵です」
「はくしゃく……なんか偉いやつじゃない?」
「んー。普通ですよ」
普通ってどう普通なんだ。ゼファーさん騎士団長とかにちょいちょいタメ口だったじゃん。普通な人が王子様とかにタメ口しなくない!?
「あっ! 私もめちゃくちゃタメ口だった!」
「ルコはそのままでいてください」
「エアリスくんは私に敬語気味だよね。なんで?」
シチューパンにガブッと齧り付きつつ聞いてみた。時々タメ口だけど、いまみたいな時は敬語になる。
「えっと……年上でしたので」
「…………ふむ。却下」
それだけで敬語ってなんか悲しい。
これから長い付き合いになるんだろうし。こう、もうちょっと、仲良くなりたいというか、距離を縮めたい。
「長い付き合い……」
エアリスくんがサンドイッチを食べようとしていたけど、ピタリと止まった。そしてジッとこちらを見てくるが、何だ? 口の横についちゃったシチューは拭ったぞ。白いシチューと勘違いしてたから、食べた瞬間びっくりしたのがバレたか?
「長く付き合ってくださるんですか?」
「……ん? うん? だって、無期限の保護観察対象なんでしょ?」
「あ……はい。そっち………………そうです、ね……」
妙に歯切れの悪い返事をされた。そして黙々とサンドイッチを食べ始めたので、私もシチューパンの続きを食べた。





