20:イケメンとテント。
テント自体は元の世界のものほどではないけれど、わりと密閉性も通気性もあり、オイルランプのようなものでの光源もあった。ただ、中は思ったよりも狭かった。
ただ寝るための場所だからだろうけど。
そこにイケメンと二人きり。しかも密着して。
「ゼファーが反対しているのは、バレていると思うのですが…………」
なぜなのか、説明してくれた。
端的に言えば、エアリスくんが王族の一員だから。
一夜の間違いが起きたら、どうするんだというのがゼファーさんの心配。
――――いや、知らんがな!
「いや、そんな飢えてないし。手当たり次第に襲いもしませんがっ!?」
どんだけ貴族狙いの肉食女子が多いのよ、この世界は。
「………………伝わってないですね」
「いや、充分に理解したよ! 大丈夫、襲わない。神に誓うって!」
「……やっぱり伝わってない」
なぜかエアリスくんがしょんぼりしつつ、もぞもぞと寝袋に入ってしまった。
「明日は早いので、寝ますよ」
「あ、うん。おやすみ?」
「はい。おやすみなさい」
なんかよく分からないけど、とりあえず寝よう。
昨日は座って寝てたから、身体がバキバキだった。思っていたよりクッション性のある寝袋のおかげで、一瞬で眠れた。
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保護した少女は、少女ではなく立派な女性だった。
異世界から来たというルコは、不思議な能力を持っていた。珍しい能力程度ならわりといるので、近くの村にでも保護してもらえばいいと思っていたが、そうはいかなくなった。
「彼女の能力は、未知すぎる。そして、あまりにも便利すぎるな」
「連れて行くしかねぇだろうな」
ゼファーと話し合い、王都に連れ帰った方が良さそうだと判断した。
いつルコに伝えようかと悩んでいたとき、ルコが慌てだした。そして、子どものように泣き、叫び、怒り出した。意味はよくわからなかったが、ずっと不安を抱えていたのに、私たち見せないようにしていたようだった。
年上の女性に対して失礼だが、可愛い。
くるくると変わる表情をもっと見ていたい。
野営地で、ルコをどこで寝させるかゼファーと言い合いになった。
私のテントならば安全だというのに、ゼファーは納得しない。
「不敬を承知で言うが……お前のルコを見る目は、欲が滲みすぎている」
「っ! うるさい。隊長である私の決定だ――――」
ゼファーの言うことを聞かずに強行した。この二時間後、夜通し地獄を味わうとも知らずに。





