201:普通の幸せ。
お腹いっぱいになったと喜んでいたので、食後のデザートは入るか聞いたら、デザートまでも作ったのかと驚かれた。
「ふふふふ。ルコちゃんは有能なんです」
ある部分だけには! と付け加えて二人でクスクスと笑った。そうしているうちに給仕さんがタルトを持ってきてくれたのだけど、エアリスくんがタルトを見てきょとんとしていた。
「これ……どこかで買ったのでは?」
「いや、一から作った……あ、ビスケット作ったのはキッチンメイドさんだけど」
「ビスケット?」
ビスケットを砕いてなんやかんやしてタルト生地にしたと伝えると、エアリスくんがパカーンと口を開けたままで固まってしまった。
「ルコの世界は、みんなこんなにも手料理ができるのですか? それとも、ルコはパティシエの経験が?」
「んんんん? ご飯はわりとみんな作るからねぇ。ただ、人によるけど。デザート系はもっと人による!」
私は平均よりちょっと手を出すかな? というくらい。あと、味付けとかグラムとかまったく覚えないから、毎回味が違うんだよね。
「そんなことより、食べよ!」
「ふふっ。はい」
エアリスくんがタルトにフォークを入れ、パクリと食べるところを観察。もぐもぐと咀嚼している姿はなんだか大型犬のようでほんわかした。
「ルコ…………」
「へい?」
妙に言葉を溜めるエアリスくん。もしや美味しくなかったとか? いや、でも失敗のしようがない奴だもんなぁ。
「売りましょう。これ、売れます」
「あはははは!」
真面目な顔して何を言うのかと思ったら、まさかのベタ褒めが返ってきた。
「なぜ笑うのですか」
「んふふ。好きな人に手料理食べてもらえて、褒めてもらえて、なんか幸せだなぁって」
あんまり人に手料理って振る舞うことなかったんだよね。友だちの家にお泊りで一緒にご飯作るとかは、ままあるけど。
元の世界だったら、いつか結婚したり、旦那さんにご飯作ったり、子どものお弁当とかを作ったり、そういう普通のことを体験できたかもしれない。なんてことをふんわりと思ったりもしたけども、ここでも出来るんだよね。
どう生きるかってのは、場所はあまり関係ないんだよね。誰と生きるか、っていうのはとても大切だと思う。
「私ね、幸せだよ」
「っ、何かありましたか?」
「ううん。すっごく幸せだなぁって」
ゆっくりゆっくり、この世界に馴染めて来てるんだろうなぁ。





