4:盗賊 vs 水洗トイレ
「女っ! 出てこいや!」
「つかよー、この建物なんだよ? 今までなかったよな?」
「オラァァァ! 出てこい!」
ガンガンとドアを叩かれ、何やらトイレの外壁を剣で攻撃されているような音まで聞こえてきた。
ドアノブが壊されたら終わりだと思って、必死にドアノブを握りしめていた。
「うげっ、硬ってぇ」
ガギョォォンと聞こえるはずのない音。
剣でプラスチック的な外壁を叩いてもそんな音しないよね? と思っていたら、ドアノブを握っていた手に違和感。
「――――え?」
今まで丸ノブだったのに、レバー型のノブになっている。
ドアも灰色というか何色と言っていいのか、みたいなプラスチック的なドアだったのに、白ペンキを塗られたような木製のドアに。
もしや別のトイレに転移したとか? と考えていたけれど、相変わらずドアノブはガチャガチャされてるし、怒鳴り声も聞こえる。
「おい、建物がレベルアップしたぞ! 硬ぇ石だ、気をつけろ!」
――――レベルアップ?
ちらりと後ろを向くと、ちょっと古めの洋式トイレになっていた。
「いや、なんでよ!」
誰か説明してほしいけど、説明してくれる相手はいないし、盗賊っぽい人しかいない。
ドア、木製なんだよね。剣相手に勝てる気がしないんだけど、なんでドアには剣で攻撃しないのかな?
激しめのノックとドアノブガチャガチャしかされないから、これドアノブ守らなくてもいいかも、とドアノブから手を離して洋式トイレに座ってみた。
普通のトイレだね。
座り心地も普通。ただの、トイレ。
でも洋式だからか、ちょっとだけホッとする。
「オラァァァ、おんなぁぁ! 出てこいやぁ!」
そんな風に言われて、出ていく人っているんだろうか?
さてこれからどうしようかと悩んでいた。トイレもしたいが、流石にいまする気にはなれないから我慢。
ガタガタ、ガチャガチャを聴きながら、とりあえず腹ごしらえで、のど飴パクリ。
「まずい! ヤツらが来てるぞ!」
「お前ら、散れ!」
盗賊たちが何やら、別の理由から騒ぎ出して、しばらくすると、シーンとなって物音ひとつしなくなった。
――――外が見えないのって、地味に辛い。





