31:パンチラちゃん。
エアリスくんに騎士団内を軽く案内してもらいつつ、隊長会議たるものを開催する場所に向かっていた。
「そういえば、女の人も騎士さんたちと同じ部署みたいなとこで働いてはいるんだね?」
ええと……あれ? 衝撃的だったのに、名前をもう忘れちゃった。金髪の可愛らしい女の人。名前なんだったっけ? と首を傾げていたら、エアリスくんが妙に気だるそうな顔で頷いた。
「パンッティラですね」
「そうそう! パンチラさん!」
「パ………………発音がその……ちょっと…………いえ、あの…………フグッ」
エアリスくんが肩を震わせながら、何かを伝えようとしてきてるけど、何が言いたいのか分からない。
「彼女は伝達とか、そういう系の事務的な仕事をしてるの?」
「…………っ……はい」
ふーふーと謎の深呼吸をしているエアリスくんいわく、来客の応対や各隊長たちへの連絡として、騎士団長室所属なのだとか。
あの『貴方しか見えていません』ムーブからも、てっきりエアリスくんの部下かなにかだと思っていた。
「しかし、なんでパンチラなんてエロい名前を付けたかね?」
「ブフッ! エロ…………いえ、その、発音はパンッティラです」
「ん? うん、パンチラちゃんだよね?」
「違…………あはははは!」
エアリスくんがお腹を抱えて笑いだしてしまった。何が面白かったのか、ずっとカタカタ震えている。
通りがかった騎士さんたちが、エアリスくんが笑っていると驚いていたけど、いや本当になんでそんなに笑ってるのよ。
「るっ、ルコ…………パ…………ブフッ」
「え?」
「パ……パンッ………………パンッティラあははは! パンッティラは名字です」
「え……家族全員がパンチラなの!?」
「っんはははははは!」
エアリスくんが床に崩れ落ちた。
どうしたらいいのよこれ。騎士さんたちが奇天烈なものを見る目で、なぜか私を見てくる。普通その目を向けるのはエアリスくんにでしょ!?
「お前ら、何騒いで……何が起こってんの?」
ふらりと現れたゼファーさん。デリカシー無しだし顎ヒゲだけど、初めて本気で『助けて、ゼファーさん!』と願った。
話していたら崩れ落ちたと説明すると、会話の内容を聞いたゼファーさんまで、爆笑しだしてしまった。
「パ、パンチラ! ブハハハハ! パンッティラ…………のパンチラ! やべぇ、笑い死ぬっ!」
「なんなんですか……」
発音が違うことはなんとなく分かったけど、どう聞いてもパンチラなんだけど。
「あの女……ブフッ…………いや、マジでパンチラしてくんだようはははははは!」
――――はい?
ちょっとまって、『パンチラしてくる女』って何そのパワーワード。





