2:出し入れ可能なトイレ……って何よ?
トイレとポツンと大草原。
いや、意味わかんないなコレ。
「トイレ…………おおっ!」
もう一度『トイレ』と言ったら、消えた。
「トイレ! おおおぉっ!」
もう一度『トイレ』と言ったら、出てきた。
「トイレェェェ!」
よく考えたら、意味わかんない。
なんでトイレが出し入れ可能なのよ。ってか、どこから出てきて、どこに消えてるのよ?
そもそも、コレ……さっきスッキリしたトイレよね?
いろんな意味で大丈夫?
とりあえず、出したトイレの中に入ってみる。
ドアを閉めてみる。
どう見ても水洗トイレで、レバーを引くと水が流れた。
やっぱり水洗だよね?
でもどこから水が来てるのよ…………なんで流れるのよ?
とりあえず、五回流したところで、水はなぜか知らんがずっと流れるんだな! と考えることを諦めた。
そしてトイレの外に出てみる。
「大草原」
いや、『笑』の意味じゃなくてね? と、もう一度セルフノリツッコミ。
そして、トイレのドアを閉めたら、トイレが消えた。
「だから、なんでよっ!」
叫んでも意味がないのはわかっている。
私の声がこだまするだけの、なにもない大草原だもの。
ちょっと座って落ち着きたい。
せめてトイレが洋式だったら座れるのに。
仕方がないから大草原に寝転がってみた。大の字で。
「おおっ」
気持ちいい。
なんか、春っぽい気温だし、このまま眠っても…………よくないな。
とりあえず、どうするか考えないと。
まずもって、ここはどこだ。
そして私はどうなってる?
生きている。
たぶん!
「…………異世界」
ポロリと口から漏れ出た言葉に、妙に納得した。
なるほど異世界。
出し入れ出来るのは、きっとチートな能力なのだろう…………というか、ぶっちゃけ、そう思ってないとメンタルがグズグズになりそうなので。
そう思うことに決定した。
そうと決まれば、やることはひとつ。
現地住民探しだ。それか、町か村かの居住区でも可。
はてさて、どっちに進もうか。
人は迷うと左に進むらしい。そして真っすぐ進んでいるつもりでも、そこはかとなく左寄りに歩いて、同じ場所に戻る勢いで左回りぐるくるとかするらしい。樹海で迷子になる人は、ソレなんだとか。
つまり、やや右に進んでればいいのでは!?
まぁ、大草原の平地で見晴らしもいいけど。
そもそも、どっちが右で左かとか謎だけど。
だんだんと面倒になってきたので、太陽の方向に進むことにした。
ありがたいことに真っ昼間じゃなく、たぶん三時とかそのくらいの陽の傾斜だった。
「よし、出発!」
意気揚々と、歩き始めた――――。