198:手料理なのか?
おにぎりは、私たちの分は各二個づつ。使用人さんたちの分もコソコソ作ってたので、試しに食べてみてとお願いした。
わりと好きな人と嫌いな人、別れそうなんだよね。謎の米の塊だし。味はいいはず。
「手が汚れるから、油紙? で包むようにして持つといいよ。あったかいうちに食べてねー」
「「はい!」」
「ふむ。肉巻き、ですかな? 美味いですな」
ムキムキ執事のトマスさんがニコニコ笑顔で一番乗り。たぶん彼が許可しないとみんな手を出せないのだろうと思ったら、ただ食べたかっただけらしい。なかなかの早さで、オムライスおにぎりにも手を伸ばしていた。
「トマスさん! ちょっと、話し合いましょう!?」
「ん? もう触ったぞ?」
トマスさん、ガッツリ素手で掴んでるね。キッチンメイドさんたちがちょっとオコな顔をしていた。
エアリスくんが帰ってきたら、諸々よろしくねーと苦笑いしている料理長に伝えて逃げた私は悪くないはず。
エアリスくんはそれから十五分もしないうちに帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま帰りました!」
時間通りに帰ってきたよ、褒めて褒めて! と顔に書いてあるの面白いな。
「エアリスくん、ご飯なんだけどその前に着替えたりする?」
「いえ、いつもこのままいただいてますよ」
「よーし、じゃあダイニング行こう!」
きょとんとするエアリスくんの手を引いて、ダイニングに向かった。
席は隣同士。やっぱり近くね? いいけどさ。
席につくと、すぐさま大量のおにぎりが並べられた大皿が運ばれてきた。
肉巻きおにぎりやカレーのやつは他に干渉するから、油紙でそれぞれ包んで隔離している。
「これは?」
「手料理とするには怪しい、手料理!」
元の世界じゃなかなか手軽に作れるからね。一応手料理の感覚。こっちの世界だとなんだろう? サンドイッチ程は手が込んでないもんな……あれかな、食パン焼いてバター塗ったよ、ジャム塗ったよ、くらい?
「あ、サラダとスープは料理長さんだから」
そっちのことすっかり忘れてたから、途中で料理長さんに丸投げした最低のヤツとは、私のことである。
「ル……ルコの、手料理…………」
「こないだカレー食べたじゃん? あれと一緒でソウルフードな感じかな? エアリスくんと食べたくてね」
「っ、いただいもよろしいでしょうか!?」
エアリスくん、感極まってる気がする。凄い勢いで前のめりで聞いてくるものだから、ちょっと笑いつつどうぞと言った。
「あ……食べ方がわかりません」
――――可愛いな!