199:おにぎりもぐもぐ。
未知の食べ物を前に戸惑うエアリスくんを愛でつつ、おにぎりの食べ方を教えた。
食べ方は簡単。
手掴みでかぶりつくのみ!
「手が汚れるのが嫌なら油紙使ってね」
「ルコは?」
「手掴みに決まってんじゃん」
何のためにフィンガーボールとお手拭きを用意したと思っているんだ。
「ふふっ。決まってるんですね。では、私も」
「いっただきまーす!」
一番目は鮭から。味付けは最高! 白米の味はちょっと違う気はしたけど、そこまでこだわりがないから、普通に美味しい。
「あー、染み渡るわぁぁぁ」
鮭のしょっぱさとお米のじんわりとした甘み。最高の組み合わせだ。
エアリスくんは、不思議そうな顔をしながら肉巻きおにぎりを油紙で掴んで口へ運んでいた。
「ん……美味しい!」
「おっ、ほんと? 私も食べるー」
実は味見してない。いつものノリだけで味付けしたけど、エアリスくん美味しいって言ってるし大丈夫だろう。
「お、ほんとだ。けっこう美味しい」
「…………ほんとだ?」
「あっ……」
味見してないのがバレた。ごめんごめんと笑いながら謝ると、なぜかエアリスくんは感動していた。理由は味見をせずに美味しいということは、私はとても料理が上手なのだろうと。
すみません、ズボラなだけです。
次にオムライスおにぎりを二人で食べた。
「これも美味しいです! 中のライスにトマトを使っているのですか。リゾットは食べたことがありましたが、『おにぎり』のような水分が少なめのものは初めてです」
「いや、カレー食べてるじゃん?」
「カレーはあのスープと混ぜて食べるでしょう?」
あー、なるほど。あれもリゾット感覚でたべてたのか。
「こちらは、カレーですよね?」
「そうそう。カレー粉を分けてもらってたから、ドライカレー作ってみたんだ」
エアリスくんがドライカレーを食べて、ぱぁぁぁぁと笑顔になった。好きだったらしい。
「もうひとつ食べていいよ」
「でも、ルコの分が……」
私は食べ慣れてるし、そもそも全種類はぶっちゃけ多すぎるから、余らせて明日の朝ご飯にでもするつもりだった。
衛生的に、食べ切れるなら食べ切っておきたかったから、丁度いいのだ。
どんどん食べてと言うと、エアリスくんがほにゃりと笑って、ドライカレーおにぎりに手を伸ばしていた。
どんどんとおにぎりが減っていき、最後の鮭おにぎりを食べて、エアリスくんがまた感動。
「手軽に食べれて、お腹にもしっかりとたまりますね。これは素晴らしい食べ物です」
「そそ。この手軽さだから、お弁当とか軽食向きなんだよね」
「おべんとう、とは?」
――――へ? ないの?